板金論壇

最近の工科系大学の研究室事情

問われる教授のマネジメント能力

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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学生に人気の研究室

工学系大学の研究室を訪問し、何人かの先生方にお目にかかった。それぞれの研究室では、時代が要求する複合材料であるカーボンナノチューブ(CNT)、炭素繊維(CFRP)などの研究、ファイバーレーザ発振器の研究、プレス加工プロセスをAIを活用して知能化・可視化する研究などを行っていた。

今回お目にかかった先生はいずれも50代。研究や教育のほか、学部長、学科長などを経験され、大学経営の実務経験をお持ちだった。

少子化の中で理工系を志望する学生が減少しているといわれているが、お伺いした研究室は学生に人気がある研究室ということもあって、学部・大学院などを含めると15名以上、多いところでは44名ものスタッフが在籍。卒業研究、学位論文作成のための研究に携わっていた。学部生と修士学生の割合は大半がイーブンで、都内の有名大学では学部から大学院修士課程に進学する割合も70~80%と高い。これに比べ、「マンモス大学」といわれる大学では、15~20%と低い数字となっている。反面、地方の大学でも50%が修士課程へ進学する研究室もあって、さまざまだった。

大学院への進学率の高い大学ほど、質が高くインパクトのある研究を行うために、プロジェクトとして研究テーマを掲げ、学部、修士課程M1、M2、博士課程から各1名の学生がチームに参加して研究に取り組むケースも見られる。また、研究生というかたちで、海外の大学から留学してきている外国人研究者が一緒になって研究する場合もあった。

こうした研究室では、大半が学外の企業と共同研究を行っており、研究スタッフが44名という研究室では10社以上の企業と共同研究を行っていた。中には社会人ドクターを目指す研究者を企業から受け入れ、企業と共同研究を行っている研究室もあった。

偏差値教育の弊害で学生の質が変わる

ただ、どの先生も指摘されているのが、学生の質に変化が起きていることだ。

大学入試の方法として共通一次試験(センター試験)が行われるようになって久しく、偏差値で志望する大学・学部を決める傾向が強まっているため、工学系学生が備えるべき資質に欠ける学生の姿も目立っているという。

ある先生は「学部3年生の専門課程なのに工学教育や実習で工学の基礎を学ばなければならず、本格的な研究ができるのは1年しかない」と言われていた。むろん、大学院へ進学する学生は当てはまらないが、学部生が研究室へ入ってくるたび、工学の初歩をイチから教えなければならず、「ワンツー、ワンツーの繰り返し」と苦笑いしておられた。

つづきは本誌2019年4月号でご購読下さい。

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