第35回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介(その2)
戦闘ヘリの細部まで忠実に表現 ― 設計から製作まで一人で完結
「MC-64 ヴァプラ」が「学生作品の部」金賞を受賞
三重県立津高等技術学校
戦闘ヘリを細部まで忠実に表現
「第35回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)の「学生作品の部」で金賞を受賞したのは、三重県立津高等技術学校メタルクラフト科NC・ロボットコースの金森正樹さん製作の「MC-64 ヴァプラ」。
この作品は金森さんの「誰が見てもわかる、インパクトのある作品をつくりたい」という強い思いが込められている。金森さんはヘリコプターの概要をインターネットで検索し、米国軍や陸上自衛隊などが運用する戦闘ヘリ「AH-64Dアパッチ」をモデルにして作品を製作した。AH-64Dは他機種には見られない「ロングボウ・レーダー」と呼ばれる1,000以上の目標を探知する装置が機体上部についており、それらも忠実に再現している。
外側だけでなく、操縦席の部分も細かく造形され、実物を忠実に表現しようとしており、その努力と完成度の高さが評価された。
県立の職業能力開発校
三重県立津高等技術学校は三重県が1945年に設立した職業能力開発校。訓練課程には「普通課程」と「短期課程」の2つがある。
「普通課程」の訓練期間は2年で、応募資格は18歳以上の高校卒業者。学科は機械制御システム科(定員20名)、電子制御情報科(15名)、自動車技術科(20名)、メタルクラフト科(15名)の4つが設けられている。
「短期課程」の訓練期間は3カ月から1年で、受講するコースによって異なる。受講者は主にハローワークから受講指示や受講推薦を受けた求職者。訓練科は、一般の離転職者を対象とした訓練のほか、女性・障がい者・外国人を対象とした訓練、専門学校などへの委託訓練など多様となっている。
「学生作品の部」創設時から板金フェアに参加
メタルクラフト科では技能実習の一環として、板金フェアを活用してきた。第17回(2004年度)で「学生作品の部」が創設されて以来、18年間連続で参加しており、第28回(2015年度)では同校の生徒たちが製作した作品がそれぞれ金賞、銀賞、優秀賞、奨励賞を受賞した。
生徒の製作には担当指導員がアドバイザーとして付くが、製作過程を見守るのみで直接手を出すことはない。
「人」が主役のものづくりを教える
「ものづくりのデジタル化が進んだとしても、主役は『人』。IoTやロボット、AIが進歩すれば、誰でも簡単にものづくりが完結できると錯覚するかもしれませんが、すべてをデジタル化することは不可能です。生徒たちには基礎技術に習熟した『人』がいるからこそ、ものづくりが成立している、ということを必ず伝えるようにしています」。
「ものづくりの現場で、部品のかみ合わせの不具合や製品のひずみなど、自分ひとりで判断すべきではない問題が発生した場合、そこで必要になるのは『人』同士の知恵と技術による解決 ― すなわち“現場力”です。デジタル化を突き詰めれば、人手を極力排した効率的な生産ラインを構築できますが、そこで現場力は養えません」。
「ものづくりのデジタル化は自然な流れで、そこに異を唱えるつもりはありません。ただ、デジタル化に対応するためだからといって、CAD/CAMの使い方教室のようなスタンスで教育を行ってはいけない。アナログの基礎技術をマスターして、製作過程で感じる楽しさや喜び、イレギュラーに発生する問題に対応することがものづくりの醍醐味です。若い人たちにもこうしたことを伝え、ものづくりに熱意を持って取り組んでもらいたい」。
すでに退官されたが、当時は副参事兼教頭だった志賀秀樹先生にお目にかかった折にうかがった教育方針が、現在も同校の姿勢となっている。
学校情報
- 学校名
- 三重県立津高等技術学校
- 校長
- 吉川 行洋
- 所在地
- 三重県津市高茶屋小森町1176-2
- 電話
- 059-234-2839
- 設立
- 1945年
- 生徒数(定員)
- 1学年70名(2学年計140名)
- 学科
- 機械制御システム科・電子制御情報科・自動車技術科・メタルクラフト科
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