第34回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介
溶接ビードもデザインの一部 ― 高度な溶接技能とデザインの融合
「チタンエキゾーストシステム」が「厚生労働大臣賞」を受賞
株式会社 榛葉鉄工所
「ビードの仕上がりを誤魔化さない」 ― 溶接技能とデザインが融合した作品
「第34回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)の「溶接品の部」に出品した㈱榛葉鉄工所の「チタンエキゾーストシステム」が「厚生労働大臣賞」を受賞した。同賞は「最高度な熟練技能・手法を用い、品質・精度のきわめて高い作品」に贈られる。
この作品は「ビードの仕上がりを表面処理等で誤魔化さない製品を作る」というコンセプトを掲げ、難加工材である純チタンのパイプを用いて、すべてハンド溶接で製作した。
3次元CADでデザイン・設計し、4本のエキゾーストパイプは前後左右のどの方向から見ても交差するように複雑にからみ合っている。青色とシルバーの縞模様が特徴的なエビ管2本は、計104部品で構成されており、陽極酸化処理を施して着色した。陽極酸化部は熱を加えることで色が抜けてしまうため、溶接はすべて1パスで、ビード幅を細く均一に仕上げている。仕上げなどは行わず、溶接ビードをあえて露出させ、デザインの一部として生かした。
陽極酸化処理の後に溶接を行ったエビ管は世界でも類を見ない。青色とシルバーのコントラストが美しく、高度な溶接技能とデザインが融合した作品として評価された。
大型自動二輪車のマフラーを開発・製造 ― 設計開発・パイプ加工・溶接が強み
榛葉鉄工所は大型自動二輪車・建設機械・農業機械などの排気系部品を得意とする金属部品メーカー。中でも自動二輪車のマフラー(エキゾーストシステム)は同社を象徴する製品で、創業以来75年にわたり、大手自動二輪車メーカーの1次サプライヤーとして革新的なマフラーづくりにチャレンジし続けてきた。
いち早く3次元CADやCAEを導入して自動二輪車メーカーと共同でマフラーの開発に取り組み、開発・試作から量産までトータルで手がけている。社内の主な生産工程はプレス加工・パイプ加工・レーザ加工・溶接で、とりわけパイプ加工と溶接の技術力には定評がある。
自動二輪車のマフラーは排ガス規制への対応で大型化が進み、それにともなってデザインが重視され、形状が複雑化していった。素材はステンレス・鉄が多いが、機能・性能を重視してアルミやチタンといった難加工材も使用する。
同社は1997年、川崎重工業と共同でチタン製マフラーの量産化に世界で初めて成功した。2000年代には、受注量の増加と複雑化するマフラーの安定生産に対応するため、溶接ロボットを採り入れ、“匠の技”をロボットに移植するティーチング技術を磨いた。
2008年のリーマンショックを機に自動二輪車メーカーは海外への生産移転を進め、同社もタイ工場を開設・拡張して対応した。その反面、国内のマフラー生産量は大幅に減少。それ以降は、マフラー生産で培った設計開発のノウハウや、パイプ加工・溶接といった要素技術を生かし、新分野の開拓やオリジナル製品の開発に乗り出している。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 榛葉(しんば)鉄工所
- 代表取締役社長
- 榛葉 貴博
- 所在地
- 静岡県掛川市本所650
- 電話
- 0537-27-2100
- 設立
- 1968年(1947年創業)
- 従業員数
- 200名
- 主要事業
- 大型自動二輪車・建設機械・農機具などの内燃機関エキゾーストシステムおよび関連部品の開発・製造・販売/介護福祉機器などの開発・製造・販売/チタン、マグネシウムなど難加工材の塑性加工・溶接加工
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