特集

第34回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介

水を入れても漏れない溶接レスの箱

「溶接なしの曲げ」が「日本塑性加工学会会長賞」を受賞

有限会社 コタニ

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画像:水を入れても漏れない溶接レスの箱①日本塑性加工学会会長賞」を受賞した「溶接なしの曲げ」(SUS304・板厚1.0㎜、W100×D50×H50㎜)/②溶接レスの突き合わせだけで製作された水が漏れない箱。下死点制御で突っ込み量を制御しながら、バックゲージへの突き当て量も考慮して曲げ加工されている

突き合わせだけで水が漏れない箱を製作

画像:水を入れても漏れない溶接レスの箱左から、曲げ加工を担当した澤祐志さん、小谷幹雄社長、川口明宏工場長

「第34回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)の「単体品の部」に出品した㈲コタニ「溶接なしの曲げ」が、「特に高度な曲げの技術・技能を用いた作品」に授与される「日本塑性加工学会会長賞」を受賞した。

この作品はSUS304・板厚1.0㎜を4曲げしてつくられた箱である。溶接レスで、通常金型によるエアーベンドのみで加工されたにもかかわらず、水を注いでも一滴も漏れない。単純な製品だからこそ引き立つ、精度の高さが特徴だ。

板金フェアはコロナ禍によって2020年度以降、オンラインでの展示・投票となっている。その結果、「見栄えのする作品」に票が集まる傾向があった。そんな中、箱曲げされた「ただの箱」が多くの票を集めるのは難しい。しかし同社は、作品の写真とともに実際に水が一滴も漏れない様子を動画として載せ、その技術力の高さをわかりやすく示した。その結果、「この箱はどんな構造になっているのか」「どんな高度な曲げ加工が行われているのか」と多くの投票者が疑問に感じ、この作品に投票。審査委員会の審議を経て、この作品が「日本塑性加工学会会長賞」に決まったという。どうしたらこんな加工ができるのか、興味津々に同社を訪ねた。

  • 画像:水を入れても漏れない溶接レスの箱「溶接なしの曲げ」のコーナー部(外側)
  • 画像:水を入れても漏れない溶接レスの箱箱に水を入れてもまったく漏れない

「創意工夫によって、付加価値を提供する」

㈲コタニの創業者である小谷幹雄社長は今年で55歳。数年前に脳梗塞で倒れたものの、懸命なリハビリにより、現在は杖さえあれば日常生活には不自由がないほどに回復した。毎朝午前7時には出社し、冬場には駐車場に降り積もった雪を小型ユンボで除雪するほどになっている。

小谷社長は「手足が思うように動かせないのでユンボを手足の代わりにしたいと操作を習得しました。今は、大半は社長室で執務、社員が報告や相談に来た時にアドバイスするようにしています」と語っている。

同社は1989年、当時22歳だった小谷社長が治工具を製作する会社として創業した。以来、「現実を見つめた創意工夫によって、付加価値を提供すること」を使命と考え、事業を継続してきた。小谷社長はこれまでの経緯について次のように振り返る。

「学校卒業後は金属プレス工場に就職しましたが、仕事は単調で想像していたものづくりとはちがっていました。そこで、実家の庭先の作業場を借りて、少数の治工具を製作する仕事からはじめました。その後、溶接の仕事を受注するようになりましたが、他社で製作された製品の出来不出来の結果が、溶接を担当する当社にしわ寄せとなってやってくることに不満を感じ、中古のベンディングマシン、シャーリングマシン、パンチングマシンPEGA-345などを導入して、加工の仕事から受注するようになりました」。

画像:水を入れても漏れない溶接レスの箱左:ベンディングマシンFMB-3613NTで曲げ加工する澤さん/右:ステンレスSUS304で加工した製品

会社情報

会社名
有限会社 コタニ
代表取締役
小谷 幹雄
所在地
鳥取県岩美郡岩美町岩井271-2
電話
0857-72-0640
設立
1989年
従業員数
15名
主要製品
工作機械、産業機械、特殊機械カバー、医療機器部品など。鉄(SECC、SPH)、SUS、アルミニウム、銅、真鍮、インコネル、チタン、アクリル、木材の加工
URL
https://www.k-kotani.com/

つづきは本誌2022年5月号でご購読下さい。

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