Interview

「加工の総合商社」を目指す

加工を通じてあらゆるニーズに対応していく

日創プロニティ 株式会社 代表取締役社長 石田 徹 氏

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画像:「加工の総合商社」を目指す石田徹氏

日創プロニティ㈱は、2007年に福岡証券取引所Q-boardに上場後、2019年7月に東京証券取引所市場第二部へ新規上場、福岡証券取引所本則市場へ市場変更した。2022年4月に東京証券取引市場の区分が「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つの市場区分に分かれるのにともない、引き続きスタンダード市場に上場となった。

同社は「日々創造」という創業精神を企業理念とし、さまざまな業界に向けて金属加工製品を提供している。建築業界向けの製品は創業時から手がけ、JR博多駅には同社の製品が多く使われている。現在、「2050年カーボンニュートラル」を目指す中で、再生可能エネルギー ― とりわけ太陽光発電が注目されている。同社はメガソーラーといわれる1MW以上の発電能力を備える太陽光発電所のソーラーパネルを支える架台(太陽電池アレイ支持架台)のトップメーカーで2021年までに301カ所、1,798MWの実績を上げている。

また、材料の仕入れからあらゆる加工に対応可能な生産体制を構築し、最終工程までのサプライチェーンを一元化した「オールインワン加工」を行っている。オーダー加工品を得意とし、顧客のニーズに合わせて設計・加工するノウハウを蓄積、これらが顧客の信頼をつかみ、今日の同社を築いてきた礎となっている。

また、金属加工に限らず優れた技術を持つ企業をM&Aすることによってグループに取り込み、「加工の総合商社」を目指している。「第2次中期経営計画」(2019年8月期~2021年8月期)の最終年度の業績は売上高75億円、営業利益4億5,300万円となった。「第3次中期経営計画」(2022年8月期~2024年8月期)では売上高150億円、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)15億円を目標に掲げている。今後の経営戦略について石田徹社長に話を聞いた。

既存事業と生産能力を強化し、変化に対応

― 「第2次中期経営計画」の業績の推移をみると、最初の2019年8月期は134億7,300万円と大きく伸びたものの、2020年8月期は83億8,900万円、2021年8月期は75億3,400万円と減収傾向となっています。

石田徹社長(以下、姓のみ) 太陽電池アレイ支持架台の受注が2020年8月以降に大幅に減少したことと、受注競争の激化が大きく影響しました。また、「第1次中期経営計画」の際は「加工価値の創造」という観点から金属加工に限らず優れた技術を持つ3社 ― 吾嬬ゴム工業㈱、綾目精機㈱、㈱ダイリツをM&Aで取得しましたが、「第2次中期経営計画」ではM&Aの実績はゼロでした。

そこで2022年度以降はコロナ禍という事業環境の変化を踏まえ、既存事業を強化。新製品・新規事業の開発推進を含めた成長のための投資の必要性を再認識しました。M&Aによって特徴のある企業をグループ化することも必要ですが、既存事業の強化という点では製造能力の増強という視点が少し薄れていました。自社の生産能力を最大化してオーダー生産に対応できる能力を高めることが重要です。

当社の社名の由来でもある「Processing(加工)」「Progress(前進)」「Infinity(無限大)」に立ち返り、今年4月の稼働開始を目標に、20億円を投じた福島第2工場を竣工しました。「巣ごもり需要」の高まり、消費動向の変化で設備投資が活発になっている大型物流倉庫向け耐火パネル、不燃パネルなどの生産能力を増強しています。

また、H形鋼、C形鋼、L形鋼、溝形鋼、角パイプなどの加工に対応するパイプ加工専用のファイバーレーザマシンを導入。建材分野で使われる形鋼市場にも参入し、レーザ加工による穴あけや、切断加工、溶接が一般的であった母屋胴縁の溶接レス構造への置換を提案していきたい。

画像:「加工の総合商社」を目指す左:2020年に完成した本店の社屋/右:2022年4月に稼働開始する福島第2工場

サステナビリティへの対応

― 「SDGs」(持続可能な開発目標)への対応や、「2050年カーボンニュートラル」を目標にした脱炭素社会の実現が大きな課題となっています。

石田 世界的なサステナビリティ(持続可能性)志向の高まりの中、政府は「エネルギー基本計画」を見直し、2030年の電源構成の中に占める再生可能エネルギー(以下、再エネ)の割合を36~38%にするとともに、全体のエネルギーに占める太陽光発電の割合も14〜16%にするという目標を掲げました。すでに世界のトップ企業は事業活動によって生じる環境負荷を低減させるため、事業に使用する電力を100%再エネに切り替えることを推進する協働イニシアチブ「RE100」などに参加し始めています。2022年2月8日現在、加盟企業は世界で350社、日本で65社になり、今後はこうした傾向が加速すると思われます。

こうした環境変化に対応するため、当社は2022年1月に九州大学都市研究センター・馬奈木俊介教授を代表理事とする「一般社団法人 Natural Capital」を設立しました。脱炭素をはじめとした自治体が抱えるさまざまな課題に対して「新国富指標」を活用し、政策効果を客観的に評価することを通して、地域創生に貢献。地域のSDGsに対する取り組みを事業パートナーの一員として支援していきます

また太陽電池アレイ支持架台の製造、施工、再エネ活用でCO2の排出量を削減するため、自家消費市場をターゲットとした「産業用ソ-ラーカーポート」を開発・販売しました。大手企業の工場敷地内へ設置するなど引合いが増えています。

― その場合、ソーラーカーポートでつくられた電気をためる「蓄電池」や、電流を変換する「パワーコンディショナー」が必要になります。こうした分野にも進出されるのですか。

石田 それぞれ専門メーカーがあるのでそうした企業とのアライアンスをしっかり構築し、事業領域を拡大していきたいと考えています。

  • 画像:「加工の総合商社」を目指す1人用WEB会議ブース「SOLO BASE」
  • 画像:「加工の総合商社」を目指す産業用ソーラーカーポート

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会社情報

会社名
日創プロニティ 株式会社
代表取締役社長
石田 徹
所在地
福岡県福岡市南区向野2-10-25
電話
092-555-2825
設立
1983年
従業員数
257名(グループ連結)
主要事業
建築・建材、環境・エネルギー、工場プラント、駐車場、仮設・プレハブ、半導体、農業、畜産、車両部品等の各種金属製品加工
URL
https://www.kakou-nisso.co.jp/

つづきは本誌2022年4月号でご購読下さい。

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