事業承継者が活躍する愛知の板金業界
地域に愛されるスマートファクトリー ― 働くみんなが、仕事に誇りとやりがいを
厨房機器・食品機械向けのステンレス薄板加工に特徴
株式会社 創円
2021年に開設した㈱創円の「第2工場」
スキルレス化を目指し、デジタル板金工場を構築
服部太志社長
㈱創円は2007年、服部工業㈱の専務だった服部太志氏を中心に事業をスタート。その後、服部工業は2020年に解散し、創円に吸収・統合された。
服部工業は1946年に服部正次郎氏が名古屋市内で個人創業し、金属プレス金型の製作を始めた。1954年に現在地に服部工業㈱を設立し、プレス金型設計・製作からプレス加工まで手がけるようになった。
その後、プレス加工などの量産の仕事が中国などに生産移管される中で、1987年に2代目社長となった服部元巳氏は「第二創業」として精密板金加工業に事業転換した。製氷機などの厨房機器を製造・販売する大手厨房機器メーカーの仕事を中心に、防犯カメラなどのセキュリティー関連機器、鉄道・高速道路の防護壁、建築関連、自動車関連など幅広い仕事を手がけていった。
顧客満足度を向上させるため、さまざまな取り組みを通じてQ,C,D 対応を追求した。属人化を避け、技術・技能の社有化を進めるため、1999年頃から工場内のデジタル化を強力に進めた。毎年のようにパンチングマシン、ベンディングマシンなどの生産設備を更新し、「つくる」「ためる」「つかう」というデータ活用の原則を徹底させ、板金全工程をネットワーク化したデジタル板金工場を構築した。
さらに、3次元ソリッド板金CAD SheetWorksをいち早く導入し、3次元データを基準とするデジタルものづくりや得意先への設計提案に活用した。曲げ加工用CAM、生産管理システムWILLも相次ぎ導入。現場の各工程にWILLの現場端末を設置し、着手・完了の情報を記録。受注登録から3次元モデリング、バラシ、展開、プログラム作成、ブランク加工、曲げ加工までのフローを一元化した。
これにより、とりわけ曲げ工程では加工データの蓄積とともにスキルレス化が進み、経験が浅いパート社員や外国人技能実習生でもスムーズに加工ができるようになった。
左:プログラム室。3次元ソリッド板金CAD SheetWorks(手前)は得意先への設計提案にも活用している/右:パンチ・レーザ複合マシンLC-2012C1NT(パレットチェンジャー仕様)
「創円」を設立 ― 工場を拡張
2007年からベトナムの技能実習生の受け入れを始めるとともに、服部工業の溶接組立作業の拡充を計画した。それにともない、服部太志社長(当時は専務)が中心となって㈱創円を設立し、ブランク工程・曲げ工程を創円に集約した。
創円の社員32名のうち、半数の16名がパート社員で、正社員は役員を含め9名。残りの7名は、中国・ベトナムからの技能実習生という構成になった。
当時55歳で働き盛りだった服部元巳氏は、ものづくりを服部太志社長に任せると、「商社的な仕事がしたい」と、ベトナム・台湾・韓国などで仕事をするようになった。2012年にベトナム事務所を開設したのを機に社長交代、服部太志専務が社長に就任した。
創円の新社長に就任した服部太志社長は、「本社工場」の横にあった空き工場を購入し、組立工場・倉庫とした。
その後、道向かいの工場跡地(4,000坪)が売りに出され、「本社工場」側の一部区画に建売住宅が建設された。そこで2019年、騒音トラブルを未然に防ぐため、工場に近い建売住宅を事務所として購入。さらに一部区画(400坪)を購入して2021年に「第2工場」を建設し、「第1工場」(本社工場)の曲げ工程・溶接工程を移管して、ゆとりある工場に改装した。
ベンディングマシンHG-8025による曲げ加工
溶接まで完了した厨房・食品加工向け製品。コロナ禍で大きく落ち込んだが回復に向かっている
会社情報
- 会社名
- 株式会社 創円
- 代表取締役
- 服部 太志
- 所在地
- 愛知県名古屋市港区当知4-2203
- 電話
- 052-384-8150
- 設立
- 2007年
- 従業員数
- 57名(パート・外国人技能実習生含む)
- 主要事業
- 精密板金加工/各種厨房製品・器具、ガス器具、冷暖房器具、自動車、建築金物、工作機械カバーなどの金属加工部品の製造・組立
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