特集

「ものづくりはひとづくり」を実践する板金企業

「人の伸びしろが会社の伸びしろ」 ― 企業内大学「やわらカレッジ」を開設

一品一様・多品種少量生産の未来を支える人材育成プログラム

コンチネンタル 株式会社

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画像:「人の伸びしろが会社の伸びしろ」 ― 企業内大学「やわらカレッジ」を開設ブランク加工と機械加工に特化した「立山工場」(2021年開設)の工場内。ファイバーレーザマシン2台を含む計4台のブランク加工マシンが並ぶ

企業内大学「やわらカレッジ」を開設

画像:「人の伸びしろが会社の伸びしろ」 ― 企業内大学「やわらカレッジ」を開設「人の伸びしろが会社の伸びしろ」と語る岡田俊哉社長

富山県富山市のコンチネンタル㈱は2025年4月、企業内大学「やわらカレッジ」を開設した。2018年から全社を挙げて取り組んできた伴走型の新入社員向け教育プログラムを発展させ、大学で用いられる名称や仕組みを採り入れた。教育の目的や道筋をわかりやすく示すことで若手社員や就活生の不安を取り除き、入社2年目以降のスキル管理を見える化することで、人材確保と人材育成を加速させる。

カレッジの「理事長」には岡田俊哉社長が就き、「製造部」「営業部」「総務部」などの部署を「学部」に、「プログラム」「ブランク」「溶接」などの工程を「学科」に見立てた。「講師」の多くは現役のベテラン社員が担当する。

入社1年目を対象とした「新入社員研修コース」は「共通科目」に相当する。社会人としての基礎、ものづくりの基礎を習得した後、主要4工程(ブランク・曲げ・機械加工・溶接)のOJTを通じて実践的なノウハウを身につける。

入社2年目からは「キャリアデザインコース」へ移行する。配属先でさらに高度なスキルを身につけ、ジョブローテーションにより各工程をめぐってさまざまなスキルを習得する。スキル習得により与えられる「単位」は、独自開発の「スキルツリー」アプリと対応し、習得可能なスキルの全体像と成長のプロセスを見える化した。

目指すゴールは、ひとりで製造工程のすべてをこなせる「ひとり鉄工所」と「一人前の社会人」。両方を達成したことが認められると「学位」が授与され、中核人材としてさらなるキャリアアップへの道も拓ける。

「やわらカレッジ」という名称は、同社のコーポレートスローガン「やわらかい鉄工所。」に由来する。このスローガンは2021年、岡田社長の2代目社長就任に合わせて掲げられた。従来の鉄工所の枠組みにとらわれない発想力・対応力・創造力を発揮して、多様なニーズに応える企業を目指すことを社内外へ向けて宣言した。

岡田社長は「『やわらかい鉄工所。』であり続けるためには『やわらかいひと』が必要不可欠。『ものづくりはひとづくり』『人の伸びしろが会社の伸びしろ』と私たちは考えます。人が成長することで会社も成長し、新たな価値を生み出すことができる。当社のように多品種少量生産を強みとする企業は特にそうです」と語っている。

  • 画像:「人の伸びしろが会社の伸びしろ」 ― 企業内大学「やわらカレッジ」を開設600ページ超におよぶ「教科書」。「新入社員研修コース」のOJT研修(8カ月間)で使用する
  • 画像:「人の伸びしろが会社の伸びしろ」 ― 企業内大学「やわらカレッジ」を開設独自開発の「スキルツリー」アプリ。スキル習得により得られる「単位」と対応し、成長のプロセスを見える化した

一品一様の多品種少量生産に強み

同社は、一品一様の多品種少量生産を得意とする板金加工企業。工作機械・半導体製造装置・食品機械・搬送装置・真空関連など、幅広い分野の仕事を手がけている。1991年に岡田幸雄会長が35歳で創業し、今年で34周年。「職人の技術」「工場・機械設備」「IT」という3つの要素を融合させ、他社が嫌う仕事を積極的に取り込むことで、後発でありながら急成長を遂げてきた。

得意先は250社を超え、そのうち県外の得意先が約70%を占める。業種別の売上構成は、工作機械が40%、半導体製造ラインが25%、食品製造ラインが7%、搬送装置が3%、真空関連が3%、その他22%となっている。

月4,000アイテムの製品を加工しており、新規品の割合が70%(月2,800アイテム)を占める。しかも単品(ロット1個)の案件が全体の60%を占め、ロット10個以下が95%におよぶ。従業員数100名に迫る規模でありながら、一品一様が中心の極端な多品種少量生産体制となっている。

岡田会長が重視してきた「職人の技術」にも定評がある。2012年には熱に弱い難加工材のパーマロイ合金を用いた真空チャンバーの耐真空溶接技術を確立。宇宙空間にちかい「超高真空」を実現する「超高真空チャンバー」の一貫生産体制も構築し、技術力の高さを証明した。近年は、平板・パイプ兼用ファイバーレーザマシンENSIS-3015RI(2021年導入)を用いて住宅用木材のプレカットの手法をパイプ・形鋼に採り入れた「オーダーメイド型プレ加工品」や、3Dスキャナー・3Dプリンター(どちらも2021年導入)を用いた「リバースエンジニアリング製法」といった新たなサービスにも挑戦している。

2024年11月には配電盤・電力制御装置の組立を手がける「㈲サン電装」(富山市)、2025年1月には工作機械・切削工具を扱う機械商社の「㈲萬全工販」(同)をM&Aで取得。事業領域を組立配線まで拡大して受注機会を増やし、機械商社の販路を生かして営業開拓を加速させる。両社とのシナジーも生かしながら、2030年には現在の2倍強に相当する年間売上高30億円を目指す。

  • 画像:「人の伸びしろが会社の伸びしろ」 ― 企業内大学「やわらカレッジ」を開設本社工場の曲げ工程。ネットワーク対応型ベンディングマシンが6台並ぶ。ロールベンダー、パイプ曲げにも対応する
  • 画像:「人の伸びしろが会社の伸びしろ」 ― 企業内大学「やわらカレッジ」を開設2025年8月に開催した地域型オープンファクトリー「トミファ」のワークショップの様子

会社情報

会社名
コンチネンタル 株式会社
代表取締役
岡田 俊哉
所在地
富山県富山市水橋沖172
電話
076-478-2324
設立
1991年
従業員数
95名(パート・技能実習生を含む)
主要事業
工作機械カバー、電気機器筐体、建材などの製作
URL
https://continental-ltd.com/

つづきは本誌2025年10月号でご購読下さい。

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