特集

第37回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介

同一パーツで構成された5つの正四面体が交錯する複合多面体フレーム

トライ&エラーを繰り返しながら1/100㎜単位の精度を追求

株式会社 キヨシゲ

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画像:同一パーツで構成された5つの正四面体が交錯する複合多面体フレーム「中央職業能力開発協会会長賞」を受賞した㈱キヨシゲの「3Dパズル」(SUS304・板厚1.0㎜、W180×D180×H230㎜)

5つの正四面体が交錯する複合多面体フレーム

画像:同一パーツで構成された5つの正四面体が交錯する複合多面体フレーム小林茂会長(前列右)、小林光德社長(前列中央)、経営企画室・小林大起リーダー(前列左)と、作品づくりを担当した製作チームのメンバー(後列)

「第37回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)の「組立品の部」に出品した㈱キヨシゲの「3Dパズル」が「中央職業能力開発協会会長賞」を受賞した。同賞は「卓越する技能を用い、独自の手法を開拓したと思われる作品」に贈られる。

この作品は、5つの正四面体(正三角錐)フレームを交錯させて組み上げた複合多面体フレーム。玄関やリビングに飾っても馴染むオーナメント(装飾品)をイメージしつつ、パズルとしても楽しめる遊び心を採り入れた。同じパーツを組み合わせてまったくちがう形状の立体物をつくることにこだわり、留め具を使用しない嵌め合い構造を採用した。

ひとつの正四面体は6本の等辺(パーツ)で構成され、それを5個組み合わせるため、計30個の同一パーツを使用する。嵌め合い構造のため、30個のパーツ1点1点の加工精度が高くなければ、累積誤差によって組立時に干渉やガタが生じてしまう。そのためトライ&エラーで設計変更・再加工・再組立を10サイクル以上繰り返し、パーツの加工では1/100㎜台の加工精度を追求した。

製作時間全体のうち約75%を組立作業に費やした。組立順序が異なると完成しないうえ、わずかな衝撃で分解してしまうため、きわめて繊細かつ慎重に組み上げられている。完成品はぎりぎりのクリアランスでぴったり収まっており、ほとんどガタがない。板金加工で実現できる加工精度・組立精度を極限まで追求していることが見て取れる。なお、応募作品は輸送中・展示中に崩れてしまわないように、数カ所、点付け溶接を行っている。

板金フェア初参加ながら、1種類の単純なパーツから複雑で美しい立体物をつくり上げる発想と、それを実現する高度な加工技術・技能が評価された。

画像:同一パーツで構成された5つの正四面体が交錯する複合多面体フレーム左:折り紙でつくったモックアップ。板金で製作するパーツの形状を検討し、組立順序を書き込んでシミュレーションした/右:パーツの展開図。同一パーツを30個組み合わせて正四面体×5個の複合多面体フレームをつくり上げている

“鐵”の入口から出口まで ― 「人を育てる仕組みづくり」に注力

キヨシゲは、千葉県浦安市を中心に国内6カ所、ベトナム1カ所に拠点を持ち、「鋼材販売事業」「鋼材加工事業」「スクラップ回収事業」の3事業を展開している。

「一途に鐵、一途にお客樣」をスローガンに、“鋼材流通加工サービス業”として、“鐵”の入口から出口までのワンストップソリューションを提供できることが最大の特徴。売上構成は「鋼材販売事業」が約50%、「鋼材加工事業」が40%弱、「スクラップ回収事業」が10%強となっている。

1960年の創業時は、プレス工場からのスクラップ回収業としてスタート。その後、シャーリングで加工した切板の鋼板販売を手がけるようになった。さらに、顧客の要望に応えるかたちでプレス加工、板金加工、形鋼加工、機械加工、溶接製缶と、2次加工の対応力を順次強化していった。

小林光德社長は2006年に2代目社長に就任して以降、「人を育てる仕組みづくり」に力を注いできた。中でも「技能検定」については「社員教育の背骨」と位置づけ、全社を挙げて受検者をサポートする体制、社員が自発的に資格取得を目指す環境を整えてきた。

板金加工(2000年に本格参入)を含む2次加工の領域で後発の同社は、たしかな技術力を身につけ、それを社外へ向けてわかりやすく示す必要があった。顧客の信頼を勝ち取るためには、最新鋭の加工設備を導入することと、高い技術・技能を備えた人材を育てることが不可欠だった。そうした中で「技能検定」は、顧客に対して同社の技術・技能を裏書きするツールとなり、社内組織を構築するうえで明確な“ものさし”となった。

技能検定に合格すると、毎年4月に開催される全社員参加の「全体会議」で表彰される。社内外での評価につながることで、すべての社員が「技能検定」をはじめとする各種資格の取得を目指す機運が醸成されていった。

画像:同一パーツで構成された5つの正四面体が交錯する複合多面体フレーム左:ファイバーレーザマシンENSIS-3015AJ(9kW、フォーク式パレットチェンジャー+TK仕様)で作品に使用するパーツのレーザ加工を行った/右:曲げ工程。HG-8025(左奥)で、作品に使用するパーツの高精度曲げ加工を行った

会社情報

会社名
株式会社 キヨシゲ
代表取締役社長
小林 光德
所在地
千葉県浦安市鉄鋼通り2-4-3
電話
047-351-7201
設立
1970年(1960年創業)
従業員数
110名
主要事業
鋼板・鋼材販売/鋼板・鋼材加工(プレス加工・板金加工・形鋼加工・機械加工・溶接)/スクラップ回収
URL
https://www.kiyoshige.com/

つづきは本誌2025年6月号でご購読下さい。

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