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サイバー、フィジカルの両面で産業構造を変革する動き

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サイバー、フィジカルの両面で従来の商慣習や産業構造を変革するビジネスモデルが次々と生まれている。

小誌でも紹介したキャディ㈱小誌2019年4月号で紹介)は「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」をミッションに掲げ、板金部品の受発注プラットフォーム「CADDi」のサービスを提供。顧客が板金部品の3次元CADデータをアップロードし、材質・板厚・数量・納期などのパラメーターを入力すると最短7秒で見積り金額が表示され、「発注」ボタンを押すと最適なパートナー企業に手配される。

発注企業にとっては、調達部門が日々の煩雑な外注管理から解放されるうえ、最適調達によってコストが従来比で25%程度下がり、納期も短縮される。パートナー企業にとっては、「相見積りなし」「黒字保証」「支払いサイト1カ月」により確実に利益が出る仕事を確保できるとともに、多くの時間を費やしてきた見積り作業から解放される。すでにパートナー企業は100社を超え、利用者数も3,000社を超えた。

このビジネスモデルは各方面で注目され、みずほ銀行が有望なイノベーション企業を表彰する「Mizuho Innovation Award」(2019年1Q)を受賞。Forbes JAPAN誌が発表した世界を変える30歳未満30人の日本人「30 UNDER 30 JAPAN 2019」のエンタープライズ・ビジネス アントレプレナー部門で、加藤勇志郎社長が選出されるなど数多くの顕彰を受けている。

一方、FAメカニカル部品・金型部品の製造・販売などを手がける㈱ミスミは、Web上で3次元CADデータをアップロードするだけで即時見積りと最短1日出荷を可能にした部品調達プラットフォーム「meviy」を展開する。同社は紙のカタログをデジタル化、さまざまな工業用部品を同社のECサイトから一括で購入できる「VONA(Variation & One-stop by New Alliance)事業」をスタート。取り扱いメーカー数は3,000社以上、商品点数は2,740万点にのぼる。今では世界中に営業拠点64カ所、配送センター17カ所、生産拠点23カ所を持ち、顧客数はグローバルで30万社を超え、「モノづくりの社会インフラ」とも呼べるサプライチェーンを確立している。meviyの登場によって、カタログから注文する「規格品」の製造・販売に加え、図面から製作する「図面品」にも対応するようになった。

この2社のビジネスモデルは、いずれもWebを活用したサイバー空間での「時間戦略」(ミスミのコンセプト)といえる。調達や納期の時間短縮、ひいてはモノづくり全体のスピードアップを目指している。

これに対して、鉄鋼品から建設機材まで、幅広い品ぞろえを重視し、スーパーマーケット型のビジネススタイルで多品種・短納期の流通を展開する小野建㈱は、巨大なストックヤードと物流システム、さらには資金力、コンサルティング能力、そして鋼材の切断・穴あけ・曲げまでの1次加工に対応する設備力を備え、川下の金属加工業界へのサービスを強化している。

全国のスチールセンター、営業所にファイバーレーザマシンやベンディングマシンを導入し、多品種少量の注文に敏速に納品できる体制づくりを進めている。

「野菜の販売も、以前はキャベツ1個単位の販売だったが、今では1/2個、1/4個、千切りしたサラダ用のパック、さらには野菜炒め用としてキャベツやニンジンなどをパックにして消費者の利便性をはかり、売上を伸ばしている。鋼材業も必要な鋼材を1次加工してお客さまに提供する『モール』『スーパーマーケット』『コンビニ』、そこに『ファイナンス』も加えたビジネスモデルを整備する」(小野剛副社長)という。

フィジカル(現実世界)の分野で、同社は従来型のビジネスモデルを変えようとしている。これからも注視していきたい。

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