オールジャパンで日本の医療産業を育成/板金企業も参入チャンスをうかがう
『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫
医療機器製造の品質マネジメントシステム認証取得が進む
最近、板金業界でもこれからの成長産業として医療機器分野の開拓に積極的に取り組む企業が増えている。中には一般医療機器の製造販売ができる、第三種医療機器製造販売業許可を取得する企業も出ている。また、医療機器の品質マネジメントシステムの国際規格ISO13485の認証を取得、自社のWebサイトで大きくPRする企業も見られる。一例をあげると長野県岡谷市の㈱平出精密は、2016年12月にISO13485の認証を取得、それを契機に自社のWebサイトに「医療機器の国際品質保証基準、品質マネジメントシステムに基づいた対応で、リスクを最小限にし、コンプライアンスを遵守した、お客様にご満足いただける製品をご提供」と積極的にアピールしている。
こうした板金企業は医療機器関連の精密板金部品、ユニット、シャシー、筐体などを提供している。その一方で、大学の医学部や生命工学を研究する学部・学科と産学連携し、検体検査装置をはじめとした各種検査装置や洗浄装置などの医療機器の研究開発に取り組む板金加工企業の事例も生まれている。
医工連携が加速する背景
そうしたトレンドの追い風となっているのが、数年前から話題となっている「医工連携」だ。医療に関わる新技術の研究開発や新事業の創出を図ることを目的として、全国各地に集積しているさまざまな先端技術やモノづくりノウハウ、医療機関や医・歯学部のニーズ、理工学系学部の技術シーズなどを融合させ、産学官の連携により新しい医療機器の開発を目指す「医工連携」が話題となっている。日本機械学会や精密工学会は数年前から、大学医学部や医系の学会と医工連携に関連した講演会やセミナーを企画するようになっている。
医薬品・医療機器などは生命に直結するため、日本では厳しい法的規制が敷かれており、日本の医療機器産業への参入は難しいとされてきた。そのため、欧米諸国と比較して、医療と工学の研究開発分野での連携が遅れているといわれている。日本の医療現場は輸入に依存する割合が高く、医療機器の分野では長期にわたって貿易赤字が続いている。そのため、企業・大学などが新たに医療機器産業に参入し、事業化に取り組む環境の整備が急務となっていた。
これからの先端医療機器の開発は、本来、日本が得意としてきたモノづくり技術が活かせる領域だが、実際は医学分野と工学分野の連携が十分には図られていない。また、様々なハードルに阻まれて、国際競争力のある先端医療機器の開発は不十分な状態になっている。
こうした状況を打開するため、国や地方を問わず、全国的に医療(臨床)現場が持つ市場ニーズと、工学系の大学・企業が有する技術シーズの橋渡しを行い、新たな医療機器や部材の開発を目指す医工連携が積極的に進められるようになってきた。
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