特集

第34回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介

人材を生かし技術・技能を育んだからこそ実現した最高難度の作品

「超高真空チャンバー」が「日刊工業新聞社賞」を受賞

コンチネンタル 株式会社

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画像:人材を生かし技術・技能を育んだからこそ実現した最高難度の作品①「日刊工業新聞社賞」を受賞した「超高真空チャンバー」(SUS304・板厚1.5㎜、W230×D170×H130㎜) /②宇宙空間にちかい環境をつくり出す、高い品質を満たした真空チャンバーの内部。高精密な内側溶接が求められる

「超高真空」に対応する「真空チャンバー」

画像:人材を生かし技術・技能を育んだからこそ実現した最高難度の作品左から、下村俊之取締役製造部長、岡田俊哉社長、溶接を担当した溶接三課の村山貴俊さん

「第34回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)の「溶接品の部」に出品したコンチネンタル㈱「超高真空チャンバー」が「技術水準・独創性がきわめて高く、業界の発展に貢献すると思われる作品」に授与される「日刊工業新聞社賞」を受賞した。

真空チャンバーは、研究機関や企業の研究開発、製品製造装置などで使用される「真空装置」の中心部品で、装置内部を真空にするための容器である。パーティクルと呼ばれるわずかな埃の侵入も許されず、高い気密性やキズひとつない美観、高い精度や品質が求められる。

真空領域は圧力範囲で区分けされ、今回の受賞作品である「超高真空チャンバー」は宇宙空間にちかい真空領域とされている10-5Pa以下の「超高真空」を実現する。同社はこれまでにも「極高真空」を超える10-11Paの真空チャンバーを製作した実績がある。どんな経緯で真空チャンバーの製作に関わるようになったのか、そこから尋ねた。

次の飛躍のために育てた社員を守りきる

2008年のリーマンショックで同社の受注は前年比70%減と大きく落ち込んだ。非常にきびしい状況であったが、まわりの同業他社が人員整理をして固定費を減らそうとする中で、同社は銀行借入と雇用調整助成金を活用しながら、週休3日制を導入してひとりの退職者も出さずに乗り切った。

岡田幸雄会長(当時は社長)は「会社が苦しくても次の飛躍のために、これまで育んできた社員を守るべきと考えました。リーマンショックで債務超過になりましたが2年で解消し、再び成長軌道に乗ることができました。積極的な営業展開の成果ということもありますが、お客さまからのきびしい要求に素早く対応できる高い技術力を備えた社員がいたからこそです」と語っている。

  • 画像:人材を生かし技術・技能を育んだからこそ実現した最高難度の作品真空チャンバーに溶接トーチを入れた様子。小さい方のフランジの内径は溶接トーチの先端がようやく入る大きさなので、トーチを入れる箇所とは異なる箇所から目視して溶接を行う必要がある
  • 画像:人材を生かし技術・技能を育んだからこそ実現した最高難度の作品裏波溶接で外側から内側溶接を行う

パーマロイ合金製の真空チャンバーに挑戦

板金の受託加工という事業の柱を太くする目的で取り組んだのが、2010年度「戦略的基盤技術高度化支援事業」(サポイン事業)に採択された「高透磁率材料を構造部材に用いた大型超高真空容器の製造技術の開発」だ。

「開発幹事は東京の会社で、加速器によって加速させた光を物質に当て、そこから反射した光を分析することによって物質の性質を明らかにする装置の開発を試みるというものでした。この装置には特殊合金『パーマロイ合金』を板金・溶接で加工した真空容器の開発が必要で、その加工ができる工場を探しておられたようです。それで富山県の工業技術センターから『富山市にコンチネンタルという会社がある。そこなら多分できるだろう』と聞き、当社に話をいただきました。それがご縁で共同開発に参画させていただくことになりました」(岡田会長)。

「パーマロイ合金」とは、ニッケルと鉄を主成分とする高透磁率合金で、板金・溶接加工はきわめて難しい。そこで岡田俊哉社長(当時は専務)と下村俊之取締役製造部長は材料の研究を行うとともに、板金・溶接加工条件を探すためにさまざまな文献をあたり、溶接試験を繰り返した。

画像:人材を生かし技術・技能を育んだからこそ実現した最高難度の作品左:溶接作業を行う村山さん/右:完成した真空チャンバーは種類も大きさもさまざま

会社情報

会社名
コンチネンタル 株式会社
代表取締役
岡田 俊哉
所在地
富山県富山市水橋沖172
電話
076-478-2324
設立
1991年
従業員数
86名
主要事業
金属鋼板を使用した工作機械カバー、電気機器の筐体、建材などの製作
URL
https://www.continental-ltd.com/

つづきは本誌2022年5月号でご購読下さい。

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