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働き方が変わる ― テレワーク・ジョブ型雇用など

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日本経済新聞が9月23~24日に日経電子版でアンケートを実施したところ、テレワークにおける生産性の変化については「変わらない」が42.2%で最多だったが、「上がった」(31.2%)と「下がった」(26.7%)で評価が分かれた ―― と報じられていました(日本経済新聞、10月7日付)。

新型コロナウイルスの感染拡大により4月7日に「緊急事態宣言」が発出され、5月25日に解除されるまでの期間、都心を中心に多くの企業では人の接触機会を減らすための対策として「テレワーク」が推奨されました。緊急事態宣言が解除された後も、大手企業を中心にテレワークを継続していました。

しかし最近は、社員間のコミュニケーション不足や在宅で仕事をする際の気持ちの切り換えの難しさ、自宅の情報通信環境の問題などにより、テレワークを減らして出社機会を増やす傾向も強まっています。むろん、その一方で、できるだけ出社せずにWebを通じて社員間のコミュニケーションを積極的に行うことで、会議準備や打ち合わせなどの時間が減り、生産性が向上している企業も増えています。

私も1カ月ほどテレワークを経験しました。お客さまへの取材をオンラインに切り替え、人との接触機会を少なくする努力をしました。その一方で、月刊誌を発行している立場上、非常時だからこそお客さまの最新の状況を知りたい ―― どのような方法で乗り切っているのか、どんなことに一番困っているのか知りたいという思いが日々強くなっていきました。

新たに企画・取材して原稿をまとめる作業にブレーキがかかり、一時は休刊も頭をよぎりました。しかし読者のみなさまから、同業他社はどんなことをしているのか、業界がどのように変化するのか知りたいと強い要望が寄せられました。

7月からは、取材許可をいただけたお客さまに限り、感染予防を万全にして、工場を訪問取材させていただくようになりました。今では1/3がオンライン取材、2/3が訪問取材となりましたが、やはり工場取材の質は訪問取材の方が高いと感じており、これからはできるだけ足で稼ぐ記事を増やしていきたいと思います。

テレワークの普及にともなって、「時間」ではなく「成果」で評価する「ジョブ型雇用」の採用を検討する企業も増えてきました。ジョブ型雇用には、従来の時間管理から成果管理へと変わることで時間を自由に使えるようになる側面もあります。仕事と私生活のメリハリがつきやすく、生産性向上にもつながるといわれており、そうした点は私たちの仕事にも当てはまるかもしれません。メディアの世界では多くのフリーランサーがジョブ請けで現場に出て取材を行い、スクープをものにすることも珍しくありません。

テレワークの普及で、これまで慣習的に継続していた仕事が、時間や環境の制約によって「不要な仕事」であることが明確になったり、「今、本当にやるべき仕事なのか」「出社までして行う仕事なのか」と見直されたりするようになりました。

さらに、「ギグエコノミー」という言葉も聞かれるようになりました。インターネットを通じて単発の仕事を受注する働き方や、それによって成り立つ経済のことを総称しているようです。

ただ、これまでは全員参加型で、ムダはあったにせよ、人と人とのつながりや達成感・やりがいを重視して成果をあげてきた日本社会が、こうした働き方や雇用形態を受け入れることができるのか、予測がつきません。ただ、アフターコロナの世界でテレワークが常態化することはまちがいないと思われます。

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