Interview

誰もが可能性を信じ、挑戦できる世界をつくる

製造業企業の株式を保有する持ち株会社

株式会社 匠堂 代表取締役社長 朴 理沙 氏

LINEで送る
Pocket

画像:誰もが可能性を信じ、挑戦できる世界をつくる朴理沙氏

東京商工リサーチによると、2018年に全国で休廃業・解散した企業は4万6,724件(前年比14.2%増)、前年比で増加したのは2016年以来、2年ぶりとなった。企業倒産は8,235件(同2.0%減)と、10年連続で前年を下回ったが、休廃業・解散は大幅に増加している。休廃業・解散と倒産した企業数の合計は、判明しているだけで年間約5万5,000件に達し、全企業358万9,000者の1.5%を占めた。休廃業・解散した企業の代表者の年齢は60代以上が80%を超え(構成比83.7%)、高齢化と事業承継の難しさが鮮明になってきた。

2017年10月の経済産業省の発表によると、今後10年間に平均引退年齢の70歳を超える経営者は約245万人にのぼるが、半数以上は事業承継の準備ができていない。そのため行政も集中的な取り組みとして、中小企業や小規模事業者が円滑に事業承継するための支援策を講じている。

一方、事業不振に陥った企業の再生や競争力強化を進めてきたコンサルタント会社、ファンド、中堅企業が、優れた技術を持つものの、国内市場の縮小や後継者不在で存続が困難になった中小製造業にコンサルティングを行い、M&A(合併・買収)によって競争力を高めようとする取り組みも活発化している。

そんな中、2015年より後継者難や事業再生が必要な製造業の株式や事業を譲り受け、グループ拡大をはかっている㈱匠堂のビジネスが、新たな企業存続の道しるべになると注目されている。

そこで、2018年に同社の代表取締役社長に就任した朴理沙氏に話をうかがった。

新たな企業存続の道筋を示したい

― 朴社長のこれまでの人生と社長に就任された経緯についてお聞かせください。

朴理沙社長(以下、姓のみ) もともと私は1989年に東京都杉並区で生まれ育ちました。小中学校時代は、引っ込み思案で泣き虫だった性格と、外国人の名前などをからかわれたことからコンプレックスを抱え、周囲と馴染めず生きづらさを感じていました。

そんな環境を変えたいと思い、日本名で入学した高校でもしばらくは何もうまくいきませんでした。そして高校1年生の終わりに「なぜいつもうまくいかないのだろう」と考えたときに、自分が「誰かが助けてくれる」ことに期待していたことに気づきました。当時の私は、「クラスメイトと楽しい学校生活を送りたい」と思いながらも、他人任せになっていました。

そのことに気づいた高校2年生からは、みずからの行動様式を変え、リーダーシップを取るようになりました。一歩自分が踏み出せば、意外に人がついてきてくれること、みんなが楽しいと思える環境を構築することによって、みんなの生き生きとした顔を見ることができ、結果にもつながること ― これらが私自身のよろこびになり、根本の価値観となっています。この体験を経たうえで浪人を経験し、みずからのアイデンティティーや人生を振り返る時間を持ちました。その時以来、「生きがいを持つ人が増える世の中にしたい」という想いを持つようになり、再度本名で生きることにしました。

― その時に感じた「生きがいを持つ人が増える世の中にしたい」という想いが、現在までつながっているんですね。

 はい、その想いは今も変わりません。当時はその想いを成し遂げるための手段として、「伝える」仕事に興味を持ち、ジャーナリストを志して大学受験をしました。しかし、入学後に出会った、同じ想いを持った起業家の方々などとの良き出会いを通じて、想いを為すための手段としてビジネスに興味を持ちました。

そして大学4年の時に休学し、ミッションに共感できるベンチャー企業で働きました。その経験を経て、卒業後は価値観や社員の方々に魅力を感じ、日本たばこ産業(以下、JT)に入社。最初は飲料事業部で販社に出向し、営業に携わりました。しかし、1年後には飲料事業から撤退し、会社が長年やってきた事業や商品がなくなることの影響の大きさを体感的に理解しました。

その後、外部企業への出向を命じられ、創業130年の歴史ある中小企業に対する経営支援を担当しました。出向先では「25歳の女性が落下傘で配属され、果たして何ができるのか?」というネガティブな見方で警戒されました。そのようなアゲンストな雰囲気の中、社員の1人ひとりと対話し、この会社が存続し続けるために私は何ができるのかを考え、行動に移しました。

やがて社員の方々との信頼関係が生まれ、さまざまな業務改善や海外の販路開拓を提案・実行して収益改善を実現しました。その後、JTに戻り、経営企画部で新規事業立ち上げなどを経験しましたが、出向経験を通して、日本の350万社を超える中小企業の中には独自の高度な技術を有する企業が多くある一方で、そうした有形無形の資産を有効に活用できないままに解散・休業・廃業に追い込まれる企業がたくさんあることも知りました。

1人ひとりの社員が生き生きと働ける会社にするために、自分にもっとできることはないか、と考える中でJTを退社、ご縁があって2018年3月に当社社長に就任しました。

画像:誰もが可能性を信じ、挑戦できる世界をつくる匠堂の事業コンセプト

1人ひとりが生き生きと働ける環境を

― 幅広い経験を積み、実績をつくったJTの中でキャリアを伸ばしていこうとは考えなかったのですか。

 考えませんでした。日本の中小製造業には世界的に見ても競争力のある高度な技術やモノづくり文化を持っている会社がたくさんあります。それにもかかわらず、モノをつくれば売れることを長年経験してきた下請け体質の企業が多く、自分たちで仕事を探す、あるいは自社製品の開発に自主的に取り組む企業は極めて少ないのが実態です。

また、つくれば売れた時代の戦略と組織がそのまま残っていることによって、IoTやAI、ロボットなどの技術革新や少子高齢化、人手不足というような社会構造が大きく変化する時代に対応できない、対応したくてもできない現状があることを知りました。短い期間ではありましたが、ベンチャー企業、大企業、中小企業とさまざまな場所で実務を経験してきたからこそ、その体験を生かして1人ひとりが生き生きと活躍できる環境をつくりたい ― それは中小企業の支援を通じて実現できると実感しました。

全文掲載PDFはこちら全文掲載PDFはこちら

会社情報

会社名
株式会社 匠堂
代表取締役社長
朴 理沙
住所
東京都台東区柳橋1-2-12柳橋Mビル1F(株式会社プラシーズ内)
電話
03-3863-9223
設立
2017年
従業員数
7名(グループ連携で932名)
主要事業
製造業企業の株式を保有する持ち株会社。子会社において各種製品の製造・販売
URL
https://takumido.co.jp/

つづきは本誌2019年9月号でご購読下さい。

LINEで送る
Pocket

関連記事

Interview記事一覧はこちらから