板金論壇

若き経営者の悩み

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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新しい試みにチャレンジ

最近業界を回っていると、2代目・3代目の30~40代の経営者と面談するケースが増えている。その方たちは経営者としての経験も10年未満で、2008年のリーマンショック後に社長に就任された方が半数以上。リーマンショックでアッという間に受注が半減した悪夢のような経験を持っているだけに、1社依存の怖さは百も承知である。

だから、顧客を広げる得意先の開拓には熱心で、訪問だけではなく、インターネットを活用したWebマーケティングにも果敢にチャレンジしている。Facebook、TwitterといったSNSにも積極的に取り組まれている。さらに、コーポレートサイト以外のサポートサイトとして「○○○.com」といった、自社のコアコンピタンスを紹介する専門サイトを立ち上げ、公共展への出展、行政や第三者機関が行うマッチングフェアなどにも積極的に参加されている。さらに、「Linkers」「NCネットワーク」といった製造業支援サイトにもアプローチし、会社の露出度を高め、新規顧客開拓のチャンスを広げる機会を求めて、フットワークよく日本中を駆け巡る。

最近は種々の経営コンサルタント会社が中小製造業の経営者を対象に様々な経営セミナーを開催するようになっている。特に「営業利益率を10%以上上げるためにはどうすべきか」「新規顧客を2倍、3倍にするためにはどうすべきか」など、若い経営者が関心を持つテーマで開催されており、板金業界の後継者もかなりの方が参加されている。

“価格”以外の“価値”を提案

こうしたセミナーに参加する経営者が増えている背景には、次のような変化が起きていることがあげられる。

もともと先代が創業した会社は地域に根を張るローカル企業で、親族が事業を継承するのが当たり前。さらに社内には、創業者である先代とともに事業を発展させてきたベテラン社員が少なからず存在している。他社にはない特殊技術に優れ、卓越したモノづくりのノウハウがあり、従業員のモラルや組織団結力が高く、高度な精密加工や短納期・小ロット加工をこなし、Q,C,Dの観点でも世界で群を抜いている。その意味で、これまでは事業の継続性に優れていた。ところが、リーマンショック後は、先代のころと経営環境が大きく変わった。これまで頼みにし、頼りにされ、“信用”という美辞のもと長年継続取引してきた大手得意先が、調達方針を大きく変えた。

従来の構造の中では、口を開けて待っていれば仕事が落ちてきた。そのため、売る力やグローバル化、ブランディングなど、自分たちで市場を創造したり、開拓する努力をしなくても仕事には困らなかった。受注が来るのを「待つ工場」でも存在することができた。現場ベテラン依存のモノづくり体質が強く、“KKD”(経験・勘・度胸)勘定でも帳尻を合わせることができていたが、その反面、エンジニアリング力が弱く、3次元CAD/CAMへの対応や、設計・デザイン力、生産情報の一元管理などのデジタル化が遅れ、このままでは存続が危ぶまれる。

つづきは本誌2016年7月号でご購読下さい。

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