特集

大板材対応ファイバーレーザマシン活用事例

切板加工の自動化で作業者の負担を軽減 ― 「働きたい」と思ってもらえる会社づくり

LC-VALSTER-AJ導入が作業環境の改善、会社全体の改革につながる

阿部鋼材 株式会社

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画像:切板加工の自動化で作業者の負担を軽減 ― 「働きたい」と思ってもらえる会社づくり「発寒工場」に2023年8月に導入したファイバーレーザマシンLC-VALSTER-6225AJ(10kW)+AS-6225セカンドステーション+IJP

自動化により人手作業の付加価値を高める

画像:切板加工の自動化で作業者の負担を軽減 ― 「働きたい」と思ってもらえる会社づくり阿部大祐社長(左)と、発寒工場の羽沢敏昭工場長(右)

阿部鋼材㈱は北海道でトップクラスの鋼材の切断・加工販売会社。製造拠点は2カ所で、「発寒(はっさむ)工場」ではメイン事業である切断加工を行い、「石狩工場」では鉄・ステンレス・高張力鋼などの鋼板、H形鋼をはじめとした形鋼や条鋼・パイプなどの曲げ加工、溶接・組立加工、トンネルの骨組みとなる支保工(仮構造物)の製作を行っている。

「発寒工場」で加工する切板は鉄骨・建材関連が半数以上で、建築関係と橋梁関係で約70%を占める。「石狩工場」で曲げ加工、溶接加工を行うのはプラント関係やインフラ関係が多く、除雪機や建設機械の保守部品の製作なども行う。また、コンクリート2次製品の製造を行う「山一ピーエスコンクリート㈱」、鉄骨製品加工・組立・溶接を行う「㈱カネトミ北勝興業」のグループ企業2社と協力して行う案件もある。

同社は2023年8月、鉄骨・鋼材加工向けファイバーレーザマシンLC-VALSTER-6225AJ(10kW)+AS-6225+セカンドステーション+IJPを「発寒工場」に導入した。狙いは生産性の向上と自動化による作業者の負担軽減だ。

阿部大祐社長は「社員が怪我をせず、安心して、長く勤めたいと思える作業環境を整えたいと考えました。LC-VALSTER-AJの導入で社員の負担は大幅に軽減します。今回の導入は、機械でできる作業は機械化(自動化)し、人手作業の付加価値を高めていくという方向性へと舵を切るきっかけになりました」と語っている。

創業74年の鋼材の切断・加工販売会社

同社は日本製鋼所に勤めていた阿部武房氏が1950年に創業し、当初は設備も工場もなくブローカーのような仕事を行っていた。1951年に株式改組。1952年には札幌市苗穂地区にシャーリング工場を建設し、シャーリングやガス切断機を導入してガセットプレートやスプライスプレート、ダイヤフラムの加工を始めた。現在も取引があるHグレードの鉄骨ファブとの取引も、この頃に始まった。

1960年に中厚板の曲げ加工、1964年に形鋼加工を開始するなど、得意先からの要望を受けて加工領域を拡大させていった。当時はトンネルの支保工、道路の防雪柵、農業用水路などに使われる鉄材・鋼材の加工がメインだったが、新たに石油コンビナートで使用されるドラム缶の製造を開始。1969年にはドラム缶を応用した家庭向け燃料貯蓄用ホームタンクを開発し、3年間で約1万基を製造するヒット製品になった。このほか、美香保プール、スケートリンク、ガソリンスタンドの地下タンクなどの製造にも携わった。

1990年には業界に先駆けてレーザマシン(2kW)を導入するなど、時代のニーズに合わせて設備の増設、工場の建設や移転を行い、事業規模を拡大していった。

3代目社長の入社で社内改革が進む

1996年には創業者の孫にあたる阿部大祐社長が入社。レーザ切断機などを手がける産業機器メーカーで東北エリアの営業担当をしていた阿部社長は、鋼材加工業界の動向や課題などに精通していた。また、さまざまな企業を見てきた経験から、自社の課題 ― 工場にスペースや動線のムダがあり5Sが行き届いていないことや、人事制度などが不明瞭で従業員たちが不安を抱えていることなどに気づくことができた。

阿部社長はこうした課題を洗い出し、数年かけて5Sの徹底や情報開示、人事制度の明確化など、「風通しの良い会社」へ向けた改革を行ってきた。2015年には3代目社長に就任。その後も部門・職層ごとの成長シートを作成した「成長支援制度」や、役割分担の明確化と社員個々のパフォーマンス向上を目的とした組織再編などを行っていった。

こうした改革の成果は、従業員の定着率や満足度として表れている。毎年新卒を含めた入社希望があり、今年も4月から若手5名が入社した。現在の従業員数は83名で、平均年齢は43.6歳。10年前(44~45歳)に比べて若返りも進んでいる。

  • 画像:切板加工の自動化で作業者の負担を軽減 ― 「働きたい」と思ってもらえる会社づくりセカンドステーションでのピッキング作業
  • 画像:切板加工の自動化で作業者の負担を軽減 ― 「働きたい」と思ってもらえる会社づくり社員の負担軽減のため、必ず導入したかったというインクジェットプリンター

LC-VALSTER-AJを導入 ― 生産性向上と負担軽減を目指す

2023年8月に発寒工場に導入したLC-VALSTER-6225AJ(10kW)にも、阿部社長のそうした思いが込められている。

「当時は建築需要の高まりで生産量が増え、発寒工場は人手が不足し、応援のため石狩工場から一部社員を派遣していました。加工した切板に製品番号や注文番号、表裏、どこに止め板がつくかなど必要な情報を手書きしていましたが、這いつくばるような体勢で作業しなくてはならず、社員が足腰を痛めてしまった。そのときに付加価値を生まないきつい作業を今後もやらせて良いのかと考えさせられました」。

「社員が怪我をせず、安心して、長く勤めたいと思える作業環境を整えたい。そのためには自動化できる作業は自動化し、社員の負担を軽減し、空いた人手は付加価値を生む作業 ― 溶接などノウハウが必要なところに割きたいと考えました」。

「LC-VALSTER-AJは中厚板の加工能力に加え、パレットチェンジャーによる材料の搬入・搬出、素材段取り、印字・マーキングを自動化できる点を評価しました。フルパーテーション構造で切断時も粉塵が飛び散りにくく、消費電力を削減できるのも魅力でした」。

「不具合があった場合も、アマダなら地元にサービスマンがいるのですぐに対応してくれます。IoTサポートを使えば問い合わせなどもしやすく、必要に応じて遠隔で対応してもらえることもポイントでした。導入から20年以上が経つCO2レーザマシン(2kW)の代替機として、省エネ補助金を使ってLC-VALSTER-AJを導入することに決めました」(阿部社長)。

画像:切板加工の自動化で作業者の負担を軽減 ― 「働きたい」と思ってもらえる会社づくり左:出力4kWのCO2レーザ発振器を搭載した自走式レーザマシン/右:オペレータは配布されたタブレット端末で作業の着手・完了情報を入力する

会社情報

会社名
阿部鋼材 株式会社
代表取締役社長
阿部 大祐
本社
北海道札幌市西区発寒10条11-2-14
発寒工場
北海道札幌市西区発寒15条12-4-1
電話
011-662-1891
設立
1951年
従業員数
83名
主要事業
鋼材の切断および加工販売
URL
https://abekouzai.jp/

つづきは本誌2024年8月号でご購読下さい。

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