Interview

「中小製造業のDXは難しくない」

DXとはデジタル技術を使って事業モデルを変革すること

株式会社 MM総研 代表取締役所長 関口 和一 氏

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画像:「中小製造業のDXは難しくない」関口和一氏

2010年代は世界の産業界全体で「デジタル化」が叫ばれた10年間だった。2011年にはドイツが国家戦略として「インダストリー4.0」を提唱し、そのコンセプトは2013年開催の独産業見本市「ハノーバーメッセ」を通じて日本にも大きなインパクトを与えた。その後、「IoT」「AI」「ビッグデータ」などが脚光を浴びるようになり、かつての「IT革命」をさらに超え、製造業など“現場”のデジタル変革を促す「デジタルトランスフォーメーション」(DX)の潮流が生まれた。

経済産業省は2018年に「DX推進ガイドライン」を取りまとめ、日本企業のDXを推進するための政策を展開してきた。しかし、2020年12月に経済産業省が発表した「DXレポート2」では、「95%の企業はDXにまったく取り組んでいないか、取り組み始めた段階であり、全社的な危機感の共有や意識改革のような段階に至っていない」と指摘。中小製造業が多くを占める「地域未来牽引企業」を対象としたアンケート調査でも、DXに取り組んでいる企業は9%にとどまった。

日本の中小製造業はDXに対してどのように向き合い、取り組めば良いのか ― 長年にわたり日本経済新聞社の編集委員・論説委員として産業分野・情報通信分野で活躍してきた㈱MM総研代表取締役所長の関口和一氏に話を聞いた。

DXとはデジタル技術を使って事業モデルを変革すること

― DXが必要と言われますが、そもそもDXの意味するところについて明確にイメージできない方が多いと思います。

関口和一所長(以下、姓のみ) 日本では2018年に経済産業省が「DXガイドライン」を発表し、その中で「DX」を定義しています。これを簡単に言うと「今までの事業モデルや企業文化をデジタル技術で変革することによって競争力を高め、国際的なプレゼンスを高めていくこと」といったニュアンスになります。

歴史を遡ると今から約30年前、1993年にマサチューセッツ工科大学のマイケル・ハマー教授らが執筆した『リエンジニアリング革命』が発行されました。ハマー教授らはこの中で「ビジネスプロセスをリエンジニアリングする(BPR)ことで従来のやり方を見直し、事業モデルを変革しよう」と訴え、日本でも「BPR」がブームになりました。

私に言わせれば、DXとBPRが言っていることはほとんど同じです。ちがうのは「デジタル技術」の要素があるかどうか ― すなわち、今日(こんにち)のDXは「デジタル技術によるBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」と私は理解しています。産業分野全般にわたって新しいデジタル技術(クラウド・IoT・AI・5Gなど)を投入することで、従来のやり方を変えていくこと ― それがDXだと思います。

変革のポイントは“縦軸”ではなく“横軸”

― 中小製造業の経営者の多くは「DXによって事業モデルを変革する」という意識は持っていないと思います。

関口 ドイツが「インダストリー4.0」を発表したとき、私はよく日本の経営者から「うちはそんなの20年前からやっている」と言われました。しかし、私からすると、それは少し話がちがうと思いました。

日本の製造業は垂直統合型のモデルで、その限りであれば、たしかにきわめて高いレベルでスマートファクトリーを実現しています。しかし、それは企業や工場の単位で完結していて、業界横断的なシステム、あるいはサプライチェーンを包括するシステムにはなっていません。

インダストリー4.0でドイツがやろうとしたことは、業界横断的かつ川上から川下まで一気通貫でつなぐシステムを構築すること。変革のポイントは、従来の垂直統合型の“縦軸”ではなく、“横軸”をどうやってつくっていくかです。

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会社情報

会社名
株式会社 MM総研
代表取締役所長
関口 和一
所在地
東京都港区芝公園2-6-3
芝公園フロントタワー
電話
03-5777-0161
設立
1996年
主要事業
マーケティング・リサーチ業務/コンサルティング業務/月刊ICT専門情報誌「MM Report」の発行/各種セミナー、シンポジウム、展示会の実施
URL
https://www.m2ri.jp/

つづきは本誌2022年2月号でご購読下さい。

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