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得意先業種の好不況で、二極化が鮮明に

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新型コロナウイルスの感染拡大の第4波を受け、4月25日に3回目となる「緊急事態宣言」が4都府県(東京都・京都府・大阪府・兵庫県)を対象に発令されました。その後、愛知県・福岡県・北海道・岡山県・広島県も対象に追加されました。「まん延防止等重点措置」の発動を要請する道県も増えています。

感染防止の切り札であるワクチン接種も順調には進んでおらず、日本が集団免疫を獲得できるのは来年以降になる気配です。ワクチン接種が進み、徐々に日常を取り戻しつつある欧米に比べ、日本の本格的な経済回復は遅れそうです。

飲食や旅行、鉄道、航空などの運輸・サービス産業は売上の落ち込みが続き、個人消費は依然として低水準で推移しています。しかし、製造業などの民間設備投資は、業種や投資内容にバラツキは見られるものの、昨年10月以降は回復基調が目立っています。「非接触」「リモート」という新たな生活様式への対応やDX関連の投資が増加していることが主な要因と考えられます。

自動車業界は、昨年10月以降、コロナ禍の影響による混乱から脱し、国内外での需要が堅調に回復してきています。工作機械は、中国向けを中心とした外需が好調に推移し、2月以降は弱含みながら内需も回復してきており、4月以降の受注金額は堅調な伸びが見込まれています。建設機械は、2020年上半期の出荷額(補給部品含む総額)が前年同期比で約23%減となりましたが、下期はその反動で中国向けの需要が大きく上振れしました。北米向けや国内向けも堅調に推移し、建設機械メーカーの生産計画も上方修正され、足もとの生産は拡大しています。

民間の建設投資は、建設工事計画が遅延し、一時的に落ち込んだものの2020年度下期以降は順調な回復傾向が見られます。しかし、リモートワークの拡大などによって首都圏を中心にオフィス需要に陰りが見られます。また、大型案件が2021年度下期以降の着工予定ということもあり、足もとの仕事量は控えめとなっています。ただ、2025年に開催される大阪・関西万博などの大型プロジェクトのほか、都市再開発事業も全国で目白押しということもあって、下期以降は安定していくと見られています。

再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が2022年4月から大幅に改正されることもあって、これまで売電目的だった電力を自家消費したいというニーズが個人住宅や企業の間で堅調になっています。太陽光発電でつくった電気を電力需要ピーク時に工場・事務所の補助電源として活用し、電力コストを削減する目的などから、蓄電池に対する需要が急激に拡大、関連業界の好調さが目立っています。

このほか、世界的に需要がヒートアップしている半導体製造装置はもちろん、5Gインフラ関連の仕事にも、ようやく動きが見られています。

製造業にはおおむね明るさが生まれているのに対して、飲食業界・運輸・サービス業界では売上の減少が目立っています。日本フードサービス協会によると、3月度の外食産業の全体売上は前年比97.1%、コロナ禍の影響がなかった前々年比では80.4%と、依然としてきびしい状況となっています。飲食業界と関係が大きい厨房業界もきびしい状況となっています。

サポートインダストリーである板金業界は、一時期と比べて改善しているものの、得意先の業界によって好不調の波が激しく、業績の二極化が際立っています。このピンチをそのまま受け入れるのか、ピンチをチャンスに変えることができるのか、経営者の手腕が問われています。

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