デジタル化に対応した最先端の職業教育を行う「スマート専門高校」
ものづくり人材の育成にBREVIS-AJが貢献
愛知県立春日井工科高等学校
「スマート専門高校」に注目が集まる
コロナ禍や少子高齢化のもと、教育界には次代の担い手育成がこれまで以上に求められるようになっている。中でも、勤労観・職業観の育成、豊かな感性や創造性を養う総合的な人間教育の場としての「専門高校」「専門学科教育」の果たす役割は大きい。
そうした中で注目を集めているのが「スマート専門高校」だ。文部科学省は「スマート専門高校」の実現に向けて令和2年度(2020年度)第3次補正予算で274億円を計上した。事業内容は「農業や工業等の職業系専門高校におけるウィズコロナ・ポストコロナ社会、技術革新の進展やデジタルトランスフォーメーションを見据えた高性能ICT端末等を含む最先端のデジタル化に対応した産業教育装置の整備に必要な費用の一部を、国が緊急的に補助する」となっている。
対象は、国公私立の職業教育を主とする専門学科等を設置している高等学校。補助の対象は、「デジタル化対応産業教育装置の整備に必要な経費」(装置の購入、設置工事費等含む)とされている。
「デジタル化対応産業教育装置」の具体例としては、「金属造形3Dプリンタ」「マシニングセンタ」「高性能PC端末を配備した実習室の整備」「冷凍・冷蔵実験装置」などが挙げられている。
「ものづくり王国・愛知」を支える職業人材の育成
製造品出荷額が1977年以降連続して全国1位の愛知県は、県教育委員会が県立高等学校の10年後を見据えたグランドデザインとなる「県立高等学校教育推進基本計画(高等学校将来ビジョン)」(2015年3月)を策定。社会や生徒のニーズを踏まえた高等学校の再配置を行い、国際理解教育やキャリア教育、職業教育、特別支援教育のいっそうの充実もはかろうとしている。そして、科学や工学分野におけるイノベーターの育成を目指す新たな学科等の設置や、理科実験に必須となる物品をすべての高等学校に整備する取り組みを進めている。
令和3年(2021年)には県内の工業高校等14校の名称を、これまでの「工業高等学校」から「工科高等学校」に改称した。また、「ロボット工学科」を設置し、さまざまな産業で導入が進むロボットの設計・製造・制御などに長けた技術者育成のために改編を行った。
「ものづくり王国・愛知」の産業界や中学校の生徒、保護者のニーズに対応した学科再編や募集方法の見直しを行った。また、優秀な理数工学人材やものづくり企業で活躍できる女性人材などを育成する学科・コースを設置して、新しい時代にふさわしい学校名に改称することで、魅力向上をはかった。
県内の工科高校11校にBREVIS-AJを導入 ― 春日井工科高等学校に話を聞く
「デジタル化対応産業教育装置」の整備に必要な費用の一部を国が補助することが決まったことを受け、愛知県の教育委員会は県内の14校の工科高等学校にアンケート調査を実施。その結果に基づき、コンパクトファイバーレーザマシンBREVIS-1212AJと2次元CAD/CAM AP100の導入を決めた。2021年度中に導入スペースを確保できた11校に導入され、2022年度から実機を使った教育が始まっている。
一県の工科高等学校に、これだけの台数のレーザマシンがまとまって導入されるケースは過去に例がない。教育現場でのファイバーレーザマシンの活用実態を知るために、11校のひとつである「愛知県立春日井工科高等学校」を取材させていただいた。
春日井工科高等学校の前身である「春日井市立工業学校」(機械科・電気科)は1945年4月、地域に根付いた実業学校として誕生した。終戦後、急速な発展をとげる春日井市は、名古屋の衛星都市として多くの進学者をむかえるため、1948年3月に同校を普通科の学校へと改組した。
その後、愛知県の産業経済の発展とともに春日井市の工業もさかんになり、1970年代になると市内をはじめ、県内・県外から技術人材 ― とりわけ、新しい技術に対応できる技術者の養成が急務となっていった。地域社会の強い期待を受け、1983年4月、機械系2学科(機械科・電子機械科)、電気系2学科(電気科・電子工学科)の合わせて4学科、8学級規模の「愛知県立春日井工業高等学校」として開校するに至った。
開校40周年を間近に控えた2021年には「愛知県立春日井工科高等学校」に改称するとともに、ロボット工学科、生活コースを設置する改編が行われた。
学校情報
- 学校名
- 愛知県立春日井工科高等学校
- 校長
- 服部 光博
- 所在地
- 愛知県春日井市熊野町五反田1180-1
- 電話
- 0568-84-1115
- 学科
- ロボット工学科、機械科、電気科、電子工学科
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