視点

相互不信の流れを打ち砕き、より良い世界をつくる

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明けましておめでとうございます。

2019年は元号が「平成」から「令和」に変わるとともに、天皇の即位儀式が古式ゆかしく執り行われ、国を挙げての祝賀ムードとなり、新しい天皇の御代が始まる節目の年でした。

しかし、2018年終盤から始まった米中貿易摩擦の影響、英国がEUから離脱するBrexit(ブレグジット)の問題、イラン・北朝鮮の核問題に端を発した中東情勢・朝鮮半島情勢など地政学的な問題、「一国二制度」の形骸化と中国の締め付けに反発した香港デモの長期化、そしてポピュリズムにより自国第一主義「アメリカファースト」を掲げ唯我独尊の米国・トランプ大統領の存在など、世界の政治・経済情勢は混迷の度合いを深めています。

IMF(国際通貨基金)は昨年10月に、世界経済は2020年に持ち直すとの見通しを発表していますが、現実はなかなか難しいものがあり、経済成長の力強さに欠ける年になるような気がしています。

そんな中、昨年夏以降にお会いした経営者や大学教授が、背広の胸に「SDGs(エスディージーズ)」のピンバッジを着けているのを目にする機会が増えました。

「SDGs」とは「Sustainable Development Goals」の略称で、「持続可能な開発目標」を示しています。2001年に策定された「ミレニアム開発目標」(MDGs)の後継として、現在の世界をより良いものにしていくため、2015年9月の国連サミットで採択されました。

SDGsの開発目標は「17のゴール」と「169のターゲット」で構成され、「地球上の誰一人として取り残さないこと」(leave no one behind)を誓っています。発展途上国のみならず先進国も取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本も積極的に取り組んでいます。

17のゴールには「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」「働きがいも経済成長も」「産業と技術革新の基盤をつくろう」「人や国の不平等をなくそう」などが挙げられています。このゴールを達成するためには、所得格差など、世界で起こっている不平等を解消していくことが必要で、目標達成には多くの困難があります。しかし、多くの経営者や学者の方々がSDGsのピンバッジを胸につけ、SDGsへの賛同をアピールしていることは、少なからず良いことではないかと思っています。この目標を世界中の経営者やリーダーが志せば、自国第一主義やポピュリズム、極端な保守主義には陥らないと思うからです。

昨年11月に日本を訪問した第266代ローマ教皇(法王)フランシスコは、原爆が投下された長崎・広島を訪れ、「核兵器のない世界は実現可能であり、必要である。核兵器は国家の安全保障への脅威から私たちを守ってくれるものではない」と、戦争の悲惨さと核兵器の恐怖を訴えました。そして「平和と安定は団結と協力に支えられた道徳観からしか生まれない。相互不信の流れを打ち砕かなくてはならない」と述べました。

今、私たちは「団結と協力に支えられた道徳観」「相互不信の流れを打ち砕く」ことから始めなければならないと感じます。そして、政官学のリーダーを育て、みずからを戒めることによって2030年までに達成しなければならないゴールを確認することで、世界経済の安定と安全・安心な地球環境をつくり上げていくことが求められていると思います。

私事になりますが、毎年出す年賀状に、10年ほど前から青く澄んだ地球の写真を印刷し、そこに世界の平和と発展を祈念する言葉を書き入れています。十年一日ではありませんが、なかなかこのデザインを変えることができません。人類が再び安寧な生活を取り戻せる世界になることを願います。

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