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積極投資で飛躍をはかる中四国の板金企業

敷地1万㎡の成長の“器” ― 新工場開設で自動化・一貫生産が前進

多種多様な製品の高品質・短納期に対応する技術力と対応力

有限会社 徳永商店

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画像:敷地1万㎡の成長の“器” ― 新工場開設で自動化・一貫生産が前進2024年9月に移転した「新工場」のブランク工程(奥)と曲げ工程(手前)。工場スペースが広がり、マテハンを中心に作業効率が大幅に改善した

新工場開設 ― 自動化・一貫生産対応が前進

画像:敷地1万㎡の成長の“器” ― 新工場開設で自動化・一貫生産が前進徳永琢社長(左)と徳永翔太専務(右)

岡山県備前市の㈲徳永商店は、「技術力」と「人間力」を強みに掲げ、「高品質」「短納期」を武器に成長を遂げてきた。少数精鋭ながら「当社とお客さま、お互いにとってより良いものをつくること」を信条とし、VA/VE提案を積極的に行うことで顧客の信頼を勝ち取ってきた。

2024年9月には「新工場」への移転を完了した。新工場は、国道2号線まで約1分、山陽自動車道・備前ICまで約7分の好立地。旧工場から車で1分以内と近く、移転にともなう従業員の負担も最小限で済んだ。

敷地面積は約1万㎡で、旧工場の6倍以上に広がった。工場スペースが広がり、設備レイアウトを抜本的に見直したことで、マテハンを中心に作業効率が大幅に改善した。

工場移転にともなって、既存のパンチングマシンEMZ-3510MⅡにTK(テイクアウトローダー)付きマニプレーター(RMP-2512NTK)を後付けした。これまで手作業で対応していたEMZの材料供給とバラシを自動化し、夜間を含む15時間以上の連続自動運転に対応した。

また、コロナ禍の時期に空気清浄機の最終組立まで対応した実績を生かし、ACサーボモーターのコントロールボックスの部品加工から電装組付までワンストップで行う「一貫生産」も開始した。基板を含む電装品の支給を受け、ROMの書き込みや電装組み付け、配線、検査、梱包まで行って、完成品として出荷している。

新工場について徳永翔太専務は「ハンドリングが劇的に楽になりました。当社では特急・割込みの案件も多い。前の工場は、特急品のパレットが入ってくると、奥のパレットをいったん外に出してからでないと加工を始められませんでした。パズルのような作業に毎回5~10分の時間を取られ、それが積み重なって膨大なロスになっていました」と語る。

徳永琢社長は「新工場への移転は、20代の頃から抱き続けてきた夢。30年越しで念願がかないました。“器”ができたことで、ようやくスタート地点に立つことができました。旧工場の周辺は宅地化が進み、騒音トラブルが心配でしたし、手狭だったためEMZにマニプレーターを装着することもできず、何をするにも制約になっていました」。

「マニプレーターを導入したことで一歩、自動化を進めることができました。敷地にはまだまだゆとりがあります。現在進めている新規案件の立ち上げが落ち着いたら、工場建屋の増築・増設や、加工設備の増強を具体的に検討していきたい」と語っている。

画像:敷地1万㎡の成長の“器” ― 新工場開設で自動化・一貫生産が前進左:パンチングマシンEMZ-3510MⅡ(手前)とレーザマシンFO-MⅡ 2412NT(奥)。EMZにはマニプレーターを後付けし、連続自動運転に対応した/右:曲げ工程。FO-MⅡを導入した後、立て続けにベンディングマシンを導入し、競争力を高めた

梱包資材の製造・販売から板金加工へ転身

同社は「商店」の名のとおり、戦前からさまざまな商材を扱ってきた。徳永社長の祖父が法人化したのは1962年。当時は、全国屈指の生産量をほこる備前市内の耐火レンガ産業へ向けて、製品をまとめる縄を製造・販売していた。その後は特注の木製パレットも手がけるようになり、販売先も耐火レンガ産業だけでなく、地場の鉄工所などへと広がっていった。

1977年、近隣の鉄工所の発注キャンセルで行き場を失ったベンディングマシン(RG-50)を引き受けることになり、板金加工に参入した。中核事業はあくまでも縄やパレットなどの梱包資材だったが、そのかたわらで穀物乾燥機部品や電気機械部品を生産。その後もボール盤やスポット溶接機、コーナーシャーなどを順次導入して、対応できる仕事の幅を広げていった。

1986年、当時19歳の徳永社長が入社したときには、すでに梱包資材の事業から撤退し、板金加工事業に集約していた。当時の得意先は1社で、主力製品はシーケンサーなどの制御機器部品。社員数は3~4人だった。

1990年代に入ってからもパンチングマシン、ベンディングマシン、タッピングマシン、溶接機などを更新・新設し、生産能力を強化。バブル崩壊後は主力顧客の倒産により仕事量が激減したが、それをきっかけに徳永社長がリーダーシップを発揮して新規開拓に乗り出し、顧客の数や製品のバリエーションを増やしていった。

  • 画像:敷地1万㎡の成長の“器” ― 新工場開設で自動化・一貫生産が前進製造現場にはiP進捗のタブレット端末を配布。進捗情報の入力や図面の閲覧ができる
  • 画像:敷地1万㎡の成長の“器” ― 新工場開設で自動化・一貫生産が前進ACサーボモーターのコントロールボックスの組立作業。ROMへの書き込み、電装部品の組み付けまで対応する

会社情報

会社名
有限会社 徳永商店
代表取締役
徳永 琢
所在地
岡山県備前市伊里中684-1
電話
0869-67-0672
設立
1962年
従業員数
17名
主要事業
半導体製造装置部品・空気清浄機・農業機械部品・建設機械部品・弱電機器部品・産業機械部品・食品加工機械部品・制御盤部品などの精密板金加工・溶接・組立
URL
https://tokunaga-s.jp/

つづきは本誌2025年4月号でご購読下さい。

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