研究室訪問

TiAl基合金の高性能化、生産性の向上に向けた研究

千葉大学大学院 工学研究院 融合理工学府基幹工学専攻 山形 遼介 助教

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画像:TiAl基合金の高性能化、生産性の向上に向けた研究千葉大学大学院の山形遼介助教

耐熱鋼の高温高強度化に向けた研究

千葉大学大学院 工学研究院 融合理工学府 基幹工学専攻 機械工学コースの山形遼介助教の研究テーマ「異相界面近傍の変形に着目したチタンアルミ基合金の加工硬化挙動に関する研究」が、天田財団の2022年度「奨励研究助成(若手研究者)」に塑性加工分野で採択された。

山形助教は2011年から東北大学 工学部 材料科学総合学科の丸山研究室で学び、2014年3月に同大学大学院環境科学研究科の新日鉄住金連携講座(当時)、長谷川研究室で博士前期課程を終えた。2017年3月に同大学大学院 工学研究科 知能デバイス材料学専攻で博士後期課程を修了。「Al含有高Crフェライト系耐熱鋼の高温高強度化に向けたFe2M型Laves相金属間化合物の物理的・機械的性質の研究」で博士(工学)の学位を取得した。

TiAl基合金研究は東工大在職中にはじまった

2017年4月~2023年3月は東京工業大学 物質理工学 院材料系の竹山・小林(覚)研究室の特任助教を務め、「チタンアルミ基合金の高強度・高靱性化に向けた組織と特性の関係性解明についての研究」を行い、天田財団への研究助成を申請、東京工業大学在職中に採択された。

2023年4月からは千葉大学の助教に着任し、「チタンアルミ基合金の高強度・高靱性化に向けた組織と特性の関係性解明に関する研究」を引き続き行っている。

「金属工学を研究するなら実績が多い東北大学がふさわしいと考え、東北大学 工学部材料科学総合学科に入学しました。博士前期課程を修了したら民間企業に研究職として就職することも進路のひとつとして考えていましたが、前期課程が2年目に入り、就活で企業の人事担当者から話をうかがうと、企業が必要とする人材は『専門分野の研究者』というよりも、『ゼネラリストに近い人材』で私が考えていた研究職のイメージとは異なっていることがわかりました。それならば大学に残って研究を続けたいと思いました」。

「火力発電所のボイラ用材料の研究を進めていくうちに、高温でも強度を失わない材料の研究に興味を持つようになり、『Al含有高Crフェライト系耐熱鋼の高温高強度化に向けた金属間化合物の物理的・機械的性質の研究』で博士後期課程を修了、博士(工学)の学位を取得しました」(山形助教)。

航空機用ジェットエンジンにも採用されるTiAl基合金

2017年4月に東京工業大学 物質理工学院材料系の竹山・小林(覚)研究室の特任助教に採用されると、航空機用ジェットエンジンのタービンブレードに使われる「チタンアルミ基合金の高強度・高靱性化に向けた組織と特性の関係性解明についての研究」を行うようになった。

気候変動を引き起こす要因である温室効果ガスの削減を目指す一環として、航空機用のジェットエンジンを含む機体の軽量化と高出力化、すなわち推力/重量比の増加が必須であるとの認識から、現在ジェットエンジンに適用されているNi基合金の約半分の密度でありながら、優れた高温強度、耐酸化性を有するチタンアルミ(TiAl)基合金が、機体の軽量化に貢献すると考えた。

TiAl基合金は高負荷に耐えられることから高出力化にも寄与できるため、ジェットエンジンへの搭載が加速すると考えられている。日本でもJALが採用するボーイング787型機のエンジンなどに搭載され、燃料消費量、ノイズ、窒素酸化物排出量を低減するなど、優れた環境効果を挙げている。

つづきは本誌2024年3月号でご購読下さい。

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