独自開発の金型技術と特殊仕様の300トンサーボプレスを融合
自動車シート部品が主力 ― 顧客が求める「安定供給」「受注キャパ」に対応
株式会社 建和
2024年12月に導入したサーボプレスSDE-3020iⅢ。ボルスタープレートに特殊材を用い、厚さを標準の約1.5倍にすることで剛性を高めた
金型製作からプレス加工までの一貫体制に対応
山本道典社長
愛知県安城市の㈱建和は、自動車シート部品などを手がける金属プレス加工企業。1960年に創業し、1967年頃から自動車の内装部品メーカーと取引を始めて以来、約60年にわたり自動車向けプレス部品を供給し続けてきた。
2011年頃からは、3代目経営者の山本道典社長(2015年に社長就任)がけん引するかたちで、金型製作を一部内製化。2014年には金型加工用に恒温室を設置し、マシニングセンタやワイヤ放電加工機、プレス成形シミュレーションソフトウエアを導入した。恒温室は、マシニングセンタが25±3℃、ワイヤ放電加工機が20±2℃に設定され、熱変位をおさえることで加工精度を高めた。
その後は精度・品質を担保する3次元測定機などの測定機器類も導入し、CAD/CAM/CAE/CATに対応するとともに、金型設計製作からプレス加工までの一貫生産体制を充実させた。プレス加工は現在、サーボプレス4台を含む最大300トンの順送プレスと単発プレスに対応し、スポット溶接などのサブアセンブリーまで手がけている。
また、山本社長みずからプロジェクトリーダーとなり、従業員と一体的にITを活用した業務改善を推進してきた。Google WorkspaceなどのSaaS型クラウドサービスとGoogle Apps Script(GAS)、プログラミング言語Pythonなどを駆使し、自社開発によりさまざまな業務の自動化を実現している。
手前が単発プレス工程、左奥が順送プレス工程
加工中のサーボプレスSDEW-3025(順送)の金型部。ボルスタープレートを二重にし、ゲタを用いず小型化・簡略化をはかった独自開発の金型を使用
顧客が求める「安定供給」「受注キャパ」に対応
主要顧客は自動車部品メーカー3社で、売上全体の90%以上を占める。代表的な製品はシート、トランスミッション、スペアホイールキャリア、マフラー、燃料タンク周辺に用いる金属プレス部品。中でもシート部品の売上が全体の70%超を占めている。
2020年頃、自動車の電動化が本格的に動き出した時期から、パワートレーンの変化に左右されにくい車室空間向け部品(シート部品)の受注獲得に力を入れ、顧客ニーズに対応した技術開発や生産体制の構築に取り組んできた。現在はワンボックスカーのシートを前後にスライドするレールや、シートの回転機構の部品などが堅調に推移している。
シート部品の受注拡大への取り組みについて、山本社長は「お客さまに選んでいただけるだけの実力を示すことを心がけてきました」と振り返り、顧客が重視するポイントとして「安定供給」と「受注キャパシティー」の2つを挙げた。
「今の時代、お客さまはサプライヤーを選定するときもKPI(定量的な目標管理)で判断します。重視する評価ポイントのひとつは『ものをつくり続けられるかどうか』。納期遅延や品質不良がなく、毎日1箱1箱、遺漏なく納入できているかどうか。問題が発生したときに、きちんと対応できているかどうか。そして長く取引を続けられるかどうかです」。
「もうひとつは『お客さまの要望に応えられるだけの受注キャパがあるかどうか』。これは生産(プレス加工など)でも生産準備(金型設計製造など)でも同様です。ひとつ目のポイントとも通じますが、供給停滞リスクが多様化・深刻化している今、安定して生産できるだけの人員・設備を確保できることや、新車種の立ち上げが重なる時期でも金型の設計製造能力を確保できるかどうかが問われます」。
「われわれにできるのは、日頃の行いの積み重ねによって当社を選定していただく根拠と信用を築き上げること。そして、新たな案件の引合いをいただいたときに確実に対応できるだけの備えをしておくことです」(山本社長)。
複雑形状の製品。従来の6工程を1工程に集約し、大幅なコストダウンを実現した
製造現場にはタブレット端末が設置され、自社開発したWebアプリで生産進捗を管理する
会社情報
- 会社名
- 株式会社 建和
- 代表取締役
- 山本 道典
- 所在地
- 愛知県安城市東端町青ノ山19
- 電話
- 0566-92-6295
- 設立
- 1960年
- 従業員数
- 43名
- 主要事業
- プレス金型設計製作、プレス加工・サブアセンブリー
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