Interview

若手人材の確保には、製造業の魅力を発信することが重要

上位5社に入る荷物用エレベーターの専業メーカー

群馬県シートメタル工業会 会長 海老沼 孝之 氏 (イーケーエレベータ 株式会社 代表取締役社長)

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画像:若手人材の確保には、製造業の魅力を発信することが重要海老沼孝之氏

1871年に誕生した群馬県は明治新政府による殖産興業と開化政策のもと、産業振興が進んだ。1872年には国内初の本格的な器械製糸工場(富岡製糸工場)がつくられ、地場産業として蚕糸業が発展し、生糸の生産が全国第1位となった。その後は中島飛行機(現SUBARU)が立地し、戦前は飛行機、戦後は自動車製造がさかんになった。その結果、鋳・鍛造金型、プレス、切削などの基盤技術は極めて高い水準にあり、群馬県の経済・産業の高度化を支える礎となっている。

こうした背景を持つ県内の金属加工企業が、「会員企業の繁栄と業界の発展のため、経営・技術などに関わる諸問題を研究し、会員相互の研鑚をはかる」団体として、1999年に「群馬県シートメタル工業会」を設立。現在は県内で事業を展開する61社が加盟している。技能者育成に力を入れており、技能検定合格者は累計400名を超えた。最近は工場板金、レーザ技能検定、板金図面検定なども実施している。

2025年5月の定期総会で新たに「群馬県シートメタル工業会」会長に選出されたのが、イーケーエレベータ㈱海老沼孝之社長だ。同社は荷物用エレベーターのトップメーカーとして、エレベーターに使われる部品を製造するため、長年にわたり板金加工に取り組んできた。受託加工を主体とする会員企業が多くを占める工業会では特異な存在だ。それだけに工業会運営にも異なった目線による取り組みが期待される。

菓子問屋からエレベーターメーカーに転身

― 御社の歴史と事業の現状を聞かせてください。

海老沼孝之社長(以下、姓のみ) 当社は1964年に㈱海老沼製作所として創業し、菓子機器の製作販売を始める以前は菓子問屋をしていました。機械好きだった先代が新たな事業を起こし、金属などの加工をはじめました。当初はパン切り機などの食品に関わる製品を製造していましたが、1965年に1号機を納入したことを契機にエレベーターを製造するようになり、社名を㈱エビヌマリフトと改称。1995年に現在の社名に変更後は専業メーカーとして設計から保守・管理まで一貫して手がけています。お客さまの「運びたいに応える」をモットーに成長を続けてきました。

エレベーターの総合メーカーとして厨房用、学校給食用から大型荷物用まで独自で開発設計し、製造販売、保守管理に至るまで一貫した業務を展開しており、荷物用エレベーター業界では国内上位5社に入っています。商圏は沖縄、北海道を除く地域で北関東では随一を誇っています。

エレベーターが担う社会的使命と責任を果たすために設立された一般社団法人日本エレベーター協会にも加入し、現在は協会の理事をやらせていただいています。当社のエレベーターは「より安全に、より使いやすく」を目指して、市場ニーズを積極的に採り入れ、実績として全国各地の多くのお客さまから評価をいただいています。

2002年より開始した機械室レスエレベーター(油圧式・ロープ式)の販売は、多様化するお客さまの要望に幅広くお応えすることが可能となり、物流センターを中心として多方面でご愛用いただいています。

画像:若手人材の確保には、製造業の魅力を発信することが重要左:イーケーエレベータ㈱本社工場とエレベーター試験棟/右:押上げドアを採用した大型の荷物用エレベーター

エレベーター需要は堅調に推移

― エレベーター業界の現状はいかがですか。

海老沼 経済産業省の生産動態統計によると、2024年のエレベーター(自動車用を除く)の生産金額は2,257億円となっており、スマート化と省エネ化への技術革新が進む一方、工期遅延や人材不足が課題となっています。しかし、都市化や再開発、インフラ投資の増加にともない、エレベーター需要自体は堅調に推移しています。

建設業界全体では落ち込みがありますが、エレベーター業界、特に物流関連は依然として需要があります。マンション建設も向こう2年ほどは計画があります。国内には50万台以上のエレベーターが稼働しており、耐用年数(法定年数は17年だが一般的に20~25年)を超えた設備の更新需要が継続的に発生するとともに、保守メンテナンス需要も活発化しています。

荷物用エレベーターの需要も物流合理化問題と人手不足を背景に物流センターの建設が増え、大型物件が伸びています。物件1件あたり10基を超えるエレベーターを設置するケースや、かご室の間口が7mを超える大型案件も増えています。新規受注案件と保守メンテナンス関連の売上比率はイーブンとなっており、ひと月で5~6基前後、年間で60~80基を出荷しています。主力製品の荷物用エレベーターは全国各地に設置しています。大きな荷物を効率良くスムーズに運べるよう、床との段差が少ない高い着床精度を追求しています。お客さまの要望に応じて、ゼロからオーダーメイドのエレベーターを製造できるのが当社の大きな強みとなっています。

  • 画像:若手人材の確保には、製造業の魅力を発信することが重要ACサーボ・ダイレクトツインドライブを搭載したパンチングマシンEMZ-3612MⅡ
  • 画像:若手人材の確保には、製造業の魅力を発信することが重要ベンディングマシンEGB-8025e(手前)とHG-2204(奥)が並ぶ曲げ工程

会社情報

会社名
イーケーエレベータ 株式会社
代表取締役社長
海老沼 孝之
所在地
群馬県高崎市箕郷町上芝688
電話
027-371-7000
設立
1964年
従業員数
95名(うち正社員76名)
主要事業
業務用エレベーター(油圧式、ロープ式)、自動搬送昇降装置、自動車用エレベーター、小荷物専用昇降機、階段昇降機、ユニット型小荷物専用昇降機、油圧テーブルリフター、コンベヤーなどの製品などの設計、製造、販売、施工および保守管理
URL
https://www.ekelevator.jp/

つづきは本誌2026年1月号でご購読下さい。

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