Interview

「板金業界の地位向上」を提言

板金需要創出のため、±5/100㎜の加工精度へ挑戦

株式会社 高村興業所 代表取締役社長 髙村 隆晴 さん

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1988年、岡山県倉敷市と香川県坂出市を結ぶ瀬戸大橋が10年余の建設期間を経て開通、四国はこの橋の完成によって本州と一体となった。1965年、高村興業所はその瀬戸大橋着工の基盤となる、基礎実験のための縮尺モデルの製作を担当した。最先端技術と英知を集結した大プロジェクトの始動に先駆け、縮尺モデルは重要な役目を担っており、手がけることになった同社のスタッフは熱い思いで製品を完成させた。その思いは同社を取り巻くモノづくりの環境が大きく変化する中でも絶えることなく脈々と伝えられ、精密板金加工をドメインとする同社の事業発展を支えてきた。

現在、同社の髙村正和会長は広島シートメタル工業会の会長に就任、熱い思いで板金業界の発展と振興に尽力されている。また、髙村会長の実弟である髙村隆晴社長は高村興業所の変化対応力を強化するために、設備力、技術力のパワーアップで精密板金というドメインをさらに鮮明にする一方、ワンストップ・ソリューションをお客さまに提供することで、顧客満足度の改善にも積極的に取り組んでいる。そこで、髙村隆晴社長にその熱い思いの一端を語っていただき、これからの板金業界を展望していただいた。

― 御社は精密板金、製缶、機械加工など幅広い加工に対応できる総合力をお持ちです。にもかかわらず、御社は「総合力」ではなく、「精密板金」を“ドメイン”※1として発信しています。その意図についてお聞かせください。

画像:「板金業界の地位向上」を提言髙村隆晴氏

髙村隆晴社長(以下、髙村) 当社は以前から「板金ゼネコン型企業を目指す」と発信し続けており、製造、溶接、組立までのワンストップ体制を構築してきました。近年の発注方式は、製造から組立までのセット発注が顕著になってきたので、当社が進めてきた体制づくりが功を奏している格好です。ただ、先を見据えると、東京オリンピック・パラリンピック後の需要低迷や、国内総人口の減少による国内市場の縮小など、楽観視できない課題があります。何よりモノづくり環境は変化するのが常。我々のような中小企業が今後生き残っていくためには、「自社のドメインは何か」「どの分野で生き残りをかけていくのか」を模索しつづける必要があります。そうした中、当社は「精密板金」を“ドメイン”として選択し、発信することにしました。

― 精密板金の分野では最近、「機械加工やプレス加工並みの加工精度を要求される仕事が増えてきている」といった声が聞こえてきます。

髙村 以前に比べて±5/100㎜の加工精度が要求される仕事が増えてきていることは確かです。板金加工の高度化が要因のひとつでしょう。ひと昔前までは、機械加工と板金加工の加工精度の差は歴然でした。それが今や、マシンの性能の向上と板金サプライヤーの技能の研鑚によって、板金加工の加工精度はずいぶん向上し、板金加工によって±5/100㎜の加工精度に追い込むことが可能となりました。ただ、その精度を維持しつづけるとなると難度が一気に上がります。板金加工における±5/100㎜の公差とは、材料の仕入れ段階で発生しているわずかな板厚の誤差が、そのまま品質を左右するような次元の話です。ここまでくると、従来どおりの板金加工では、要求される加工精度を満たすことはできません。当社が手がける仕事のひとつに、医療機器関連の部品製作の仕事があります。板厚1.6㎜、手のひらに乗るような小さな部品に穴をあけるのですが、要求通りの穴位置精度をクリアするには曲げ加工後に穴をあけるしかありません。レーザマシンで下穴加工を行い、事前に小さめの穴をあけておき、曲げ加工後にエンドミルで端面を切削し、最後にリーマで穴の形を整えます。ここまでして、ようやく基準公差に収まります。

  • 画像:「板金業界の地位向上」を提言パンチ・レーザ複合マシンEML-3510NTP+ASR-48M+TK
  • 画像:「板金業界の地位向上」を提言ベンディングロボットシステムASTROⅡ-100NT+ASTROMP-20+HDS-1030NTR

会社情報

会社名
株式会社 高村興業所
代表取締役社長
髙村 隆晴
住所
広島県廿日市市大野下更地1790-1
電話
0829-56-1141
設立
1961年
従業員
48名
業種
精密板金加工部品の設計・製作、機械加工部品の製作、組立など
URL
http://www.takamura-kk.co.jp/

つづきは本誌2015年10月号でご購読下さい。

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