視点

「読む・書く ― 聴く・話す ― 考える」を通して行動力を育む

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私は小さい頃から本が好きで、あらゆるジャンルの本を乱読してきた。それが嵩じて高校時代には同人誌の真似事を、大学時代には新聞会で活動した。当時、大学は全共闘運動真っ盛り。大学新聞もいろいろなイデオロギーに翻弄され、全日本学生新聞連盟(全学新)もイデオロギー闘争で、執行部は分裂していた。

その中で私の属していた大学新聞など一部の学生新聞は、「表現者」としての視点を貫こうと、党派に属さない立場を守っていた。不偏不党といえば嘘になるが、あえて「中立」的な立場に身を置いて「表現者」として、まわりの事象を正確に伝えることにこだわった。目の前で起きていることから目をそらすのではなく、その事実を伝えることに注力した。

そのため、できる限り「読む・書く ― 聴く・話す ― 考える」力を鍛え、いろんな場所にも出かけて話し、取材相手の話を聴き、そして考えた。聞いた内容を正確に書き上げ、読者に読んでもらい、考えていただくことを心がけた。そうしなければ新聞といっても、ただのプロパガンダ ― 「機関紙」になってしまう。

ところがそんな状況は長続きせず、新聞会もセクトに乗っ取られて解体。その後はセクトの機関紙になってしまった。卒業後は業界新聞に入社し、そこで知り合った仲間と、現在のマシニスト出版を設立した。

私の原点は学生時代から「中立」の立場で自分の周辺で起きている出来事を正確に伝え、読者に考えていただく情報を提供することに徹することだった。だから今でも「読む・書く・聴く・話す・考える」という5つの能力は、人間にとっては基礎となる大切な機能だと考えている。この5つの機能を研ぎ澄ますことで行動力が生まれるからだ。

この5つの機能は、企業が人を育てる際にも重要な要素になる。たとえば先日訪問した会社では「良い印象を与える6つのポイント」を挙げて社員教育をしていた。①挨拶する回数、②笑顔の回数、③返事する回数、④きびきび行動する回数、⑤相手の目を見て頷く回数、⑥声の大きさ・明るさ ― を挙げていた。

そして「当たり前のこと」として①時間・約束・ルールを守る、②積極的に応答する、③困った人がいれば助ける、④受けた行為に感謝する、⑤迷惑をかけたら謝る、⑥受けた仕事はきちんとやる、⑦より早く・より安く・より良いものを、⑧礼儀、⑨自己管理・5S ― を学ばせていた。

それとともに人間関係を良くするためには①相手に関心を持つ、②話を聴いて差しあげる、③明るい雰囲気をつくる、④良いところは褒める、⑤考え方のちがいを認める ― といったことに配慮するように教育を実践していた。

そのうえで基礎的な5つの機能を社員が身につけるために、作業内容や問題を記録する、他人が書いた記録を読む、発表する・発表を聞く、良いと認められた事象は実践する ― 小集団活動を徹底している。

その活動をスムーズに進めるために会社は①経営理念・経営方針を明確にする、②目標・計画・予算・ビジョンを策定する、③規則(ルール)・習慣を公表する、④顧客・沿革・概要の紹介、⑤仕事の受け方・進め方を決める、⑥商品知識のほかに上司(自分)の役割の明確化、接客対応のノウハウ、ホウ・レン・ソウの重要性など ― 会社が社員に提供する情報も明確にしていた。

「読む・書く ― 聴く・話す ― 考える」ということを基本に、そこから湧き上がる行動力に期待したい。

これからも事実を正確にお伝えする中で、読者のみなさまに“行動力”が身につくような「視点」を掲載していきたいと思います。

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