特集

脱炭素社会に貢献する「SBT」認定企業

中小製造業のための「SBT」入門

取引先などへのアピール、資金調達・補助金獲得につながる国際認証

株式会社 ゼロプラス

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脱炭素化へ向け「SBT」の注目が高まる

2023年現在、地球温暖化や気候変動が深刻な課題として広く認識され、ビジネス界においても脱炭素化が急務とされています。

このような社会的背景の中で、「SBT」という言葉を耳にする機会が少しずつ増えてきていることかと思います。ここではSBTとは何か、SBT認証を取得するメリット、取得のプロセスについて解説していきたいと思います。

「SBT」とは

SBTとは「Science Based Targets」の略で、直訳すると「科学的根拠に基づいた目標」を意味します。具体的には、気候変動問題に関する国際的な取り決めであるパリ協定が求める水準と整合した、企業が設定する温室効果ガス排出削減目標を指しています。

SBT認証は、CDP、国連グローバルコンパクト(UNGC)、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)の4つの国際組織によってつくられた「SBTi」(SBTイニシアティブ)という運営機関によって認証される制度で、先述の目標と整合する温室効果ガス削減目標を定めている企業に与えられます(図1)。この認証制度は2015年から開始され、2023年6月時点で、世界全体で5,445社、そのうち日本では587社が参加しています(図2)。また、SBT認証は「通常版SBT」と「中小企業版SBT」が存在し、国内400社を超える中小企業がSBTをすでに取得しています。

SBT認証は、環境省も2017年から2020年までSBT設定支援事業を行ったり、『SBT等の達成に向けたGHG※排出削減計画策定ガイドブック』を発行したりするなど積極的に取得を奨励しており、今後も参加企業が増えていくことが予想されます。

画像:中小製造業のための「SBT」入門左:【図1】SBTとは/右:【図2】SBTに参加している大手企業(2023年6月時点・抜粋)

SBT認証を取得するメリット

SBT認証は、取得することでさまざまなメリットがあります。ここでは主な3つのメリットについて紹介したいと思います。

【メリット1】 消費者・労働者へのアピールができる

画像:中小製造業のための「SBT」入門【図3】SDGsへの取り組みと就職希望者の意向

最近では企業だけでなく、消費者・労働者の間でもSDGs志向が広まっています。従来は質や価格だけが商品を選択するための評価軸とされていましたが、新たな評価軸として「環境に配慮されているか」や「サステナブルであるか」が浸透しつつあります。

また、あさがくナビが2025年卒予定の就活生に行った調査によると、「企業がSDGsに取り組んでいることを知ると志望度が上がるか」という問いに対して、「上がる」と回答した割合が約7割となっており、自身が働く企業にも何らかのSDGs活動を求める傾向が高くなっています(図3)

【メリット2】 取引先へのアピールができる

画像:中小製造業のための「SBT」入門【図4】取引先にSBT取得を要請する大手企業の例

最近の大手企業におけるカーボンニュートラルの取り組みにおいては、単に自社のカーボンニュートラルを目指すだけでなく、サプライチェーン全体でカーボンニュートラルを目指す動きが加速しています。

アップルは2030年までにサプライチェーンをカーボンニュートラルにすると宣言しており、トヨタ自動車も「トヨタ環境チャレンジ2050」という宣言の中で、材料・部品・ものづくりを含めたトータルでのCO2排出ゼロを目標として掲げています。このことからも世界的な大手企業がサプライチェーン全体のカーボンニュートラル化を推進していることがわかります。このような流れの中、いくつかの大手企業は取引先にSBT目標の設定を求め始めています(図4)。今後もこのような企業が増えてくることが予想されます。

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つづきは本誌2023年11月号でご購読下さい。

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