板金論壇

板金業界も事業承継が喫緊の課題

親族内承継、役員・従業員承継、M&A、廃業・解散の選択肢

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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後継者の器を信じられない

70歳前後の経営者の方と話していて、事業承継が話題にのぼることがよくあります。

先日も20年以上お付き合いのある70代前半の経営者と話していると、突然、事業承継の話になりました。ご本人は健康で若々しく、事業拡張のために関連する企業をM&Aするなどの成長戦略を陣頭指揮されてきました。そんな元気あふれる社長ですが、「いつまで一線で働けるのか考えると先々が心配。娘が経理事務を手伝ってくれているが、娘婿は会社勤めで悩んでいる。所有と経営を分離して生え抜き社員に経営を任せる選択肢もあるが、どうしても自分と比較してしまう。ほかの会社ではどうしているのか」というお話でした。

何件か事例をお話しましたが、どれも帯に短し襷に長し、で「うちには合わない」という結論になりました。

「本当は第一線から退くのが怖いのではありませんか。後継者がうまく事業を継承できるか心配なのでは」と指摘すると、「たしかに任せられない。自分がいなくて重要事項を決断できるのか、その力量があるのか見極められない」とおっしゃっていました。「社長はスーパーマンでなければいけない」と完璧さを求めておられました。

とはいうものの、未来永劫、社長であり続けられるわけではないので「花も実もある後継者はいませんよ。元気なうちに後継者を指名しないと後が大変です」と話しました。

社長の平均年齢は62.49歳 ― 社長の高齢化が進む

同じように、後継者の器を信じることができずに事業承継に踏み切れない高齢経営者の数が増えています。

東京商工リサーチが8月に発表した「全国社長の年齢調査」によると、全国の社長の平均年齢は62.49歳で、前年から0.33歳伸びました。調査を開始した2009年以降、2019年の0.43歳アップに次ぐ伸び率で、社長の高齢化が進んでいます。また、年齢分布では70代以上の構成比が31.8%となっています。

同調査では社長の高齢化と業績悪化の関連性も調査しており、直近の決算で減収となった企業の社長は60代が48.8%、70代以上も48.1%を占めています。また、赤字企業の社長は70代以上が22.3%で最多となりました。東京商工リサーチは、高齢社長に業績不振が多い背景として、長期的なビジョンを描けず、設備投資や経営改善の遅れがあることを指摘しています。

つづきは本誌2021年11月号でご購読下さい。

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