金属加工の未来を共創するAGIC
曲げ作業のスキルレス化に貢献する「EGBシリーズ」
コンセプトは「誰でも・どこでも使える、環境にやさしいベンディングマシン」
株式会社 アマダ 商品技術部門 ベンディング技術部
「誰でも・どこでも使える、環境にやさしいベンディングマシン」
アマダはこのたび、「誰でも・どこでも使える、環境にやさしいベンディングマシン」をコンセプトとして、新ベンディングマシン「EGBシリーズ」を開発・発表しました。
本稿では、ベンディングマシンとしての開発背景や、機能・特徴について紹介します。
【開発背景】誰でも簡単に加工できることが目標
現在、世界的な社会課題として、SDGsへの対応や地球温暖化対策のために脱炭素社会を目指していくことが求められています。また、日本をはじめとする先進国に共通の課題として、人口減少による熟練作業者の減少や、働き方改革による労働時間短縮により、生産量の減少やコストアップが課題となっています。)
EGBシリーズは、これらの課題に取り組むことをコンセプトとして開発されました。開発項目としては、下記の①~④を掲げ、誰でも簡単に加工できることを目標としました
①4軸独立電動サーボシステム ― 精度良く高速に曲げる
EGBシリーズは、プレス軸に新たに電動サーボシステムを採用し、クラウニング機構にも電動サーボシステムを採用しました。
クラウニングは、曲げ角度の中ダレ現象や通り角度を補正するために加圧テーブルを撓(たわ)ませる機能です。EGBシリーズでは、このクラウニング機構が左右独立で制御可能となり、プレス軸(左右2軸)と合わせて4軸の独立制御を行っています(図1)。
これにより、テーブル中央ではなく左右どこで曲げても通り精度を最適にコントロールすることが可能となりました。材質・曲げ長さ・曲げ位置・金型の情報から加圧テーブルおよびマシンフレームの撓み量を計算し、独立した4軸を適切な位置へ自動的に動作させます。
EGBシリーズに登録している材料は従来の6種類から31種類へと大幅に増え、「4軸独立電動サーボシステム」とともに曲げ精度向上に寄与しています。さらに従来の油圧システムから電動サーボシステムとなることによって、生産性も15%向上しました。
②進化したATC ― コンパクト化、容量アップなど
ベンディングマシンで加工する前に、重量のある金型を指定された位置に並べる作業は大変な重労働です。体力面で不利な女性でも楽に曲げ加工ができるようにするためには、自動金型交換装置(ATC)が必須です。
EGBシリーズでは、従来シリーズに加えて、600kNのマシンにもATCが搭載可能になりました(EGB-6020ATCe)。ATCをコンパクトにしたことで、今までスペースの問題で導入できなかった工場にも設置することが可能となりました。
さらに、金型交換の前後に開閉するシャッターを完全自動化し、従来機のシャッターを閉じる際に感じられた重さについても解消することができました。
また、EGB-1303ATCeでは、金型搭載量を従来機比で30%増加させ、汎用性を高めています。
③突き当ての難しさを軽減する「Y3軸バックゲージ」
ベンディングマシンを使用する際、経験の浅い作業者がまず直面するのは「材料をバックゲージへ突き当てること自体が難しい」ということです。
機械の操作手順や曲げ順序などは、NC装置の進化により従来よりも簡単に扱えるようになってきました。しかし、材料をバックゲージに突き当てることは、見た目よりもはるかに難しい作業です。
たとえば箱製品を曲げる際、横方向の材料の位置決めは目視で行います。もっと複雑な形状だと、バックゲージへの当て方によって材料がグラついてしまい、加工不良につながってしまいます。
従来のバックゲージは基本的に材料を2点で支える仕組みになっていましたが、EGBシリーズでは、バックゲージに3フィンガー構造の「Y3軸バックゲージ」(図2)を採用しました。材料を3点で支えることで、回転方向・前後方向・左右方向に対して、物理的に安定した突き当てが可能となりました(図3)。
この方式は突き当ての自由度を広げ、今まで突き当てることが不可能だった形状でもガバリや治具の段取りは必要なく、加工が継続できるようになり、生産性も向上しました。VPSS 4ieは、この材料を支える3点を自動的に計算し、材料の形状に応じて安定した突き当てを実現します。
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