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春の宴の後は日本経済の実態に目を向けよ

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桜の季節も終わり、社会に初めて出た新入社員たちは社内研修を終えて、いよいよそれぞれが“現場”へと配属され、同期の仲間たちと離れ離れになって、改めて気持ちを引き締めていることでしょう。早々と「こんなはずではなかった」と現実に少々がっかりした人もいらっしゃるでしょうが、想定外のことが起こるのが人生、だからこそ面白い、と後年思えるようになってほしい。

今年の桜花爛漫の頃は、花冷えとあいにくの天候で、予定が立てにくかったと思いますが、開花が遅れたことで新入学生は桜花の下で記念の写真が撮れたのではないでしょうか。

花冷えの影響ではないでしょうが、景気はここへきて中国経済減速、欧米の景気の影響が出てきています。昨秋と比較すると仕事量は減ってきており、景気が下振れするリスクが高まっていると感じる経営者が増えています。その一方で2極化が加速、忙しい企業とそうでない企業との明暗はますます鮮明になっています。

政府は景気てこ入れとして、リーマンショック後に続き、2度目となる公共投資を上期に集中的に前倒し発注することで、景気の好循環をもたらそうという姿勢を明確にしています。さらに、各種補助金を平成27年度、28年度予算に組み込み、設備投資拡大にも躍起になっています。

その一方、拡大する訪日外国人を2020年に現在の2倍の4,000万人、2030年には現在の3倍の6,000万人に増やす新しい目標を決めました。そして、訪日外国人の宿泊施設を増やすため、民泊を認めるとともに、首都圏を中心に宿泊施設の建設を急ピッチで進めようとしています。それも高級ホテルよりもビジネスホテル、カプセルホテルのようなリーズナブルで設備の整った施設を増やそうとしています。久しぶりに銀座を歩いても、歩行者天国を歩く人の半数は外国人。さらに、やたらと建設途中のビルやビジネスホテルが目立っていました。

国土交通省によれば、2015年に日本を訪問した訪日外国人旅行者の消費額は3兆4,771億円で、年間値で初めて3兆円を突破、前年(2兆278億円)に比べ71.5%も増えたといいます。訪日外国人旅行者の1人あたりの旅行支出は17万6,167円(前年比16.5%増)になったということです。

当然ここには中国人旅行者による爆買いも含まれていますが、この1人あたりの旅行支出額が変わらなければ、4,000万人になる2020年には旅行消費総額は7兆円超えとなります。現在の日本のGDPが500兆円なので、総額の1.6%弱を占めることになります。日本百貨店協会が発表した全国百貨店の2015年売上高が6兆1,742億円であったことを考えると、訪日外国人は日本経済の発展に少なからず貢献していることになります。爆買いした品物を国内のコンビニチェーンと日本郵政グループがタイアップ、日本から送った品物を自国のコンビニで受け取ることもできるようになるというニュースも流れています。ますます爆買いのできる環境が整ってきているようで、関連の波及効果も期待されます。

その一方で気になるニュースもあります。最新の日経ビジネスが「移民(イミ)ノミクス」を特集に組み、大手新聞社は外国人労働者に頼ることによる技術・技能の低下が進み、最近は日本製品の品質にも大きな影響が出てきていることを取り上げていました。特に労働がハードな造船業界でこうした傾向が顕著になっているようで、少子高齢化に対応した技術・技能の伝承を大手企業がいっせいに考え始めたとも報じていました。

2050年には日本の総人口が1億人を下回るわけで、製造立国日本としては“ヒト”という万能の働き手が減少します。今こそ20年、30年先の状況をもっと真剣に考えなければならないと思います。

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