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「ゆで蛙」にならない気づきの大切さ

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「ゆで蛙の法則」という話は、みなさまも聞かれたことがあると思います。ビジネスに限りませんが、環境の変化に対応することの重要性、困難さを指摘するために用いられる警句のひとつです。「2匹の蛙を用意し、一方はいきなり熱湯に入れ、もう一方は冷水から穏やかに加熱する。すると、前者はただちに飛び出して生き延びるのに対し、後者は最初が冷水であったためにジワジワと上昇する水温を知覚できず死に至る」というものです。

むろん科学的な根拠はないようですが、「いつの間に、こんなことに」「どうしてもっと早く気づかなかったのか」と後から悔やんでいる人を見かけることがよくあります。問題が大きくなってからでは、それを解決したり、そこから抜け出したりするためには時間も人も費用も多くかかります。私たちを取り囲む環境の変化は、短いスパンだと変化していないように見えるので、気がついたときには「後の祭り」ということになります。

こうしたことを「ゆで蛙」というようです。かつての日本軍がそうであったように、敗色が濃いにもかかわらず、大局を見誤って好戦的な作戦を採り続けた結果、敗戦を迎えたような事例は枚挙にいとまがありません。

業界をまわっていても、そうした経験を持った経営者やリーダーにお会いすることがあります。市場ですでにライバルに負けているにもかかわらず、以前の成功体験にしがみつき、負け戦を仕掛けた結果、大怪我をする。勝負がつきかけているにもかかわらず、常識を欠いた判断で墓穴を掘る―これは当の本人が、これまでに身を置いていた組織の中ですでに「ゆで上がって」いるため、それが世の中で常識であると錯覚してしまっているからです。

そうした事態を招かないためにも、経営者やリーダーは大局を見て、潮目をじっくりと判断すべきです。むろん勝機を逸しては意味がありませんが、往々にして「これまではこれで良かったから」「このやり方であれば問題は起きなかったから」と対応が後手にまわり、悔やむことになります。

事に当たる前に「あれっ?」「えっ!これで良いのか?」と疑問を持つことが大事です。日常的に多くの仕事をこなすなかで、いかに早く変化に気づくことができるかが大切です。

そのためには、小さなサインにこそ注目すべきなのです。マンネリに流されず、日々新規な案件に取り組むくらいの緊張感と繊細さが大切です。それに従い、新たな行動を起こすことが、「ゆで蛙」にならないための正解だと私は思います。

過日もある経営者が、「社員が変化対応力を備えていない。私が指示したことしかやろうとしない。指示に疑問を持たない。お客さまの小さな変化に注目し、それに従って新たな行動を起こす社員がいない。お客さまの課題はこうだから、『会社はこうあるべきだ』『自分ならこうしたい』 ― と提言してくる社員がいない」とこぼされていました。たしかにその会社では、社員の多くが「こんなはずではなかった」と後から悔やむケースが多いと聞きます。どうしてそうなるのか ― 組織自体が「ゆで蛙」になっているからです。ルーチン的な仕事でも、このやり方がベストなのか、もっと別のやり方の方が速いのではないか、と自問したり工夫したりする仕掛けが必要だと思います。

世の中はすべて時間の経過に従って変化していきます。人が老化するのもしかりです。いかに小さな変化に気づくか、それが大切です。

まだまだ、日本の企業には「ゆで蛙」がいっぱいいます。あなたの会社にはいませんか。

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