板金論壇

グローバル・シフトへの対応が遅れる日本の中小モノづくり企業

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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日本から仕事を取りたい海外の板金サプライヤー

前月号では、日本をキャッチアップし、日本の大手企業と直接取引するために東京ビッグサイトで開催される公共展に出展する、営業所を都内に開設するなど、積極的な日本市場開拓を行う台湾の板金サプライヤーの実態をご報告したが、今月号誌上でも紹介している、こんな発言から紹介したい。

「最先端の日本企業と取引をするためには、最高の造形物や製品のデザインや仕上がりの良さ、見栄えなどを実際に手で触り、感触を確かめることが勉強になります。社員たちも慰安会で、ただ飲んで食べてという浮かれ気分になるだけでなく、外の世界を見る機会を与えられて、意識が変わって来たように思います」。

これは、台湾・台中市にある台華精技の創業者の長男で、総経理特助の荘忠益氏が、美術館や博物館などを見学する慰安会を開催している理由を紹介したときの発言だ。同社はすでに売上の55%が日本企業からの仕事。創業者は日系自動車部品メーカーの台湾工場で工場長を長年務めた後、2000年に同社を創業した。

荘氏は、英国留学で好きな英語をもっと勉強し、英語圏で仕事をしたいという希望があったが、人手不足を理由に父親である創業者から家業へ入ることを勧められた。その後、得意先である日本企業の要請で、日本語を学ぶため6カ月間、愛知県内の日本語学校に短期留学、日常会話ができるまで上達した。その後、日本企業で1カ月研修して帰国、現在は父である創業者(総経理)を補佐している。

同社は幹部クラスには日本語研修を義務づけており、日本企業とダイレクトに話ができるスタッフを養成している。社員教育や品質管理などは日本の得意先で行われている仕組みを踏襲、人材育成にも積極的だ。

台湾経済の成長が鈍化している中で、同社の昨年の売上は前年比10%増、今年は同20%増を見込むなど、高い成長率で発展している。さらに昨年からは、欧米系企業の開拓にも力を入れている。荘氏はもともと英語が好きだったので、海外企業とのコミュニケーションに不安はない。同社のWebサイトは中国語・英語での閲覧が可能で、目線は常にグローバル。最新鋭の工場設備が整い、日本の先端板金工場と比較しても遜色はない。

「日本企業の担当者が当社の工場を頻繁に訪れます。工場内に一歩入ると、みなさま『すごい、最新の機械ばかり』と驚きの声を上げられます」と荘氏は語っている。

グローバル・シフトへの対応が遅れる

最近は、グローバル・シフトによって中国、ベトナム、タイ、フィリピンなどへ進出している日本の板金企業も出てきているが、進出企業の数はまだ少ない。まして台湾企業のように仕事を海外から受注して、日本で加工した板金製品を輸出する企業はゼロといっても過言ではない。

これまでは国内に十分な仕事量がある、という恵まれた環境があった。しかし、潤沢にあると思っていた国内の板金需要も、台華精技のような企業が受注に乗り出してくることで、これからの日本の板金業界は否が応でもメガコンペティションへの対応を迫られる。

つづきは本誌2016年4月号でご購読下さい。

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