第38回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介
ベンディングマシンで絞り形状を再現 ― 曲げ加工のさらなる可能性を追求
「グローリー・ホール」が「日本塑性加工学会会長賞」を受賞
リョーユウ工業 株式会社
「日本塑性加工学会会長賞」を受賞したリョーユウ工業㈱の「グローリー・ホール」(SUS304・板厚1.2㎜、W150×D150×H50㎜)
金型から製作してプレスによる絞り形状を再現
前列左から古庄理史営業係長、諸石裕社長、田中隆二さん。後列左から原田秀彦さん、廣津礼製造部長、盛永明日香管理部主任、小山良製造部シャーリング課課長、永露美幸さん、長森達周さん
「第38回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)の「単体品の部」に出品したリョーユウ工業㈱の「グローリー・ホール」が、特に高度な曲げ・絞りなどの技術・技能を用いた作品に贈られる「日本塑性加工学会会長賞」を受賞した。
本作品は一見専用の金型を製作してプレス加工されたように見えるが、板金加工にこだわり、ベンディングマシンで加工されている。イメージとしてはφ20㎜の穴の板に、0.2㎜ピッチで大きくした50種類のディスク10枚を少しずつ押し込んで、穴をφ37㎜程度まで変形させ、それと同時に板厚方向にも塑性変形させている。形状は、ダムから水を抜くダム穴をイメージしている。穴が割れたり、板がひずんだりと何十枚もテストを行ってこの形状を製作したという。鏡面仕上げのステンレス材(SUS304)・板厚1.2㎜を使って、ひずみのほとんどない作品に仕上げており、高度な塑性加工の技術・技能が評価された。
絞り加工を金型レスの板金加工に置換
本作品は「絞り」形状の再現で、ベンディングマシンのさらなる可能性を提案するために構想されたオリジナル作品。穴の加工にあたって、ベンディングマシンのダイはV溝ではなく、ホール状のものを作成。パンチはディスク状のものを重ね、あえてホルダーに固定せずに圧力を加えて加工した。徐々にディスクの径を大きくし、それを抜き落としながら成形した。形状を決定する要因がダイの径やディスクの重ね方、抜き落とす順序、ストローク長など多岐にわたる中、何十回もの試行を重ねて要素分析を行い、目標となる形状に近づけたという。真っすぐに穴を延ばすことが困難で、ディスクと材料の固定治具もかなりの試作を繰り返した。そうした中で、垂直にボルトをとおすことで芯を捉えるという、これまでとは別の発想の積層金型にたどりついた。
また、板を延ばして穴を広げる加工の性質上、穴の外にも応力が発生し、ひずみも強く出る。しかし、完成した作品はひずみをおさえる工夫と、これまでに培った作業者の技術力で、高い平面度と曲げ精度を実現した。絞り加工・プレス加工とは異なり、個別の金型を必要としないため、小ロット低コストでの製作が可能となっている。
ベンディングマシンによる加工の可能性拡大
諸石裕社長は受賞の喜びについて次のように語っている。
「作品の評価については社内でも賛否が分かれていました。板金加工の知識の浅い者からは『美しい穴』としか捉えられず、加工をかじった者からは『絞ればいいのに』と、作品の本質とは異なる角度から否定的なコメントがありました。度重なる試作の末、思い描いた作品を完成させることこそできましたが、『ベンディングマシンによる加工に造詣の深い人でなければ、この形状を実現するための苦悩と技術は理解されないのではないか』という心配がありました」。
「結果としてこのたび審査を担当された諸先生をはじめ、多くの関係者の方々から賞賛のお声をいただいたこと、また、栄誉ある賞の中でも特に意識していた『日本塑性加工学会会長賞』を頂戴したことで、われわれの努力や信念が報われた、間違っていなかったと、感涙にむせぶ思いです。専用金型を不要とすることによる省コスト化、また、ベンディングマシンによる加工の可能性拡大という観点から、これまでにない技術を提案できたと自負しています」。
本作品のために製作されたダイ・治具の一部
同じく本作品のために製作されたディスクの一部
会社情報
- 会社名
- リョーユウ工業 株式会社
- 代表取締役
- 諸石 裕
- 所在地
- 福岡県糟屋郡宇美町障子岳南5-3-5
- 電話
- 092-933-6811
- 設立
- 1972年
- 従業員数
- 49名
- 主要事業
- 建築板金、精密板金、内装・サイン・装飾金物・特殊車両トラックのボディーの製作など
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