視点

書物から学ぶことで、自分の立ち位置を知る

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先日、Facebookで行われた「7日間ブックカバーチャレンジ」に挑戦しました。これは読書文化の普及に貢献するためのチャレンジで、好きな書物を1日1冊選び、本についての説明なしで表紙画像をFacebookへ7日間アップする。さらにその都度、友達ひとりをFacebookに招待し、このチャレンジへの参加をお願いする ― という趣旨でした。

私の場合、不要不急でもないので書店に改めて出向くことなく、書棚の整理も兼ねて参加しました。蔵書を読み返す良い機会になり、選び出した本の表紙の写真だけでなく、読後の感想も投稿しました。

書棚を整理して、改めて気づいたことがありました。作家ごと、ジャンルごとに分けていた本を、自分が読んだ年代順に並べていけば、その頃に探求していたものや、夢中になって集めていた文献など、自分がたどってきた軌跡がわかる ― ということです。

仕事関係の本がほとんどで、今では当たり前のことを、書物を介して先取りしようとしていた頃もありました。今のようにパソコンやスマートフォンで簡単に検索できる時代ではなかったので、人より先に知っておく必要がありました。すべて自身の通ってきた道です。改めて、多くの書物から学ぶことができた、と万感の思いに浸りました。

新型コロナウイルス感染症の脅威で経済活動が停滞する中、自分なりに経済再生の参考になる書物もありました。

「現場力」を大切にする意味で参考になったのは、山口義行氏の『経済再生は「現場」から始まる』です。コロナショックの影響で、テレワークの活用をはじめとして働き方が大きく変わり、デジタル化が加速しています。しかし、「ものづくり」はサイバー空間ではなく、リアルワールドで行われます。そこには現場があり、現場が培ってきた知恵があります。現場の知恵を生かすことで、コロナ禍から経済を再生していくための取り組み ― 金融機関の企業支援、産学協同、企業間ネットワークの構築、地域医療などのヒントがありました。

知識経営学の第一人者である一橋大学名誉教授の野中郁次郎先生ほか2名の共著『実践ソーシャルイノベーション』は、地域や異なる組織が持つ価値観を共有するため、新たな関係性を構築して人々が持っている知恵や知識を共有することで有形無形の資源を見いだす、人間の「知」を基盤としたソーシャルイノベーションを考える参考になりました。

将棋の7大タイトルをすべて独占したこともある羽生善治名人の著作『直感力』からは、棋士に必要といわれる「直感」「読み」「大局観」について学びました。私たちの仕事には世界を広く見渡す「鳥の目」、周囲をつぶさに把握する「虫の目」、潮目を読む「魚の目」が必要だと、みずからに課してきました。そのためには「直観力」が大切であること教えてもらいました。

大河ドラマ「麒麟が来た」でブームになっている明智光秀に関する書物としては『征夷大将軍になり損ねた男たち』を、おもしろく読みました。著者の二木謙一氏は、これまで大河ドラマ14作品の時代考証に携わっており、そうした経験を踏まえ、歴史のはざまで、チャンスはあったが征夷大将軍になれなかった織田信長をはじめ、豊臣秀吉、明智光秀などを取り上げており、興味深く読むことができました。

ブックカバーチャレンジに参加してみて、改めて書物を購入したころの世相と、自分の立ち位置を考えさせられました。書物から学ぶことはたくさんあります。今の自分を知るためにも、書物を読むことの大切さを改めて感じました。

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