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「グレート・リセット」 ― 2021年は“決断”の年

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明けましておめでとうございます。

この原稿を書くにあたって2020年を思い返してみると、とにもかくにも「新型コロナウイルス」(以下、新型コロナ)に終始した1年でした。小誌の記事にもいくどとなく「コロナ禍」という言葉が登場しました。

9月頃には景気が底打ちし、V字回復するのではと期待していましたが、新型コロナ感染拡大の第2波・第3波が押し寄せています。世界の感染者数は12月中頃に7,000万人を超え、亡くなった人の数も160万人を超えました

ワクチン開発の目処が立ち、今春までにはワクチンの効果が検証されて接種が始まるとの期待もあります。今夏には東京五輪が予定されていますが、はたして無事に開催されるのか、海外からの選手・旅行者の受け入れが感染状況にどう影響するのか ― 落ち着かない日々が続きそうです。

すでにパンデミックによる経済損失は膨大な金額になっています。世界各国が打ち出した財政出動の規模は、2020年5月に国際通貨基金(IMF)が発表した時点で約9兆ドル(約970兆円)に達しました。その後も各国は、第2波・第3派への対応で追加的措置を講じています。

日本は、2020年6月に成立した第2次補正予算を加えた段階で、コロナ対策の事業規模は233.9兆円となっています。この数字には、過去のコロナ対策予算や、もともと予定されていた経済対策の一部、直接支出のともなわない融資なども含まれているため、特別会計や地方歳出分も勘案すると、“真水”は計61.6兆円程度といわれています。それでも、この金額は来年度予算の概算要求約105兆円の60%弱にもなり、いかに規模が大きいかがわかります。

問題は予算の捻出手段です。第2次補正予算の“真水”にあたる31.9兆円はすべて国債の新規発行(建設国債9.3兆円、赤字国債22.6兆円)で賄われました。さらに、年末に閣議決定された第3次補正予算を加えると、今年度の国債の新規発行額は110兆円を超える見通しで、これまでの最高だったリーマンショック直後の2009年度(約52兆円)の約2倍という空前の規模になります。

日本に限らず、各国とも今回の緊急経済対策の予算は財政赤字を大きく拡大させることで対応しており、コロナ禍によって世界各国の財政赤字幅が大きく拡大しました。

その一方で、世界の株式市場では、ニューヨークのダウ平均株価が3万ドルの大台に達するなど株高が進行し、バブル市場になりつつあります。このまま実体経済とのギャップが広がれば、株価バブルの崩壊も懸念され、コロナ禍以上の大恐慌が押し寄せる可能性もあると思います。

1月に開催予定の世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)のテーマは「グレート・リセット」です。

人類はこれまで、さまざまな感染症のパンデミック、あるいは大きな戦争、経済恐慌などの試練に直面してきました。それらに比べて、今回のコロナ禍の破壊力はどの程度なのかを考え、そのうえで「ポストコロナの世界がどのようなものになるか、あるいは、どのようなものになるべきか、未来に向けて何をリセットしなければいけないか」という問題意識を話し合う会議になるといわれています。

過去を断つことによって、未来を変えることができるかもしれない ― 人類は今、大きな“決断”をすべき時期をむかえている印象を受けます。2021年は過去を断ち切る“決断”を迫られる年になる気がします。

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