第32回優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介
第一種圧力容器製造の認可を持つ高い技術力
初応募の「サンプルジャケットタンク」が「厚生労働大臣賞」を受賞
株式会社 門田鉄工
2重構造の容器・ジャケットタンクのミニチュアモデル
「第32回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)で「厚生労働大臣賞」を受賞した㈱門田鉄工の「サンプルジャケットタンク」は、ボイラーなどの圧力容器の製造を多く手がけ、第一種圧力容器製造の製造認可工場として認定を取得している同社ならではの作品だ。保温や加熱冷却のできる2重構造の容器であるジャケットタンクの1/5のミニチュアモデルとして製作・応募。初応募で「厚生労働大臣賞」を受賞する快挙となった。
門田淳専務は、板金フェアへ応募するに至った経緯を、次のように語っている。
「当社が受注する圧力容器はロット1個の製品も多く、完全な多品種少量生産品で、お客さまからの発注情報と図面を頼りに製作しています。パーツの板金加工から溶接・組立・圧力検査・塗装・出荷まで、ワンストップで、すべて社内で行っています。当社の仕事は板金加工というよりも製缶板金の要素が大きく、これまではアマダ・ソリューションセンター(神奈川県伊勢原市)へ足を運んでも、板金フェアの展示会場は横目で見るだけ ― 『製缶板金とは関連が薄い』と思っていました」。
「2年前に『愛媛シートメタル工業会』の会長に就任することになり、前回(第31回)の板金フェアの表彰式に工業会会長として出席しました。そこで改めて入賞作品や応募作品を見ると、製缶板金の作品も溶接部門に数多く出品されていました。そして、他県の工業会では積極的に板金フェアに参加しており、入賞を目指して会員企業各社が切磋琢磨していることを知りました。それと同時に、愛媛県からは、工業会の会員企業を含めても応募する企業が少ないことも知りました」。
「このままでは愛媛県の板金業界のプレゼンスが低くなってしまう ― そこで、昨年度(2019年度)の工業会通常総会で『愛媛シートメタル工業会の会員企業も積極的に板金フェアに応募して、愛媛県の板金加工技術をPRしましょう』と挨拶しました。そうなると、提案した当社が応募しないようでは格好がつきません。それで、当社が生産する『ジャケットタンク』の1/5モデルを製作し、応募することを決めました。ジャケットタンクは、内部容器に原材料を入れて、その外部の空洞部に冷却水や温水をポンプなどで循環させ、内部の温度を保持するタンク。食品向けの実用調合タンクや圧力容器として利用され、オールステンレスで見栄えが良いので、アピール効果も高いと考えました」。
創業126年の老舗企業
㈱門田鉄工は1894年、現社長の祖父である門田峰次郎氏によって、「門峰」の屋号で創業された。門田家の本家は古くから松山城下で鍛冶屋の仕事を手がけ、峰次郎氏は分家して「門峰」を創業した。2代目の門田邦良氏は戦後帰還し、家業を手伝って技術を磨き、社名を「門田鉄工所」に変更した。1952年頃から、現在の主力得意先と取引を始め、1967年に「㈱門田鉄工所」が設立された。門田一郎社長は当時、専務として社業の発展に尽力した。
1987年には得意先メーカーと一体で、第一種圧力容器製造の製造認可工場の指定を受けた。多くの社員がボイラー・圧力容器の溶接作業ができる溶接士免許を取得しており、圧力容器に精通したプロ集団として全国でも類がないほど秀でた製缶溶接技術を備えている。
1989年には愛媛県で第1号のレーザマシンを導入。レーザ加工部門として四国レーザー㈱を設立し、1991年にはステンレスの薄物加工部門として㈲エス・ユー・エスを設立。それぞれの専門分野を生かし、シナジー効果による事業成長を目指すようになった。
レーザマシンは、ボイラー・圧力容器にさまざまな艤装部品を取り付けるための穴加工などを、ロール曲げ加工する前のシートに加工することを目的に導入した。2台目はアマダのレーザマシンLC-βを材料棚とセットで導入、ステンレスなどの難加工材の加工に対応していった。2002年にはスマートな合理化と、強固な結束で新時代のニーズに柔軟に応えるため、分割会社を統合し、新たに㈱門田鉄工として再スタートした。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 門田鉄工
- 代表取締役
- 門田 一郎
- 専務取締役
- 門田 淳
- 住所
- 愛媛県松山市堀江町甲1-1
- 電話
- 089-979-2200
- 設立
- 1967年(1894年創業)
- 従業員数
- 48名
- 主要事業
- 各種圧力容器・ボイラー部品の製缶板金加工、各種ステンレス加工、食品機械類
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