Topics

パネルディスカッション

サーボプレスが拓く新しい塑性加工法と塑性加工技術

産学両面からサーボプレスの現在と未来を見つめる

LINEで送る
Pocket

画像:サーボプレスが拓く新しい塑性加工法と塑性加工技術パネルディスカッションが行われた会場の様子

公益財団法人天田財団は5月31日、国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都)で、「サーボプレスによる塑性加工の高度化」をテーマに「第16回 塑性加工助成研究成果発表会」を開催した。

そのなかで、「サーボプレスが拓く新しい塑性加工法と塑性加工技術」と題したパネルディスカッションが行われた。コーディネーターを務めたのは東京大学大学院工学系研究科の柳本潤教授。パネリストは首都大学東京大学院の楊明教授、大阪大学の松本良准教授、金属塑性加工総合メーカーの髙橋金属㈱(滋賀県長浜市)・西村清司執行役員商品開発部長、総合眼鏡フレームメーカーの㈱シャルマン(福井県鯖江市)・木原武志技術開発課マイスターの4人。「産」「学」の両面から、サーボプレスに関しての真剣な議論が交わされた。

サーボプレスの加工におけるインパクト

柳本潤教授(以下、姓のみ) 今回のパネルディスカッションの題目は「サーボプレスが拓く新しい塑性加工法と塑性加工技術」ですが、少し内容を絞って「サーボプレスの加工におけるインパクト」からお話しいただきたいと思います。

たとえば私どもの場合ですと、110トンのサーボプレスを5~6年前に導入しました。導入して最初に思ったのは、ちゃんと命令どおりに動いてくれるので使いやすいなということでした。そういった過去の話から順番にお話しください。

西村清司執行役員商品開発部長(以下、姓のみ) 企業サイドで言うと、生産性の一番のインパクトは通常の2~3倍の生産性をもつ「振り子モーション」だと思います。付加価値的な面では「ソフトモーション」や「リンクモーション」が製品的付加価値を高める加工法と捉えています。

自動車の非常停止用モーターケースを加工する場合、通常はトランスファーになりますが、計算すると800~1,000トンくらいのプレスが必要になります。しかし、これだと導入まで2年はかかってしまいます。

解決策としてアマダマシンツールから提案があったのは、タンデム工法で工程を分散化するということでした。300トンのサーボプレスを3台並べて800トンプレスと同等のものをつくることで、短期間で工事的・工場設備的な面でも環境の負荷が非常に少なくなる上に、コスト的にも非常にリーズナブルに収まりました。

将来的な工法を踏まえると、ソフトモーションなどを活用することによって絞り加工のなかでも特異性が出せるので、サーボプレスは非常にインパクトがあるなと捉えています。

木原武志技術開発課マイスター(以下、姓のみ) サーボプレスを導入するときに一番悩んだのが、油圧プレスとのちがいが何かということでした。そして、ストロークの途中で引き上げることができるのがサーボプレス、押し続けることしかできないのが油圧プレス―そこに大きなちがいを感じました。

当時、メガネフレームはニッケルチタン合金、いわゆる形状記憶合金が流行っていた時期でした。しかし、ニッケルチタン合金は弾性域が非常に大きく、下手に加工すると破裂するため、ゆっくり加工する必要があります。通常のプレスではなかなか加工できず、温間加工か、それにちかい状態の熱をかけながら加工するしかありませんでした。

しかし、アマダのサーボプレスで低速・長時間加圧を行うと冷間で一発で加工できました。「これはすごい」と思い、会社にお願いして導入してもらいました。下死点付近で低速で押し続けながら加工ができることが、我々としてはインパクトがあったところかなと思っています。

松本良準教授(以下、姓のみ) プレス企業で実験させてもらったときに、はじめてサーボプレスを使いました。そのときはマグネシウム合金の温間鍛造の実験でしたが、ご存知のとおり、マグネシウム合金は室温ではほとんど成形できません。そのため通常は電気炉のなかで加熱し、ある程度温度を上げてからプレスにセットして加工する必要があります。

しかし、我々がその時やりたかったのは、温かい金型と冷たいマグネシウムのビレットをプレスにセットして、接触により温めて加工する――加熱と成形を一工程のなかで行いたいということでした。アイデアはあったのですが、実現する機会がなかなかなく、サーボプレスが唯一実現できる機械だと思っています。

実際にサーボプレスを使ってみると、本当にロボットの腕のように自由に動かせるので、任意のところで任意の時間止め、良いところまで加熱してから押すことができる―当時は学生だったので、こうした機械は見たことがなく、「実際にできるんだな」と非常にインパクトを受けました。

もうひとつは、技術的な話ではありませんが、騒音がなく静かというのがあります。それまでは機械プレスを使っていたので騒音が大きく、会話をするにも大きな声を出さなければなりませんでした。しかしサーボプレスは本当に静かで、普通の声で相談しながら実験できるということも非常にインパクトが強かったです。

その一方で、静かということはハイブリッド車と一緒で、危険性をあまり感じないため、学生たちにどのように危険性を認識してもらうかという課題があります。

楊明教授(以下、姓のみ) 昔、真鍋先生と一緒にいろんなプロセス制御を一生懸命実験しました。油圧プレスだと大変ですが、サーボプレスだとめちゃくちゃ簡単なんです。プログラムするだけでできてしまう。それだけでも十分メリットがあります。非常に可変性に優れている。

もうひとつは、マイクロ加工のときには、すごく精度が良いということです。我々の研究室で使っている卓上型のサーボプレスは、小さくなった分だけ剛性が高いので、制御性も高くて精度も出る。実験機としてはすごく良いなというのが正直なところです。

つづきは本誌2018年9月号でご購読下さい。

LINEで送る
Pocket

関連記事

Topics記事一覧はこちらから