Interview

中小企業に求められる脱炭素経営

世界的な環境意識の高まりに、先を見据えて対応を

株式会社 ゼロプラス 代表取締役 大場 正樹 氏

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画像:中小企業に求められる脱炭素経営大場正樹氏

地球温暖化による干ばつ、集中豪雨などの気候変動により、各国で脱炭素に向けた動きが活発化している。2023年現在では世界でカーボンニュートラルを宣言する国・地域がGDPベースで90%以上となっており、CO2排出削減と経済成長をともに実現するGX(グリーントランスフォーメーション)に向けた長期的かつ大規模な取り組みが世界各国で行われている。

日本政府は2020年、CO2排出量を2030年までに2013年度比で46%削減、2050年にはゼロにする国際公約を発表。2023年7月には「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」(GX推進戦略)が閣議決定されるなど、目標の実現に向けた法制度の整備や補助金などの創設が始まっている。

また、消費者の環境に対する意識は以前と比べものにならないほど高まっており、金融機関・投資家もCO2削減の取り組みを融資や投資の指標のひとつに加えている。こうした流れの中、政府や大企業のみならず中小企業や個人を含めた社会全体で脱炭素に向けた取り組みを行うことが求められている。

中小製造業向けの経営コンサルタント事業を行う㈱ゼロプラスは、脱炭素経営に役立つ情報の発信、CO2排出量の診断、補助金や中小企業版SBT(Science Based Targets)のような国際認証取得に向けたコンサルティングなど、脱炭素経営に関するさまざまなサービスを提供している。

同社は自身も2022年12月に「Green×Digitalコンソーシアム」へ参加、2023年2月にSBT認証を取得、4月に「再エネ100宣言 RE Action」に参加したほか、2023年度中には「カーボンニュートラル宣言」を行う予定だ。

大手非鉄金属商社で働いた経験を持ち、中小企業診断士として日本の中小製造業が持つ技術力・現場力を活かす仕組みづくりを模索する㈱ゼロプラス・大場正樹社長に、中小企業が脱炭素に取り組むべき理由、SBT認証取得の必要性などについて話を聞いた。

CO2削減を「経営課題」に据えて取り組む

― 2021年に米国がパリ協定に復帰してから世界中で「脱炭素」に向けた動きが加速しています。なぜ「脱炭素」が求められているのか、あらためて教えてください。

大場正樹社長(以下、姓のみ) 20~30年後の日本経済における外部環境として予測されるのは3つ ― 「インフレになること」「人手不足になること」「商品価格の高騰」です。インフレにより商品やサービスの値段が上昇すると、お金の価値が以前よりも低くなる。そうなると働き手は賃上げを要求します。日本の場合は少子高齢化による労働人口の減少で人手不足になることは確定しているので人手を確保するためには人件費を上げなければいけない。材料費と人件費が上がれば赤字を防ぐために製品単価も上げなければならない。しかし、ただ単価を上げるのは難しいのでVE提案などをして得意先と交渉する必要があります。このときに重要になってくるのが「脱炭素」ではないかと思います。

気候変動による異常気象が指摘される中、消費者の環境意識が高まっています。脱炭素は「安心して暮らせる住環境がほしい」「美しい地球を守ろう」と同義なので反対するわけにはいきません。そして環境に悪い会社の商品はどんどん選ばれなくなっていきます。

こうした世論の意識を受けて金融機関も、環境や社会に配慮した事業を行い、適切なガバナンスがなされている会社への投資(ESG投資)を積極的に行っています。

さらに、環境に配慮している会社の株を購入する投資家が増え、東証プライム市場の上場企業のうち約1/3はすでに第三者機関CDPにつけられた「環境スコアリング」を開示しています。こうしたESG投資は世界の投資総額の1/3~1/2あるとも言われています。「ESGはやりません」「環境に優しくないです」と言えば、その会社の株は売られ、ライバルの株が買われてしまうことにもなり得るので、今後は基本的にどの大企業もカーボンニュートラルへ向けて取り組んでいくと考えられます。

また、若い世代ほど環境への意識が高いため、人材確保の観点からも環境への配慮は必要です。

中小企業は得意先の要請に応えるため、従業員から選ばれる企業になるため、補助金をもらうためにCO2削減を経営課題に据えて取り組むことが求められます。

画像:中小企業に求められる脱炭素経営中小企業が直面する圧力のイメージ

消費者の環境意識への高まりを実感

― 御社自身もSBT認証の取得やコンソーシアムへの参加を含め、積極的に脱炭素経営に取り組まれています。

大場 当社は2022年12月に「2050年カーボンニュートラル」の実現に寄与することを目的とするコンソーシアム「Green×Digitalコンソーシアム」へ参加。2023年2月にSBT(Science Based Targets)認証を取得し、4月には再エネ100%利用を促進する枠組み「再エネ100宣言 RE Action」に参加しています。

2023年度中には「カーボンニュートラル宣言」を行う予定で、現在は排出権取引の手続きを進めています。営業車6台もハイブリッド車に替えました。埼玉県で増築中の事務所の屋根には薄型の自家消費型の太陽光発電システムの導入を検討しています。まずは自社で試すことでお客さまにより良いものをよりスムーズにご案内できるようにしています。

当初は私も脱炭素について懐疑的で、取り組む理由は炭素税を支払いたくないからか、補助金をもらうためだろうと思っていました。しかし、調べていくうちに「多くの消費者が求めている」から対応しなければならないのだと実感しました。この気づきは大きかった。これから2050年にかけて、この動きは続くと考えられます。

会社情報

会社名
株式会社 ゼロプラス
代表取締役
大場 正樹
所在地
兵庫県伊丹市西台1-5-7 伊丹駅前ファミリーハイツ2階
電話
072-764-5340
設立
2014年
従業員数
50名(グループ全体65名)
主要事業
経営コンサルティング、経営コンサルティングに関する講師・研修および教育・訓練、ホームページの企画制作、M&A支援、M&A支援機関遵守の宣言、前各号に付帯するいっさいの業務
URL
https://www.zeroplus-consul.co.jp/

つづきは本誌2023年11月号でご購読下さい。

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