研究室訪問

高強度アルミニウム合金の最適な積層条件の範囲を導く

大阪大学 接合科学研究所 接合評価研究部門 王 倩(Qian Wang) 助教

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画像:高強度アルミニウム合金の最適な積層条件の範囲を導く大阪大学 接合科学研究所の王倩助教(左)と研究室の麻寧緒教授(右)

積層材の高強度化を保証

大阪大学 接合科学研究所 接合評価研究部門 接合構造化解析学分野の麻寧緒教授の研究室に所属する王倩(Qian Wang)助教の研究テーマ「その場微細鍛造による高強度アルミニウム合金の固相積層技術に関する研究開発」が、天田財団の2022年度「奨励研究助成(若手研究者)」に塑性加工分野で採択された。

この研究は高強度アルミニウム合金微粒子に熱処理を施し、積層造形性を改善するとともに、積層材の高強度化を実現する。サイズが大きいセラミック粒子をその場微細鍛造に適用することで、積層材の緻密化を安価な低圧ガスで実現し、結晶粒を超微細化する。微細鍛造用のセラミック粒子は、積層材強度を向上するだけでなく、積層プロセスウインドウを拡大することも期待できる。

その場微細鍛造の強化メカニズムを明らかにすることで、本研究の実現可能性を確認できた。その場微細鍛造は空隙クロージングと結晶粒の超微細化を促進し、強度を大幅に向上させる。サイズが大きいセラミック粒子はリバウンドされるため、積層材に埋め込む心配がない。本研究では熱処理した高強度アルミニウム合金の微粒子を用いて積層材強度のさらなる向上を目指す。

本研究の目的は下記の2つとなっている。
①その場微細鍛造の強化メカニズムを明らかにし、セラミック微細鍛造粒子の粒径と体積比を最適化すること。
②高精度数値解析モデルを開発して、高強度アルミニウム合金の積層プロセスウインドウを予測し、鍛造品レベルの強度を目標にして最適な積層条件の範囲を導くこと。

高強度アルミニウム合金の世界市場は2021年に349億米ドルに達し、2026年には477億米ドルになると予測されている。気候変動対策としてSDGsの達成やカーボンニュートラルの実現に向けCO2排出量を削減するため、航空機や自動車の軽量化に対するニーズが高まっている。こうしたニーズから高強度アルミニウム合金の需要増加が見込まれており、市場の成長も牽引している。

つづきは本誌2024年4月号でご購読下さい。

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