震災・原発事故後の発足から10年、福島のものづくり復活に貢献
「新しい時代をむかえるにふさわしい工業会にしていきたい」
福島県シートメタル工業会 会長 藤井 義男 氏 (有限会社 藤井製作所 取締役会長)
藤井義男氏
福島県は、2011年3月に発生した東日本大震災(以下、震災)および東京電力福島第一原子力発電所の事故(以下、原発事故)により、甚大な被害を受けた。福島県の震災による被害額は、資本ストック(社会資本・住宅・民間企業設備)だけでも2兆6,000億円程度と推計されており、復興に向けた取り組みが今もなお続いている。
「福島県シートメタル工業会」は震災からの復興・再生に取り組みながら、板金業界で協力し合う組織をつくり、多様な事業活動を行う中で、技術・経営情報の交流、加工技術、技能検定などの人材育成を積極的に推進し、新しい時代をむかえるにふさわしい工業会にしていきたいという趣旨で2014年に設立され、2025年に設立10周年をむかえた。現在の会員数は33社で、他地域の工業会に比べ発足時期が遅く、会員数も少ないが、会員企業の繁栄と業界の発展のため、会員相互の研鑽をはかる事業に積極的に取り組んできた。
そんな工業会で3代目会長を務めているのが、設立発起メンバーの一人として、5地区に分散していた板金加工企業の説得とまとめ上げに尽力した㈲藤井製作所の藤井義男会長だ。
震災と原発事故から15年が経つ現在でも福島県では多くの人が避難生活を余儀なくされている。県内の人口、生産年齢人口の減少ペースは全国を上まわっており、これに歯止めをかけるためにも福島の魅力あるものづくりに貢献する「福島県シートメタル工業会」の役割が重要になっている。
そこで藤井会長に工業会の課題と役割について話をうかがうとともに、2024年に経営のバトンを受け取った藤井靖彦社長に㈲藤井製作所の現状と将来について話を聞いた。
設立から10年、全国で一番若い工業会
― 「福島県シートメタル工業会」の沿革を教えてください。
藤井義男会長 2026年3月で震災と原発事故の発生から15年になります。福島県では特に、震災当時から原発事故後の3年間は大変でした。そんな中でアマダから「シートメタル工業会」設立の提案があり、15社ほどの推進メンバーの中から私を含む8社の社長が発起人となって工業会を立ち上げました。当時は放射能汚染の風評被害の問題もあり、手探りの状態でした。初代会長には㈱赤井工業所の田仲淑夫さんになっていただき、2代目は㈱関口電器製作所の関口正孝さん、3代目は私と引き継いで、気がつけば設立から10年経ちました。
「福島県シートメタル工業会」は全国で一番若い工業会なので、岩手県など北東北エリアのメンバーと頻繁に交流を行い、工業会活動について指導を仰ぎました。国内研修も採り入れ、新潟県や岩手県を訪問しました。2024年には設立10年目の特別イベントとして、台湾への海外視察を実施。14社ほどが参加して現地の板金工場の見学や意見交換を行い、たいへん勉強になりました。そのほか、会員企業のためのマイナンバー制度の勉強会や消防署長を招いての勉強会なども実施してきました。
左:㈲藤井製作所本社工場/右:サイクルローダー付きのパンチ・レーザ複合マシンLC-2012C1NT
板金業界は震災から3カ月で90%まで回復
― 震災・原発事故による福島県の被害額は、資本ストックだけでも2兆6,000億円程度と推計されています。これまでの板金業界への影響はいかがでしたか。
藤井会長 当社のある県南地域の被害は比較的小さい方でしたが、浜通り周辺地域は津波による影響も加わり被害が大きかったようです。原発事故の影響は帰宅困難地域に指定されたことで、移住を迫られ、風評被害では大変でした。
県内総生産額や県民雇用者1人あたりの生産額は、震災・原発事故の影響によって大きく減少した後、復旧・復興需要の拡大などから着実な回復を続け、最近は震災前の水準を上まわって推移しています。板金業界も2011年3月に大きく落ち込みましたが、生産設備の復旧の進捗などにともない、同年6月には震災前の90%程度まで回復しました。その後は、内外経済の減速や操業停止期間中の納入先によるサプライチェーンの見直し、コロナ禍の影響もあり、回復の動きは鈍くなりました。足もとの状況はあまり良くない印象です。
一方で、被害が大きかった地域などの産業復興に向けて、国や福島県などが一体となってさまざまな取り組みが行われてきました。その核となるのは、新たな産業基盤を構築していくことを目指して2014年に取りまとめられた「福島イノベーション・コースト構想」です。福島第一原発の廃炉などに関連して進みつつあるロボットなどの研究開発成果や、浜通り地域などでおこりつつあるエネルギーや先進的な農林水産業などのプロジェクトなどを活用して、新たな研究・産業拠点を地域全体で戦略的に整備していくことで、産業集積や人材育成、交流人口の拡大などを進め、将来的な新技術や新産業の創出につなげていくというもので、すでに取り組みがはじまっています。
2019年には復興・創生期間後も見据えた取り組みの方向性を整理した青写真が策定され、重点分野として廃炉、ロボット・ドローン、エネルギー・環境・リサイクル、農林水産業、医療関連、航空宇宙を位置付け、各分野におけるプロジェクトの具体化、産業集積や人材育成、交流人口の拡大などに向けた取り組みが進められています。
工業会の中には当社をはじめ、「ふくしまロボット産業推進協議会」のメンバーとなっている企業もあり、新たな製品の開発支援、進出企業とのマッチングなどを通じて新たなビジネス創設を考えています。
曲げ長さ3mまで対応。大型製品に対応するため追従装置は必須
TIG・半自動が中心の溶接工程
会社情報
- 会社名
- 有限会社 藤井製作所
- 取締役会長
- 藤井 義男
- 代表取締役社長
- 藤井 靖彦
- 所在地
- 福島県西白河郡矢吹町神田南230
- 電話
- 0248-45-2524
- 設立
- 1987年(1965年創業)
- 従業員数
- 30名
- 主要事業
- コンプレッサー機器部品・空調設備・制御盤など筐体、フレームなどの板金加工
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