飾り職人から始まった創業136年の老舗板金企業の自負
優秀板金製品技能フェアで銅賞受賞―“曲げ”にさらなる自信
株式会社 三神鈑金工業所
大水害を乗り越えて
同社を訪問するのは2000年9月に発生した東海地区の大水害後以来。近くの川から工場内に濁流が流れ込み、パソコンや伝票類を2階へ担ぎ上げて最悪の事態をしのいだ。その後はメーカーの迅速な対応と同業者からの支援の輪に感謝して奮起、1カ月後には平常どおりに操業を再開した。
あれから14年―2年前に子息の三神一浩氏が5代目の社長に就任した。第27回(2014年度)優秀板金製品技能フェアでは「単体品の部」に出展した「曲げ金型」が銅賞を受賞したことで“曲げの三神”を広く世間に認知される結果となった。
それらの話と最近の仕事の状況を、新しく壁が貼り替えられた事務所で聞いた。
5代目社長に就任して
5代目を継承した今年45歳になる三神一浩社長に事務所で応対していただいた。三神社長は、父親である三神毅会長の大らかさとモノづくりにかける真摯な姿勢、母親の三神泰代専務取締役の明るさと、きめ細かい心遣いといった美点を受け継がれたような人物であった。
水害後の経緯を聞くと「みなさまのご支援を受け、その翌月は、その年一番の売上を記録しました。救済の意味もあったのでしょうが、外注先の協力もあり、ただただ、感謝の一言です」。
「現在は、長年手がけている建築関連が売上比率の30%を占め、食品機械カバー、工作機械部品、自動車の試作部品関連、航空宇宙関連の部品関連で60%、残りがその他という構成です。得意先社数は直接取引で300社、その先は1,000社を超えると思います」。
「当社は長年にわたり、屋根の鉄骨部分の加工、屋外での据付など、建築施工現場の仕事を手がけてきました。しかし、施工現場が屋外なので天候に左右され不安定なため、機械化を進めて屋内で建築金物を加工する仕事にシフトしてきた経緯があります。建築関連は外観が個性的になるなど、ますます複雑になってきています。加工難度の高い仕事も手がけるようになって、そのうちに『曲げで困ったら三神さんに頼む』といった声が聞かれるようになり、同業者や材料屋さんから単品や新規品の仕事をいただくようになりました」。
「リピート率は10%程度。製品データはいろいろな業者を経て当社に来るので、図面のコピーのそのまたコピーといった、線がかすれた紙図面も多く、ポンチ絵で受け取ることもよくあります。CADデータで受け取るのはごく僅か。当社の社員は20名ですが、多能工を目指しているのでプログラムができる人は半数くらいになります。2次元CAD/CAM AP100×4台、AP60×2台を操作し、そのまま現場で加工しています」。
会社概要
- 会社名
- 株式会社 三神鈑金工業所
- 代表取締役社長
- 三神 一浩
- 住所
- 愛知県名古屋市西区長先町56
- 電話
- 052-503-2966
- 従業員
- 20名
- 創業
- 1879年(明治12年)
- 設立
- 1959年
- 事業内容
- 建築・装飾板金加工・精密板金・超精密プレス加工、溶接、食品カバー、自動車関係の試作、ロケット部品など
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