新工場への再編・統合で飛躍を目指す四国の板金企業
ボイラー・圧力容器のプロ集団、ステンレス製品に特化した新工場を開設
コンタミ対策を万全とし、ステンレス製品を新たな事業の柱に
株式会社 門田鉄工
①ステンレス製バッファータンク(容量10トン)の胴板(板厚6.0㎜)の溶接作業。容量30トンサイズだと胴板は板厚16㎜にもなる/②ステンレス製ジャケットタンク(三重構造)の二重部分まで製作した状態/③圧力容器の両端をふさぐ鏡板の溶接作業
ステンレス製品に特化した新工場を開設
門田淳社長
㈱門田鉄工は2025年5月、ステンレス製品の加工に特化したサニタリー工場「北条工場」を新たに開設した。
「本社工場」から車で20分ほど北上した幹線道路沿いに立地し、第一種圧力容器(ステンレス製)製造認可を「北条工場」でも取得した。「本社工場」は鉄製の圧力容器、「北条工場」はステンレス製の圧力容器にそれぞれ特化する。鉄製品とステンレス製品の溶接製缶工場を分けることにより、コンタミネーション(異物混入)対策を万全とした。
併せて、「エス・ユー・エス部」と「物流センター」の機能を「北条工場」に統合した。
同社の拠点はこれまで、①圧力容器製造の中核拠点である「本社工場」(松山市堀江町)、②ボイラー煙突などの薄板ステンレス加工を手がける「エス・ユー・エス部」(同市愛光町)、③塗装・品質管理・出荷管理を行う「物流センター」(同市内宮町)、④板金加工などの部品製作を担う「パーツセンター」(同) ― の4カ所に分かれていた。
このうち、①「本社工場」、②「エス・ユー・エス部」、③「物流センター」の機能を再編し、その一部または全部を「北条工場」に統合した(下図)。
「北条工場」の敷地面積は1,450坪で、ステンレス製缶工場(建坪145坪)、物流棟(同480坪)、事務所棟の3棟を建設した。4拠点すべてを合わせた総敷地面積は約30%拡大した。新工場の開設と最新設備の導入により、全体の生産能力は従来比で約30%向上した。
ステンレス製缶工場は天井高さ10mで、クレーン下までの高さは7m。天井クレーンは2.4トン+2.4トンの4.8トンと、2.8トンの2基を設置し、大型製品への対応力を高めた。純水供給装置のバッファータンク(流体の一時貯留タンク)であれば、従来は容量1~3トンのサイズのみ対応していたが、天井高さとスペースを確保したことにより、ラフター等のクレーン車を利用して容量10トンを超える大型タンクにも対応できるようになった。
「北条工場」の完成に合わせ、今年6月に4代目社長に就任した門田淳社長は「ステンレス製品のウエイトは現在30%程度。今後は鉄製品とイーブンになるくらいまでステンレス製品のボリュームを増やしていきたい」と力を込めた。
「第一種圧力容器製造認可」を持つ溶接製缶のプロフェッショナル集団
同社は1894年(明治27年)の創業で、130年以上の歴史を持つ老舗企業。門田家の本家は古くから松山城下で鍛冶を手がけ、門田社長の曽祖父にあたる門田峰次郎氏が分家して、「門峰」の屋号で創業した。同社の前半生に鍛冶職人の創意工夫によって培われた技術・技能は、今なお続く同社の揺るぎない礎となっている。
その後は鍛冶屋から鉄工所へと発展し、1952年頃から現在の主力得意先である地場のボイラーメーカーと取引を開始した。1987年には得意先との共同認可で「第一種圧力容器製造認可工場」の指定を受けた。
最大の強みは、長年にわたり培ってきたボイラー・圧力容器のプロフェッショナルとしての技術・ノウハウだ。内部で高温・高圧の蒸気を発生させるボイラーも、気体・液体を一定の圧力で貯蔵・処理するその他の圧力容器も、要求仕様どおりの接合強度と完全密閉状態を実現する溶接製缶技術が欠かせない。同社には特別ボイラー溶接士、普通ボイラー溶接士、NK溶接士、1級溶接管理技術者、非破壊試験技術者などの有資格者が多数在籍。過去の製造実績をもとに溶接施工要領書も整備し、「圧力容器に精通したプロ集団」として得意先各社も絶大な信頼を寄せている。
「第32回優秀板金製品技能フェア」(2019年度開催)では、初めて応募した「サンプルジャケットタンク」(実物の1/5ミニチュアモデル)が「厚生労働大臣賞」を受賞する快挙を成し遂げた。加工難易度が高いミニチュア版で、ジャケット内面にも裏ビードを形成させるなど材料を完全に一体化する高度な溶接技能が評価された。
左:2025年5月に稼働を開始した㈱門田鉄工の「北条工場」。左が物流棟、右奥がステンレス製缶工場、右手前が事務所棟/右:ステンレス製缶工場の内部。天井高さ10m、クレーン下までの高さは7mで、大型製品への対応力を高めた
会社情報
- 会社名
- 株式会社 門田鉄工
- 代表取締役社長
- 門田 淳
- 本社工場
- 愛媛県松山市堀江町甲1-1
- 北条工場
- 愛媛県松山市下難波甲214-1
- 電話
- 089-979-2200
- 設立
- 1967年(1894年創業)
- 従業員数
- 56名(技能実習生を含む)
- 主要事業
- 圧力容器などの製缶、レーザ切断、ガス切断、パイプ切断・加工、ステンレス薄物加工
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