視点

元号が変わり、世の中はますますスピードアップ

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4月の旧暦月名は「卯月(うずき)」。

しかし、旧暦は新暦に比べて1カ月ちかく遅くなるので、季節感からすると4月末から6月上旬、初夏の候になる。旧暦では4月から6月が「夏」になるため、「卯月」は夏の最初の月にあたり、「夏初月(なつはづき)」とも呼ばれている。そのため、季節的には「弥生」(3月)こそが春爛漫の月となる。

仕事柄、取材で全国各地を旅するので、毎年いろいろな地方で春を迎える。今年は2月中旬に鹿児島で寒緋桜(カンヒザクラ)が散り始め、木蓮(モクレン)や辛夷(コブシ)も白い花びらを落とし始めていた。

3月になり、自宅付近のいつもの散歩道では、足もとに緑色を濃くした草花が勢いをつけ、見上げると山茱萸(サンシュユ)の可憐な黄色い花の中でチラチラと何かが動く。はて、と目を凝らすとメジロが番(つがい)で訪れていた。

万物の生への息吹が感じられ、生きている幸せを実感する。いま生かされていることに感謝しつつも、もう少し先であろう自身の終末についても「願はくは 花の下にて 春死なん そのきさらぎの 望月のころ」と詠んだ西行法師のいう「花の盛りの頃」を少なからず願っているところがあり、ついつい口ずさんでしまう。

ところで、5月1日に皇太子が新天皇に即位されるのにともなって、改元される。30年間続いた「平成」も終わってしまう。従って、今回が平成最後の「視点」となる。

この時期、さまざまなメディアが「平成」を振り返る特集を組んでいるが、1995年(平成7年)の阪神淡路大震災、2011年(平成23年)の東日本大震災、2016年(平成28年)の熊本地震などの自然災害も目立った。

また、1995年(平成7年)に発生した地下鉄サリン事件は、その後のオウム真理教事件へと発展した。2001年(平成13年)には米国で同時多発テロが発生、国際的にもテロ対策が大きな課題となっていった。

経済を見ると、2000年(平成12年)頃から「世界の工場」として中国経済が急速に発展。2011年(平成23年)にはGDPで日本を抜き、米国に次ぐ、世界第2位の経済大国になっていった。

板金業界を振り返っても、1993年(平成5年)頃から、製造現場で働く作業者の暗黙値(勘・コツ・経験)に頼ったアナログ的なモノづくりを、ITを活用したデジタル(形式値)化によって変革する動きが見られるようになり、ネットワーク化が急速に進んだ。2017年頃からはドイツで生まれた「Industrie 4.0」の考え方が広まり、モノのインターネット(IoT)を活用したスマートファクトリー構築が試みられるようになった。2018年には経済産業省が、あらゆるものがインターネットを介してつながる「Connected Industries」を提唱するようになった。

たかが30年、しかし、この30年間の変化にはこれまでにはなかった長足の進歩・発展があった。この動きは元号が改まってからも、加速する可能性がある。

最近では部材調達の最適化を目指して、クラウド上に受発注プラットフォームを構築、3次元CADデータがあれば7秒で見積りを行い、その金額を了承して「発注」ボタンを押すと、すぐに部材調達ができる仕組みも提供されるようになっている。

これにより発注単価は20%削減でき、発注側には大きなメリットが生まれる。一方でサプライヤーも、引合いを受けて見積りをしても受注ヒット率が20~30%といわれる中、ムダな見積りをしなくても良くなり、「黒字保証」で赤字受注をなくすこともできる。こうしたビジネスモデルはまだスタートしたばかりだが、あたかも「製造業のAmazon」を目指すかのような動きからは目が離せない。改元後は花を愛でるどころではないのかもしれない。

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