伝統と革新 ― 板金業界の100年企業に学ぶ
創業148年の老舗板金企業 ― 異彩を放つ「曲げ加工のスペシャリスト集団」
ルーツは江戸期の飾り職人、「建築板金」から「工場板金」へシフトし一途に研鑽
株式会社 三神鈑金工業所
コア技術の曲げ工程。計12台のベンディングマシンを備え、その多くが特殊仕様となっている
148年の歴史を持つ「曲げのスペシャリスト集団」
三神一浩社長(左)と、三神社長の従兄弟に当たる山本京司部長(右)
愛知県名古屋市の㈱三神鈑金工業所は、1878年(明治11年)の創業以来148年におよぶ歴史を持つ。三神家に伝わる警察署発行の「小間物商」の鑑札や、「金銀細工商」の免許鑑札などを見るに、「創業以前」の江戸期には金・銀・銅を扱う飾り職人であったと考えられ、長きにわたり金属加工に携わってきたことがうかがえる。
創業以降は90年超の間、社寺や住宅の屋根に用いる建築金物の加工・施工を手がけ、1970年代に「建築板金」から「工場板金」へとシフトした。それ以降は3代にわたり曲げ加工の技術を磨き続け、今では多種多様な産業分野へ高精度・高品質な製品を供給する「曲げ加工のスペシャリスト集団」として異彩を放っている。
地場の顧客や同業者からは「曲げで困ったら三神鈑金へ頼む」「三神鈑金が曲げられないなら曲がらない」と評され、絶大な信頼を得ている。特殊仕様の機械、充実した金型、妥協を許さない職人たちと高度な技術・技能は同社ならではの強みであり、強力な参入障壁にもなっている。
現在は、5代目の三神一浩社長が舵を取る。三神社長は大手機械メーカーで販売・サービスを担当したのち、1997年に三神鈑金工業所へ入社。主にレーザ加工を担当し、2013年に5代目社長に就任した。
三神社長は自社のスタンスについて次のように語る。
「当社の強みは、深曲げ・鈍角曲げ・長尺曲げなどで他社ではできない加工ができることと、複雑で難しい形状の特急案件でも迅速・丁寧に対応すること。ただ、長年事業を続けてくることができた要因を考えると、大げさかもしれませんが『地域や仲間との調和』が大きかったように思います。困っているお客さまや同業者に頼られて、時には損得抜きで親身に相談に乗っている祖父や父の姿をよく覚えています。狙いがあってそうしてきたわけではありませんが、私たちのような小さなものづくり企業は、お客さまの期待に応えながら、地域に根を張り、助け合い、高め合う関係を築くことが何よりも大切なのかもしれません」(三神社長)。
警察署発行の「小間物商」の鑑札(左)と、「金銀細工商」の免許鑑札(右)。創業前の発行で、江戸期には飾り職人であったと考えられる
2024年に導入したファイバーレーザマシンVENTIS-3015AJe(6kW・シャトルテーブル仕様)
レーザ溶接ブースでの段取り作業。YAGレーザ溶接で仮付け後、ファイバーレーザ溶接で本溶接を行う
転機は1970年 ― 「建築板金」から「工場板金」へ
「曲げの三神」が曲げ加工に本格的に取り組み始めたのは、1970年代に入ってからだ。祖業である「建築板金」は、屋外施工が天候に左右されやすく、稼働が安定しなかったため、屋内作業で完結する「工場板金」へと舵を切った。
同社初のNCベンディングマシンRG-100を導入した1970年は、大きな転換点だった。それまでは自宅敷地内の工場で板金ばさみ・たがね・ハンマーなどを使い、建築金物を手加工で製作していた。機械でなければ加工できない仕事は外部へ委託していたが、納期が3~4週間かかることも多く、顧客の工事日程に対応するため機械化に踏み切った。RG-100の導入後は、建築金物だけでなく地場の機械・設備メーカーなどからも曲げ加工の依頼が舞い込むようになり、受注の幅が広がった。
1973年には騒音問題を回避するため、名古屋市西区の十方町へ工場移転。その後は最新鋭の加工設備を順次増強し、工場建屋を拡張しながら、シャーリングからレーザ加工、パンチング加工、曲げ加工、溶接・仕上げに至る一貫生産体制を整えた。また、顧客の要望に応えるため技術・技能の研鑽を重ね、信頼を積み上げていくうちに、いつしか業界内で「曲げの三神」と呼ばれるまでになった。
三神社長の母親である三神泰代専務は、これまでの歩みについて次のように語る。
「最初のRGを導入した1970年は現社長の誕生年でもあり、当社にとっては大きな節目になりました。私は3代にわたり経営を間近で見守ってきましたが、3代目は機械を買うこと、4代目は金型をつくることが心底好きで、根っからの職人でした。ものづくりに対するこだわりが強く、妥協のない丁寧な仕上がりが好評で、ご指名の依頼もよくいただきました。ありがたいことに今でこそ『曲げの三神』などと呼ばれますが、初めから目指していたわけではありません。それぞれの代が目の前の仕事にがむしゃらに取り組んできた結果、気がついたらこうなっていました」(三神専務)。
左:半導体関連のステンレス製品。「最近は半導体関連の仕事が上向いている」(三神社長)/右:螺旋階段のステップ。縞鋼板の専用金型も充実している
会社情報
- 会社名
- 株式会社 三神鈑金工業所
- 代表取締役社長
- 三神 一浩
- 所在地
- 愛知県名古屋市西区長先町56
- 電話
- 052-503-2966
- 設立
- 1960年(1878年創業)
- 従業員数
- 20名
- 主要事業
- 建築、装飾板金加工、精密板金加工、超精密プレス加工、溶接
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