Interview

21世紀のキーテクノロジーとして「第4の波」を興すレーザ技術

レーザ応用技術の発展に貢献したい

株式会社 最新レーザ技術研究センター 代表取締役社長 沓名 宗春 氏

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画像:21世紀のキーテクノロジーとして「第4の波」を興すレーザ技術沓名(くつな)宗春氏

光を増幅して放射し、指向性や収束性に優れるなどの特性を持つレーザ光。1917年にアインシュタインにより基礎理論が確立され、1953年にコロンビア大学のタウンズらにより世界初のマイクロ波増幅器(メーザ)が開発された後、1960年にヒューズ社のメイマン技師により誘導放出による光増幅器(LASER)が開発された。

それ以来、レーザ技術は今日に至るまで、通信分野、材料加工分野をはじめ、医療・美容・計測・分析・センシング・自動車分野など、さまざまな分野で基盤技術として利用されている。とりわけ材料加工分野では、薄板の切断から始まり、最近は中・厚板の切断、さらには板金筐体やカバーの溶接、リモート溶接、異種材の接合への応用、太陽電池の分割パターニング、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の切断といった用途開発が活発になっている。

㈱最新レーザ技術研究センターの代表取締役社長・沓名宗春博士は、1993年に「レーザ技術が21世紀のキーテクノロジーとなり、『第4の波』を興す」と予測した。沓名博士は1967年に名古屋大学工学部金属学科を卒業し、1972年から川崎重工業㈱技術研究所に10年間勤務。1974年から1年間は米国・MIT海洋工学科の研究員を務めた。1982年に名古屋大学工学部助手、1992年に工学部助教授、2006年に工学部教授に就いた。退官後の2008年には㈱最新レーザ技術研究センターを設立し、これまでに光産業創成大学院大学の特任教授、三重大学リサーチフェロー、NEDO技術委員、安城レーザー技術大学講師などを務めてきた。

75歳になった現在も、同センターに設置している7台のレーザ装置を使い、企業からの受託研究、受託加工に対応するとともに、世界各地で開催される学会・展示会に頻繁に足を運び、レーザ技術の最新動向をウォッチしている。そんな沓名博士に、レーザ技術の将来動向について話をうかがった。

「第4の波」を興すレーザ技術

― 沓名先生は1993年に上梓されたNHKブックス『レーザーの科学~人工の光が生む可能性』で、レーザ技術が21世紀のキーテクノロジーとなり、「第4の波」が到来すると予測されています。

沓名宗春社長(以下、姓のみ) 米国の未来学者であるアルビン・トフラーは1980年に名著「第3の波」を著しました。その中でトフラーは、18世紀の産業革命から始まった第2の波を「機械化社会」とし、“メカニックス”を基盤とする産業基盤を説き、第2次世界大戦後のコンピュータを駆使した「情報化社会」を「第3の波」として説きました。「第3の波」は人間社会の基盤技術として発達し、メカトロニクス(機械+電子)が社会を変革する時代が到来しました。

そして、20世紀の末期 ― 1990年代から21世紀にかけて、レーザ技術を中心とした光技術(フォトンテクノロジー)を駆使するオプト・メカトロニクス(機械+電子+光)の時代 ― すなわち「第4の波」がやってきました。これらは「第1の波」(人力・畜力)の上に発達し、現代社会をさまざまなかたちで変革しています。

1960年に最初のレーザ光がこの世に現れてから60年が経つ今日、レーザ技術は「文明の利器」として幅広い分野で利用されています。工業・通信・情報・医療・バイオ・軍事、さらには日常生活にまでレーザ光が深く浸透し、21世紀の文明にとってなくてはならないものとなっています。

レーザ加工技術についても、CO2レーザ、YAGレーザの時代から高効率の半導体レーザやファイバーレーザの時代になり、それぞれの特性を生かした装置・用途が開発され、工場などに安価に導入されるようになってきました。

ここまで幅広い分野で活用されている理由は、レーザの持つ特性が優れているからにほかなりません。数μmまで集光でき、出力密度も数百GW/㎠まで高くでき、毎秒数十mの速さの熱源となっています。波長も0.2μmから10μmまであり、パルス幅もフェムト秒、ピコ秒、ナノ秒のレーザが開発され、多種類のレーザが利用できるようになりました。レーザ切断や穴あけ加工ではダイヤモンド・ガラス・宝石・金属・樹脂・紙・布・木材・栗の皮など材料を選びません。このような熱源はほかにはありません。

左:ナノ秒パルスレーザ装置を活用した実験装置/右:ファイバーレーザによるリモート溶接の実験装置左:ナノ秒パルスレーザ装置を活用した実験装置/右:ファイバーレーザによるリモート溶接の実験装置

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