Interview

コロナ禍を契機に“改革”を推進

時代に即した取り組みで新たなニーズをつかむ

職業訓練法人 アマダスクール 理事長 伊藤 克英 氏

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画像:コロナ禍を契機に“改革”を推進伊藤克英氏

コロナ禍をはじめとする社会経済環境の劇的な変化を契機に、職業訓練法人アマダスクールがさまざまなかたちで“改革”を進めている。

「技術・技能教育」はこれまで対面式のみだったが、「ソフト操作教育」のリモート化を実現。コロナ禍による移動制限や遠隔地の受講者など、伊勢原本校と関西校への来校が難しい環境でも教育機会を提供できる体制を整えた。

「優秀板金製品技能フェア」はWeb投票システムを立ち上げ、アマダ・伊勢原ソリューションセンターの展示場に足を運ばなくても応募作品の閲覧・投票ができるようになった。海外からの参加を活性化させることにもつながり、グローバルなイベントへと発展する道が開けつつある。

カリキュラムの見直しも進め、「技能検定準備講習」は新たに「工場板金(特級)」のコースを新設。「ベンディングロボット」の操作教育も開設した。「経営後継者育成講座」(JMC)は女性活躍の情勢を反映して女性後継者の受け入れ枠を拡大し、内容の充実をはかった。

慢性的な人手不足に加え、円安の進行で外国人材の確保が難しくなっている今、日本唯一の板金業界に特化した職業訓練法人であるアマダスクールの重要性が増している。2020年5月に5代目理事長に就任し、改革を推進するアマダスクール・伊藤克英理事長に話を聞いた。

「リモート教育」を本格展開

― 伊藤理事長は就任当初から「リモート化」「IoTスクール」をスローガンに掲げ、2021年4月からは「リモート教育」を本格展開しました。

伊藤克英理事長(以下、姓のみ) コロナ禍への対応を迫られる中での理事長就任で当初は戸惑いましたが、これをチャンスと捉え、アマダスクールの事業を変革していかなくてはならないと考えました。コロナ禍でお客さまが来校できない状況が生まれたため、時代に即した運用として「リモート化」と「IoTスクール」を模索し始めました。その後、アマダの販売出身の泉井宏之常務理事が就任したことで、改革は一気に加速しました。

「リモート教育」を実施するにあたり受講者の傾向を調べてみたのですが、講習を実施している伊勢原本校や関西校から“近い地域”と“遠い地域”とで、受講者数に大きな差があることを再確認しました。もともとの市場も企業数もちがうので単純比較はできませんが、受講者の数で見ると数倍の差がありました。それ以降、「リモート教育」はコロナ禍への対応というだけでなく、テクノロジーによって物理的な距離の制約を取り除き、教育の機会均等を実現する重要施策として位置づけるようになりました。

また、加工設備の導入前教育・導入後教育のうち、人数で見ると70%以上が「ソフト操作教育」を受講しています。「マシン操作教育」とちがって「ソフト操作教育」はリモート教育に適しているため事業性も見込めると判断し、リモート教育の実施に踏み切りました。

画像:コロナ禍を契機に“改革”を推進アマダスクールが2020年度以降に実施した改革の内容

新型コロナを契機にニーズをつかむ

― 「リモート教育」は、具体的にはどのようなかたちで実施するのでしょうか。

伊藤 アマダスクールからお客さまへノートパソコンとWi-Fiルーターをお送りして、講習中はそれを使っていただき、講習の日程が終了したら返送していただくかたちです。お客さまの機器やネットワーク環境を使って受講できるようにする案もあるのですが、万が一にもお客さまのデータが消えてしまうようなトラブルが起きてはいけないので、今のところはこのような手段を採っています。

リモートだからといって教育内容が変わるわけではありません。従業員の教育・研修を支援する各種助成金も利用できます。

講習は対面もリモートも、アマダスクールの同じ教室で同時に実施します。対面で受講しているお客さまと、リモートで受講しているお客さまが混在するハイブリッド方式です。お客さまがアマダのサテライトセンターに集まり、伊勢原本校とつないでフルリモートで実施したこともあります。

― 受講したお客さまの評価はいかがですか。

伊藤 ソフト操作教育のリモートの受講者数は、2021年度上期が13人、2021年度下期が163人、2022年度上期が107人でした。2022年度上期のリモートの割合は18.7%です。新型コロナの状況によって人数や割合は変動しますが、確実に浸透しています。

今では北海道や東北北部、九州南部のような遠方のお客さまも、プロの講師から教育を受けたいとどんどん応募してくださっています。講師陣も最初は戸惑いながらもがんばってくれて、回数を重ねるごとに慣れてきました。

当初はアマダスクールの内部からも「教育の質を担保できないのでは」という慎重な意見がありましたが、思い切ってやってみて良かったと思います。コロナ禍を契機にお客さまのニーズをつかむことができた一番の成功例で、アマダスクールの講師陣が知恵を絞ってつくり上げた成果です。

  • 画像:コロナ禍を契機に“改革”を推進「優秀板金製品技能フェア」のWeb投票システムの画面。応募作品の材質・板厚、工程、加工時間、アピールポイントなどを閲覧できる
  • 画像:コロナ禍を契機に“改革”を推進「技能検定準備講習」の「工場板金(特級)」で配布する問題解説集(手前が学科、奥が実技)

全文掲載PDFはこちら全文掲載PDFはこちら

プロフィール

法人名
職業訓練法人 アマダスクール
理事長
伊藤 克英
所在地
神奈川県伊勢原市石田350(伊勢原本校)
電話
0463-96-3586
URL
https://www.amada.co.jp/amadaschool/

つづきは本誌2022年12月号でご購読下さい。

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