お客さまから必要とされるサプライヤーの条件
モノづくりの改革・品質・信頼を通じて社会に貢献
17年間の滞米経験を生かす32歳の事業継承者
株式会社 セイコー
①FLWで溶接された食品機械の部品。材料はSUS304/②溶接箇所をティーチングする
「飛燕」修復プロジェクトにも参加
村下清幸社長(右)と村下正樹常務(左)
35年前に㈱セイコーを創業した村下清幸社長は、打ち出し板金・曲げ・溶接に卓越した技能を持っている。その一方で、精密板金・機械加工に対応する最新設備を導入、機械でできる仕事は機械に任せ、ヒトは機械にない知恵を使って難易度の高い仕事をこなすことを目指し、建築金物の加工から、航空宇宙産業、鉄道車両、食品機械、医療機器など先端産業の仕事まで携わってきた。また、「コーナープロテクター」(特許取得済)などの自社製品の開発も行ってきた。
最近では、2016年10月15日~11月3日に神戸ポートターミナルで開催された「川崎重工創立120周年記念展―世界最速にかけた誇り高き情熱」に展示された、第2次世界大戦中に川崎重工業が開発・製造したオールジュラルミン製の三式戦闘機「飛燕」の修復プロジェクトに参加し、フロント部のエンジンカバーを修復した。また、愛知県内のパチンコ店を改装して完成させたイスラム教の大型モスク(礼拝所)の象徴であるドームと4本の柱先端部のドーム製造に携わっている。
「飛燕」の修復プロジェクトでは、ジュラルミン製の材料をLC-3015F1NTでレーザ切断後、操縦室前から続く空気抵抗が小さくて美しいノーズのR形状にあわせ、打ち出し板金でカバーを複製した。「3分割したカバーを打ち出し板金で製作しました」と村下社長は話す。
2009年5月にいち早く導入したLC-3015F1NT
ベンディングマシン HDS-1303NT
「モノづくりに不可能なことはない」
打ち出し板金では、溶接と同様に歪みが残らないように加工するのが難しいとされている。一時期、塑性加工の研究者が、エキスパートシステムを使って、歪みを残さない打ち出し加工の経路を自動で創成する研究を行ったが、途中で頓挫。今日も村下社長のような熟練技能者の経験と勘に頼らざるを得ないのが実態だ。
「モノづくりに不可能なことはない」と語る村下社長は、モノづくりが楽にできるように、「機械でできることはドンドン機械に任せるべきだ」と考えている。そこで工場には常に最新設備を導入し、レーザマシンLC-3015F1NTもアマダが発表した翌年(2009年5月)に導入した。
取り扱う加工材料はアルミ・ステンレスが多いので、歪みが問題となるケースが多い。そこで、低歪み溶接ができるYAGレーザ溶接に早くから着目、2000年にハンディタイプのYLM-500Pを導入し、これまでにロボット溶接機を含め3台を導入してきた。
そんな村下社長が発表当初から注目していたのが、ファイバーレーザ溶接システムFLW-4000。
「YAGレーザはパルス発振でCW(連続発振)ができない。YAGレーザでは実現できなかった非鉄金属や気密性の高いなめらかな溶接を実現する、CW溶接が可能なファイバーレーザ溶接システムが発表され、関心を持ちました」。
ただ、ヘッドの大きさや形状、ポジショナーテーブルをはじめとした周辺装置、治具など、解決すべき課題も多いと感じ、導入を躊躇した。そしてもうひとつ導入を躊躇させたのが、事業継承問題であった。
アルミのTIG溶接作業
旧日本軍の戦闘機「飛燕」修復プロジェクトに参加し、フロントエンジンカバーを製作した
会社情報
- 会社名
- 株式会社 セイコー
- 代表取締役社長
- 村下 清幸
- 住所
- 愛知県小牧市三ツ渕原新田433
- 電話
- 0568-73-2939
- 設立
- 1983年
- 従業員数
- 10名
- 主要事業
- 板金加工業(ステンレス、スチール、アルミ、銅、真鍮、チタン)
つづきは本誌2017年12月号でご購読下さい。