Interview

5年で従業員数2倍、売上2倍強を達成

時代の波に打ち勝つしたたかさ、しなやかさを備える

ダイソウ工業 株式会社 代表取締役 川口 宗一 氏

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画像:5年で従業員数2倍、売上2倍強を達成川口宗一氏

ダイソウ工業㈱は三重県津市に本社・工場を構える金属部品製造企業。もともとは鋲螺(びょうら)の製造販売からスタートし、三重県の主力産業である二輪・四輪車部品のプレス加工から溶接まで一貫で加工する企業に発展した。

その後、自動車用プレス部品の生産で培った加工技術・管理技術をもとに、建築金物、建設機械、医療・介護用ベッドの部品加工へと展開。多品種少量生産に対応するため、レーザマシンやベンディングマシンを導入し、板金加工にも取り組んだ。2016年には塗装工場を新設し、プレス・板金加工から、溶接、塗装までの一貫生産体制を確立した。

2017年に3代目社長に就任した川口宗一氏は、受託事業を強化するため、設計提案ができるエンジニアリング力を強化。大手自動車メーカーや大手建設機械メーカーなどとの直接取引を実現し、安定した経営基盤のもと事業領域を拡大して、さらなる飛躍を遂げている。2018年には経済産業省から「地域未来牽引企業」に選定された。

2020年には㈱東海精機(三重県菰野町)をM&Aで取得し、グループ企業とした。現在では国内・タイ・中国・ベトナムに3社のグループ会社と2社の調達先を持ち、グループ全体で430名、年間売上高80億円(2022年8月期)となった。直近5年間で従業員数は2倍に、売上高も2倍強となった。

2022年には「DAISOホールディングス㈱」を設立。2025年度にグループ売上高100億円を目標とする中期経営計画を発表した。

川口社長は1年半ほど前から企業PRを兼ね、東海地区のラジオ番組「宗一・夕紀のHUMAN PRESS」(東海ラジオ放送)に出演するなど幅広い分野で活躍している。これからの事業展開について、川口社長に話を聞いた。

建設機械需要が好調

― 直近5年で従業員数2倍、売上2倍強を達成し、営業利益も過去最高となっています。社長ご就任後、コロナ禍でも成長できた要因は何でしょうか。

川口宗一社長(以下、姓のみ) 現在は建設機械メーカーのお客さま2社からの売上が60~65%になっています。

手がけている製品は、ミニショベルの座席シート、ペダル、操作レバーなどが取り付けられる運転席のフロアシートサポート、搬入された土砂を平らにする際に使われる排土板(ドーザーブレード)、作動油タンクなどです。

コロナ禍の影響で、2020年8月期は減収減益になりましたが、同年10月以降は建機事業がV字回復し、コロナ前に対して1.2倍の増産になりました。半導体をはじめとした部品不足や材料価格高騰の影響もあって、四輪車や介護用ベッド関連は低調ですが、来年以降、建機事業はさらに1.2倍程度の増産になる予定というお話もいただいています。もう1社の建設機械メーカーのお客さまからも増産のお話をいただいているので、建機関連は今後も伸びると考えています。

メーカーのお客さまとお話しした感触だと、2025年までは順調に伸びていきそうです。当社の加工・溶接・塗装までの生産プロセスを受託する取り組み、設計提案チームによるVA/VE活動が成功していると思います。また、2021年と2022年に導入したファイバーレーザマシン2台のセルライン、溶接工場に導入した溶接ロボットラインの効果もあると思います。

  • 画像:5年で従業員数2倍、売上2倍強を達成ファイバーレーザマシンENSIS-3015AJ(6kW)+AS-3015TFF+TK-3015L。2021年9月に導入した1号機
  • 画像:5年で従業員数2倍、売上2倍強を達成TKのパスラインに合わせて社内で製作した台車を置き、加工が終わった製品を自動積載する

ENSIS-AJのセル仕様を2台導入 ― 生産プロセス改革を推進

― 2021年に導入したENSIS-3015AJ(6kW)の1号機は2棚+TK仕様、2022年に導入した2号機は棚1本のパレットチェンジャー仕様でした。導入の狙いは何ですか。

清水勝也生産技術部部長(以下、姓のみ) 従来のCO2レーザマシンの経年劣化が目立ってきたため、ランニングコストを低減し、建機部品の増産に対応して24時間稼働できるシステムへの更新を考えました。

1号機では、建機部材の1.6~4.5㎜までの薄板切断を行うことを考えました。酸素切断は、切断面に酸化被膜が付着して塗装品質に影響を与えるため、「HPイージーカット装置」を導入し、低コストのアシストガス切断(イージーファストカット)で24時間加工することを計画しました。

また、後工程の曲げ工程と連動して工程間の滞留を減らし、ブランク工程と曲げ工程までのパスラインを統一して、作業者の製品の上げ下ろしの負担を軽減。工程間にムダな仕掛り品を置かず、整流化することを目指しました。

従来はロット生産方式で、ジョブ単位でロット加工する「バッチ生産方式」を採用してきましたが、工程間のサイクルタイムが一定でないと工程間に滞留が生まれ、ムダが発生します。そこでプロセス全体の最適化を考え、2019年にロット生産を見直す社内プロジェクトを発足させて、生産プロセス改革に取り組んできました。

― 1号機はTKが両サイドに製品を搬出するシステムが特徴的ですね。

清水 マシンを止めずに高速加工を行うためには、製品の取り出し・搬出が加工スピードに追従しなければなりません。そのため、加工された製品をTKが両サイドに搬出し、所定の台車の上に置くことができる仕様にしました。これによって、製品を満載した台車を引き出す際に、マシンを停止させることなく、しかも製品の載せ替えなしで曲げ工程へ受け渡せるようにしました。

台車もTKのパスラインに合わせて社内で製作。ブランク材の積載が完了した台車は、作業者が曲げ工程のバッファーエリアに搬送します。将来的にはAGVの設置も考えています。

2号機は4.5~12㎜の中・厚板加工専用で、棚とは別にセカンドステーションを備え、バラシ、仕分け、台車への積載は作業者が担当して、曲げのバッファーステーションに搬送します。

1号機は1日20時間稼働で、月間稼働時間は約400時間となっています。2号機を含め、ブランク工程の担当者は昼間・夜間とも各1名です。

曲げ工程にも2021年と2022年にHRB-8025を2台とRGM2-5020の計3台を増設し、夜間も2名が作業しています。現在は溶接工程を含め、2シフトで操業しています。

  • 画像:5年で従業員数2倍、売上2倍強を達成HRB-8025による曲げ加工
  • 画像:5年で従業員数2倍、売上2倍強を達成2022年に導入した溶接ロボットライン

会社情報

会社名
ダイソウ工業 株式会社
代表取締役
川口 宗一
所在地
三重県津市芸濃町北神山工業団地1470-3
電話
059-265-5700
設立
1974年(1955年創業)
従業員数
220名(グループ全体430名)
主要事業
建設機械部品の製造・塗装、自動車用プレス部品の製造、医療・介護用ベッド部品の製造
URL
https://daiso-ind.co.jp/

つづきは本誌2023年1月号でご購読下さい。

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