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次世代の若者を育むサポート

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札幌の新千歳空港へ向かう予約便、百数十名はいると思われる高校の修学旅行生が搭乗を待っていた。

最近はテロや地政学上の不安から、海外への修学旅行が減り、逆に国内への旅行に切り替える学校が増えているという新聞報道もあった。5~6月の羽田空港は、どの搭乗ゲートも修学旅行生で溢れている情景に出くわすことが多い。彼らは目的地に到着しても、団体行動で神社仏閣や世界遺産を巡るということもなくなって、4〜5人のグループでタクシーに分乗して自由に行動するケースが多くなっているという。

私の高校時代はすべてが団体行動、決められたコースを決められたスケジュールで巡って、それでも楽しかった記憶がある。宿に入り、大人数での食事や風呂も新鮮で気分が高揚し、寝る時間ともなれば親と離れたセンチな心を隠そうと枕投げなどを始め、引率の先生に叱られた記憶が残っている。

現在では、空港の搭乗口で会う高校生たちの大半がスマホを操作している。もう少し仲間と群れても良いと思うが、意外に静かだ。そういえば新幹線でも時々中学生の修学旅行の団体を見かけるが、窓越しに見ていると、やはりスマホを操作している生徒が多い。それはそれでけっこうなことだが、もう少し旅先の解放感に浸っても良いのに―と思ってしまう。

出張先のホテルで、海外から日本へ旅行に来たという中学生の団体に遭遇することがある。先日もあるホテルで、オーストラリアからやってきたという中学生の集団とチェックインが重なった。少し話しかけると、カリキュラムの一貫で日本の文化について調べている、とのこと。女子生徒が多かったこともあって、最初は「日本のおじさんが話しかけてきた」と警戒されたが、話すうちに日本の生花、お茶などに興味を持っていることも教えてくれた。京都で着物を着て街歩きができたことを、とても興奮して語ってくれた。

その団体では、チェックインを待つ間もスマホを操作する人は少数で、建物の内部を見まわしたり、スタッフの動作を興味深げに見たりして待っていた。ガイドブックを見ている生徒もいた。

そのことだけをとって比較するわけではないが、どうも日本の中高校生にはお説教のひとつでも言いたくなる。仲間といるのだから、LINEを使わずにじかに話をすれば良いと思う。じかに話し笑いあって楽しい時間を共有し、友情をはぐくんでほしいと思う。

先日は、「NHKスペシャル ニッポンの家族が非常事態!? 第1集 わが子がキレる本当のワケ」という番組が放映された。視聴された読者も多いと思う。

その中では、人間の脳や体に備わった不思議なしくみの数々が紹介された。そして、四六時中取りつかれたようにLINEをする子どもたち―スマホなどインターネット上のやりとりが思春期の過敏な脳に思わぬ影響があることがわかってきたと紹介された。SNS上のいじめやトラブルが深刻になっており、現代の思春期の脳は悩ましい状況に置かれているとも指摘していた。私が学生時代にヒットした寺山修司の『書を捨てよ、町へ出よう』に習い「スマホを捨て人と会話しよう」と言いたくなった。

現在の中高校生が10年後、20年後の日本を背負っていかなければならない。どうも活気や覇気を感じさせない集団になってしまっているように思う。中学生が女子児童を体育館の2階から投げ落とすという事件や、高校生が交際相手の女子高生を殺害するという事件も起きている。スマホも良いが、リアルな現実社会で仲間と付き合いができるようなたくましさを持ってほしい。

日本がこれからも成長するためにも、次世代の若者を育むサポートが必要になっていると思う。

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