特集

脱炭素社会に貢献する「SBT」認定企業

脱炭素経営による生き残り戦略

自動車・輸送用機器セクターで初めてSBT認定を取得

協発工業 株式会社

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画像:脱炭素経営による生き残り戦略2021年に竣工した新社屋。2カ所に分散していた工場を1カ所に統合したことで、エネルギー使用の効率化により2.5トンCO2の排出削減を実現した

ティア2のプレス企業がCDPへの情報開示とSBT認定取得を実践

画像:脱炭素経営による生き残り戦略「最終目標は2050年のカーボンニュートラル」と語る柿本浩社長

協発工業㈱は、主に自動車ブレーキシステムに関連する自動車部品の金属プレス製品を手がけるプレス加工メーカー。1966年の創業以来、ティア2サプライヤーとして自動車産業の成長とともに発展を遂げてきた。工法の開発から金型設計・製作(外注)、プレス加工、溶接、組み付け、表面処理(外注)などの2次加工まで一貫対応できる体制を構築している。

同社は2021年1月、自動車・輸送用機器のセクターとして国内で初めて「SBT」(Science Based Targets)の認定を取得した。中小企業版SBTの対象となるScope1(直接排出)とScope2(間接排出)について、温室効果ガスの排出量を2030年に2018年度比で50%削減する目標を設定。Scope3(その他の排出)についても、排出量を測定して削減に取り組むことを宣言した。

SBTの認定取得に先立ち、2020年夏からはSBTの共同運営団体のひとつである「CDP」(旧名称:Carbon Disclosure Project)に、Scope3の概算値を含む温室効果ガス排出量の情報開示をスタートした(図1)。CDPは気候変動関連情報を収集・開示する国際的な環境非営利団体(NGO)で、環境問題に対する企業の取り組みを評価するうえで大きな影響力を持つ。

現在はSBTの目標達成へ向け、排出量の約90%を占める電力起源CO2の削減対策を順次実行している。2021年度には環境省の「中小企業の中長期の削減目標に向けた取組可能な対策行動の可視化モデル事業」に参加し、同省の支援を受けながらSBTの目標達成へ向けた具体的な削減計画(ロードマップ)を策定した。

SBTの認定取得だけでなく、CDPへの情報開示も行っている中小製造業は少ない。脱炭素経営への注目度が高まる中、同社はいち早く取り組みを始めたフロントランナーとして各方面から注目されている。

  • 画像:脱炭素経営による生き残り戦略【図1】CDPで開示した温室効果ガス排出量の推移とSBT認定を受けた排出削減目標
  • 画像:脱炭素経営による生き残り戦略45~200トンの順送プレスライン7台を運用している。写真は60トンリンクモーションプレス(TPL-60FX)と80トンサーボプレス(SDE-8018)

脱炭素経営による生き残り戦略

柿本浩社長は、脱炭素経営に取り組む意義について次のように語っている。

「多くの大企業がCDPに賛同し、Scope3対応として取引先に温室効果ガスの排出削減を要請している状況を知って、強い危機感を覚えました。グローバル企業はサプライヤーに対して再エネ利用や排出削減の取り組みを取引条件にしつつあり、自動車産業ではトヨタ自動車が主要サプライヤーに年率3%のCO2排出量削減を求めるなど、事業環境が大きく変わりつつあります」。

「元請け企業(ティア1)に対して排出削減要請が強まれば、当社のようなティア2のサプライヤーにも影響がおよぶと予想されます。これからの時代、どの企業にとっても気候変動対策は避けて通れない課題です。大企業は言わずもがなで、その調達先である当社のような下請け企業は排出量を正確に把握していることが“選ばれる条件”になってくる。逆に、気候変動対策を行わないことは、今後の取引量に影響を与えるリスクと捉えています」。

「正確な排出量を算定し、第三者機関であるCDPに開示し、削減目標を設定してSBTの認定を取得していることは、お客さまの安心感・信頼感につながり、ビジネスチャンスの拡大も期待できます。できないことを求められてもできませんが、できることをやらないのは失策です。脱炭素への対応は“できること”ですから、脱炭素経営を先取りすることで生き残り続ける企業でありたい」(柿本社長)。

画像:脱炭素経営による生き残り戦略CO2排出削減計画(2021年度策定)

会社情報

会社名
協発工業 株式会社
代表取締役
柿本 浩
所在地
愛知県岡崎市滝町字十楽8-4
電話
0564-66-4066
設立
1969年(1966年創業)
従業員数
37名
主要事業
自動車部品のプレス加工・溶接加工・組み付け加工ほか
URL
https://kyohatu.co.jp/

つづきは本誌2023年11月号でご購読下さい。

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