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Z世代の新入社員をむかえた企業の対応

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新年度をむかえ、新しく社会人になった新入社員と見受けられる人が緊張した面持ちで早めの駅のホームに立っている姿も目立ってきた。おうかがいする板金工場でも新卒者をむかえたところも多い。人手不足とはいうものの、最近は大企業だけではなく、技術力があり、SNSなどで会社紹介を積極的に行っている企業は、インターンシップなどの機会も活用して新卒者が入社するケースも増えている。ただ、大卒者・高卒者の採用は相変わらず難しいようだが、短大・専門学校の卒業生の採用は改善されてきている傾向という。SNSなどで入社式の様子をアップしている企業も散見される。

ところで、2023年度の新卒者の大半は1990年代後半から2010年代に生まれた「Z世代」である。この世代は1980年代から1990年代に生まれた「ミレニアル世代」や「ゆとり世代」と同じように、一部は2002年から2010年代初頭まで行われた、従来の詰め込み型の教育を見直して個々の個性を伸ばすために設けられた「ゆとり教育」を小学校時代に受けている。しかし、授業日数の減少による学力低下の指摘から、学習指導要領の見直しが行われ、2011年度以降に「ゆとり教育」の流れとは逆の内容を増加させる学習指導要領が施行された。

「ゆとり教育」は学力の低下に加えて、「全員が一番」「誰とも比べない」という評価の仕方に変わり、運動会で「仲良く一緒に」ゴールさせるなど、争わず、目立つことを避け、みんなと同じように行動しないと、いじめの対象になりやすいといったケースも起きてきた。また、インターネット、スマートフォンの普及によりSNSの利用が増え、いじめ自体が陰湿で表面化しにくくなったともいわれる。

一方で、Z世代の両親は「団塊ジュニア」「新人類」といわれた世代で、競争意識が強い「団塊世代」とは異なり、バブル経済や激しい受験戦争などの経験から個性重視の傾向があり、子どもとは友だち同士や仲の良い先輩と後輩のような関係を持つケースが多いといわれる。そのため、Z世代は周りを気にし過ぎする傾向があるという。自分が相手からどう思われているのか、つまらないことを言っていると相手に思われるのではないか、まちがえていたらどうしよう、などと考え過ぎて、自発的に相手に働きかけることができないといわれている。そのため「報告」「連絡」「相談」の「報連相」が苦手といわれる。

では、Z世代の新入社員にはどのような接し方をすれば良いのか。知人の人事担当者は「Z世代の新入社員には、自律的に行動し、経験から学ぶ『自律学習』の力が重要。それには、計画から実行、評価、改善を繰り返すPDCAサイクルの大切さを教える。自分で考え、試行錯誤するほうが成長を期待できる。自分で考える習慣を身につけ、自分なりの仮説を立てて実行した結果を自分で改善していくためには、考える力を身につけさせることが必要」とアドバイスする。

ある中堅企業では、4月3日の入社式後1週間は社長や各部門長が業務やマネジメントについて説明を行ってから、現場で実践・経験する前のシミュレーションとしてビジネスゲームを導入している。ビジネスゲームで課題に対するPDCAをシミュレーションで経験することで、「実践・経験」の機会を提供し、「自分で考える力を身につけさせることが目的。とかくZ世代は優等生が多いと聞いており、失敗することに不安を持っていると言われます。ビジネスゲームで失敗することを学び、チャレンジする気持ちを育てたい」と経営者は語っておられた。

Z世代の新入社員が連休後もハツラツと会社の門をくぐってくる姿を見たいと思う。

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